「八つ墓村」は今までに3回、映画化されている。
しかし3回とも、原作の登場人物が多く、トリックも複雑なため、
映画脚本を大きく変更せざるを得なかったという。
1977年のそれは、犯人・美也子役の小川眞由美の魅力と、
「七人の侍」を手がけた脚本家集団の一人である橋本忍による脚本が素晴らしく、
原作よりもオモロイと思える作品となっている。
せっかくなので今回、横溝正史による原作も読んでみた。
★「八つ墓村」
横溝正史著 角川文庫 760円+税 H.25.11.15.改版37刷
彼はたいへんな酒豪で、鎌倉に住んでいた頃、
東京から東海道線に乗って、
小田原まで寝過ごすことがあったというエピソードをもっており、
もうそれだけで人ごとでなくなり、オイラはファンになってしまう。
ただし原作は、1971年の発表ということで、
どーしても古風な表現が目立ってしまって、
文体に現代的な魅力を求めることはできない。
逆に、それが横溝正史の特徴といえば、魅力になるのかも知れないけれど。
映画脚本では、八つ墓明神の祟りが美也子に憑依して殺人を起こしたとして描かれている。
原作の方では、生身の人間である美也子が財産目当てに殺人を起こしている。
映画と違って原作では、犯人役の美也子は後半、表に出て来ない。
そのかわり辰也との恋愛相手が典子という設定で、
こちらもなかなか読ませる筋にはなっている。
結果、どちらもオモロイと納得した。
通常、小説を映画やドラマにしたものを、オイラはほとんど視ない。
どーせ原作を変更して、作家が無視されているかのような状況が、
端で見ていてもオモロクないからだ。
けれども「八つ墓村」の場合には、素直に1977年の映画もイイと思える。
そんな風に納得してしまうのは、「七人の侍」に携わった橋本忍という、
黒澤明監督の威光が背景にあるからだろう。
他の脚本家が、同じ映画を作っていたとしたら、決して気に入らなかったに違いない。
他にイイと思えたのは、「陰陽師」と「バイオハザード」くらいだろうか?
でも、これはもうちょっと考えてもオモロそうな、「にわとりと卵」的な問題だ。
原作よりもオモロクなったと感じたのは何故なのか。
それを突き詰めれば、
フィードバックして小説もよりオモロク書けるのかも知れない。
少なくとも、なにも考えないよりはマシだろう。
書いてみたいと思う人にとっては。