瓜生 憲さんのブログ
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携帯産業はゆがむの?
今日も梅雨空が続いています。
しかも、今日は13日の金曜日。仮にも7年間、米国で過ごした僕としては、何となく悪いことが起こるのではないかと気になっています。
さて、今日は10%の独断決定者さんから昨日の私の日記に対してコメントがありましたので、日経新聞朝刊に7月11日~13日に掲載されていた「ゆがむ携帯産業」について、またもや、私の大したことない知識から見解を述べさせていただきたいと思います。
ちなみに弊社には、元某大手携帯電話事業者出身者が数名おり、彼らのほうが長く携帯電話に接して来ているので、後ほど厳しい突っ込みがあるのではないかとドキドキしておりますが、とりあえず書かせていただきます。
同記事は、iPhoneをフックに、で日本の携帯端末メーカーの国際的競争力の低下と、その背景にある通信キャリア主導の市場形成に対する問題視、そして、それを解消しようとする行政の動きについて書かれてあったと認識しています。
確かに90年代は、携帯電話端末のレンタル制から買切制への移行と、それに伴う販売奨励金制度の導入で、日本の携帯電話普及率は急速に上昇し、今では所得のない若年層まで普及浸透するに至っています。
更に、限りある資源を活用した無線通信では不可能と思われていた、定額制料金も実現され、今では老若男女、属性を問わず、生活必需品となり、街角、電車の中、会社、レストラン、何所に行っても携帯電話を触っている人を見ない時はありません。
個人的には、この事実を語る上で、NTTドコモを中心とした携帯キャリアと、国内通信機器メーカーが世界でも類を見ない多額の資金を投じて研究開発を行い、世界でも類を見ない高品質なサービスを実現してきたことを忘れてはいけないと思います。
また、海外では、端末メーカー主導の市場が形成されたため、ネットワーク(NW)系のサービスが日本ほど充実していません。これは、端末メーカーは常に消費電力やメモリ利用量を重視することが主因の一つとして挙げられると思います。アプリケーション系のNWサービスは、消費電力も多く、メモリ利用も通常の通話を上回ります。ただでさえ、販売奨励金制度が未整備もしくは不十分の海外市場では、もともと端末の販売価格が高額となっているため、電池容量やメモリの増設は端末価格を、更に引き上げ、一時期のPlayStation3(ソニー製ゲーム機、先日北米で100ドル値下げを発表)のように、消費者の手が届かなくなる可能性があるのです。
その一方、NW系のサービスは、当然初期投資を長期に亘って毎月の利用料で回収していくモデルが一般的ですので、ある一定の端末普及が見込めないとキャリアも提供できない。そういった悪循環から、NWサービスの普及が滞っていると考えます。実際、iPhoneがPC経由でしか、音楽を利用できないという点も、そういった端末価格の問題と、それを前提としたGSM利用というのが背景にあると思われます。(なので、個人的には、話題性とデザイン性と、タッチパネルというインターフェイスの問題であり、機能的には日本の端末の方が上という認識です。ミーハーなので、ちょっと欲しいですが・・・。)
それに対して、日本の場合は早期に販売奨励金制度を導入しました。簡単に言えば、企業体力のある通信キャリアが、端末販売においてクレジットカード会社のような役割も果たしていたという構図です。余談ではありますが、そういった観点からも、現在、通信キャリアが、クレジットをはじめとしたB to C系の金融事業に参入していることは、容易に想定できた流れと言えます。
話を戻して、こんなに携帯電話産業の成長に貢献してきた販売奨励金制度を廃止するという今回の行政判断が、日本の通信業界に対して一律に悪影響を与える暴挙なのかというと、個人的には、そうは思っていません。
まず、販売奨励金制度が廃止されれば、当然、端末の高価格化が予想されます。
しかし、日経新聞にも掲載されていましたが、同時にMVNO(Mobile Virtual Network Operator、つまり通信会社の回線を利用して携帯電話サービスを提供する事業者)が解禁となり、比較的規模の小さい事業者でも、携帯電話事業が営めるようになります。
特に、既に顧客基盤を持っているところであれば、MVNOとなって自社の顧客に対して携帯電話サービスを付加することが容易に可能です。
更に端末に搭載されているメモリの増大を背景としたアプリケーションの充実余地により、比較的低価格で、自社専用端末の提供(汎用品のカスタマイズ)も可能です。
これらMVNOは、(既に一部サービスを開始している)トヨタのような例外を除き、総じて通信キャリアより体力がないため、通信キャリアのような多額の販売奨励金を支払うことができないため、現行制度では競争力が限定的となってしまい、結果的にMVNO自体の参入障壁が高くなってしまう可能性があります。
携帯電話の平均月額利用料は7,000円程度といわれています。利用者に対して月額この程度のコストを掛けてリテンション施策を実施している企業は多数あり、特にWEB2.0時代で利用者への利益還元も普及し始めているので、そのような考え方のもとに携帯電話サービスを無料で提供する企業も増えてくるかもしれません。
そのときに重宝されるのが、端末メーカーであり、多くの企業が少しでも低価格で、高機能の端末を、できれば自社カスタマイズで提供してもらいたいと考えるので、結果的に端末メーカー優遇制度は異なった形で戻ってくると考えます。
そして、もともと販売奨励金の本質である後払い(もしくは分割払い)制度は、餅屋は餅屋的に、クレジット会社とうまく連携を取れば、もしくは通信キャリアであれば、ドコモのDCMX等、自社クレジットで実質的には問題なくなるのです。
どちらにしても、個人的にはMVNOの普及で、よりサービス視点、もしくは消費者視点の携帯電話サービスへの要望がMVNOから端末メーカーに出され、それに対抗する通信キャリアからも同様の要望が続くので、高品質な端末の提供は続くと思います。
更に通信方式の国内外の違いの問題も、第三世代では大幅に改善され、欧米でもMVNOの導入で端末の多機能化の流れは出てきているので、日本の端末メーカーにも今後チャンスは到来するのではないかと思います。
これまでキャリア主導ながらも、発展してきた日本の携帯産業ですが、僕自身は鎖国の中にも確かな歩みがあり、それは今後の国際競争力に繋がる部分もあると考えています。
長くなってしまいましたが、これが僕のちょっとした携帯産業の見方です。
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文面長すぎでつ。
___φ( ̄^ ̄ )メモメモ(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
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ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘ニゲローッッ
すみません・・・。
話が長いですね・・・。
お時間をもてあましたときにでも、どうぞ!
瓜生社長の日記を読ませて頂き、改めて携帯キャリアの苦労を感じ取ることができました。
確かに、海外と比較すると日本の携帯電話産業ってキャリア主導という意味で特殊かもしれないですね。
でもそのお陰で私もお世話になっている「iモード」は爆発的に普及したのだと思っています。
日本も端末メーカー主導だったら、きっと機能搭載しなかったんでしょうね。
ただ、現在の携帯キャリア主導モデルが限界に来ていることも事実だと思うので、社長の日記の通りクレジットとの連携は重要になってくるのでしょうね。
その一方で、販売体系の抜本的改革は販売チャネル、つまり販売店のあり方が最も難しくなりそうですね。
今までの携帯電話市場を支えてきたのは、キャリアショップや量販店、携帯専売店だと思うので、今後各通信キャリアがどのように販売店と新たな関係構築できるかが、重要になると思います。
乱筆で失礼致しました。
今後も社長の日記楽しみにしております。
携帯電話に関する知識はあまり持ち合わせていませんが、6月に入ってから、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の中間取りまとめ案が公開され、現在パブリックコメントを受け付けていたり、「モバイルビジネス研究会」から現行の携帯電話通信事業者などのあるべき姿示されたりと、携帯電話産業が大きな変革の過渡期にあることは感じており、興味深く拝見させていただきました。
今後もいろいろな視点からのコメントを楽しみにしてます。
私もキャリア主導だからこそ、ここまで発展してきたと思います。しかも、新端末を作るための開発サイクルや開発コスト(メーカ側のリスク)を考えると、今後もキャリア主導でないと成り立たないと思っています。
それと、13日の金曜日で台風も近づき、悪いことが起きなければ良いのですが...。
確かに便利すぎるのも逆に不便っていうのは良く分かります。テレビ電話が普及しないのも、それに近い理由からかもしれません。
「あなたの後ろ、そこどこ?」みたいな・・・。
オナガさん
かなり本質を突くコメントですね。
日本の携帯電話の普及過程において、ショップの存在を忘れてはいけません。
しかし、MVNO時代になってくると、それも様変わりする部分が出てくるのかもしれませんね。
ウィルキンソンさん
今研究会で話されていることがビジョンから実行に移り、世の中の生活に浸透するまでには多くのハードルがある気がします。
また、違う産業についても機会があったら、触れさせていただきます。
iguigu55さん
携帯代が月額2500円は安いですね!!!
僕も節約しないと・・・。
あんずさん
台風近づいているらしいですよね!
せっかくの三連休なのに。
これはDVD三昧の週末となってしまうのでしょうか・・・。
ITpro > ネットワーク > 携帯&モバイル
テレコム・インサイドの特集記事「激動 携帯ビジネス
MVNO解禁の衝撃」全5回連載
一向に進展しない現状に活路
改正ガイドラインに秘められた促進策(前編) (後編)
大手事業者も渋々と受け入れへ
禁断の販売奨励金とSIMロックにもメス
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070201/260385/?ST=keitai
に目を通していたので、なるほど社長の日記を読んで
さらに、注目の投資テーマとして MVNO
(モバイルコンテンツ・ウェブ広告・モバイルWiMAXもテーマとして)
について関連銘柄を注視していきたいと思いました。
モバイルナンバーポータビリティの利用が増加し、
端末市場にインパクトが出てくるかどうかは、
MVNOが制度面の充実によって広がるとき、
そしてFix-Mobile-conversion(固定ー携帯融合)が
本格化するときでしょうね。
みんかぶ幹部社員の方にも、集合知を見て活用してもらうために参加してもらい、日記やコメントなどで自分自身がどのような人間か、自分の会社がどのような会社かということを会員にわかってもらう、
そういった積極的なCS活動も期待しています。
通信キャリアが従前のモバイルでのARPU8000円の限界と固定系のARPU6500円の限界を認識したとすると、広告料収入を含めると実質ARPUで10000円を越えてきたジュピターテレコムの動きをどのように捕らえて、どのように対抗するかが2010年のNTT再再編の最大の注目ポイントになるのではないでしょうか?とすると、株式投資面でもこの視点は一つの軸になると思われます。
弊社幹部への貴重なご意見ありがとうございます。
参考にさせていただきます。
グラム単価さん
先にコメントされた10%の独断決定者さんのコメントにもありましたが、仰るとおり、MVNOは、FMBCと関連付けながら、見ていったほうが整理しやすい気がします。
そうなって来ると主題はレイヤー議論に発展することが予想され、これもまた仰るとおり、NTTの再々編議論に繋がると思われます。
一度、別のところでARPU(Average Revenue Per User:一般的に月額支払額のことを言う)議論もさせていただこうと思います。
この条件から見て、「弊社幹部への貴重なご意見」は、少々違和感を感じました。貴社幹部の自由意志に任せるのが、この条件に合うような気がします。私の「集合知」に対する理解が不十分なのかも知れませんが。
そのまま収益の大きさを意味するわけではないから
携帯電話事業者の収益性評価は、
ARPUより販売コスト・配信コスト等迄考慮した
Average Margin Per User:加入者一人あたりの
月間粗利益を使うべきとも・・(株式投資の観点での)
日経7/15 視点(26面)で、
携帯電話、販売方法見直し―総務省が変更案、
不公平是正狙う(ニュース入門) が掲載
されているように、
料金プランについて会員の多くが関心を
もっていると思いますので、
音声通話による収入頭打ち傾向が強まっている
携帯電話業界各社が、データ通信を応用した
新サービスによるARPU増大に力を入れている
この指標の意味合いについて、
(AMPUを指標にした収益性の意味合いも含め)
社長の見解をお伺いしたいのですが・・
違和感を感じられたとのことですが、実際には弊社社員は、日々増加している多くのユーザー様から貴重なご意見をいただいており、そして彼ら自身も日々の活動において経験をつんでいます。そういった観点においては、集合知形成における重要な要素は満たしています。
人の意見に耳を傾けるオープンマインドは自己の判断力を高めるにおいても役に立っていると思いますよ。
10%の独断決定者さん
携帯電話事業者の収益性評価における基準の話ですが、販売費も、配信費(具体的には設備投資と運用に関わる費用)は、時間軸的にも、管理方法もARPUのそれらとは異なりますので、逆に月間粗利益で見ていくと、期間損益を読み違うリスクがあります。
更にグラム単価さんからのコメントにもあったとおり、音声の頭打ちは既に数年前に到達しており、現在は縮小傾向。そして定額制の導入等で、データARPU自体も頭打ちというのが今の携帯電話事業者の現状です。
前回コメントさせていただいたARPU議論の重要性というのは、端的に申し上げると、個人消費もしくは世帯消費の中で携帯電話事業者が得ることができるウエイトがどこまでかという議論、つまり音声時代の時とは異なり、そしてこれまでのデータARPUとも異なる見方ですが、今後はそういった事業領域の拡張性における議論の指標としてARPUの議論を持ち出す必要性があると考えます。