広瀬川の幽霊(1)7月26日(土)21時04分

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広瀬川の幽霊(1)7月26日(土)21時04分

 それは、昭和43年頃の事です。ある男女が深夜、タクシーに乗り、前橋市の児童遊園地の近くの広瀬川沿いを走っておりました。カーブを曲がったところで、突然車のエンジンが止まりました。運転手とその2人は、白い女を見ました。川面を下流から上流に向かい、白装束の髪の長い女が静かに、静かに歩いて行くではありませんか。水の上を人が歩ける訳がありません。3人は幽霊だと思いました。がくがくと膝が振るえ、茫然としておりました。我を失っておりました。止まった車のエンジンは、辺りが白くなるまで、始動しませんでした。

 辺りが白くなりだした明け方。エンジンが動き、3人は何とかその場から逃げることが出来ました。「そんな馬鹿な。」と言っていた人が、その辺に行きますと、深夜になるとやはり女の幽霊は水面の上に出て、川の上の方に動きます。



さあ大変です。この話は口から口に伝わり、広瀬川に幽霊が出る話は、あっという間に市内に広がりました。そして、ついに、警察も幽霊捜査に入りました。


 捜査の結果はこうでした。競輪場の脇の発電所の水門は、深夜、定時になると閉めることになっている。水門を閉める時に、波しぶきが立ち、その波が広瀬川を逆流し、白波がある角度から見ると丁度、人形に見え、これが幽霊の正体であると。この事は地方新聞に載り、それから後が大変です。一目、幽霊を見ようとその時刻に人が集まり、その挙句、屋台のたこ焼き屋とか、焼きそば屋、ジュースを売る店まで出る始末です。あまりに騒がしくなるので、近所の住民は寝られないという事までになり、警察が交通規制をして集まらないようにしたそうです。

 



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