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新エッセー岡部塾

 第二回目のエッセー教室に出席した。「文の構造」や「文の構成表(設計図)」のチャートを講師が示しながら、具体的なエッセーを例に文章の基本について学ぶ。
 それから宿題の「私が一番○○だったこと」という内容の作品を15名の生徒が全員提出した。次回と次々回に分けて全作品についての合評と先生の講評や指導が予定されている。

 提出された生徒のエッセーのタイトル。
1 悩みの種
2 面白かった入院生活
3 きょうちゃんの事
4 うぐいす君
5 手談の喜び
6 あの日
7 招き猫
8 ひとまとめはノー
9 お城の桜
10 多鶴子さん
11 母が・・・・・
12 こんな筈では
13 バス・ガス・爆発!?
14 私の一番
15 断食の向こうに


 翔年は「囲碁を知らない人たちに囲碁と言う楽しい遊びをどのように伝えたらよいか」という課題に挑戦する事にして「手談の喜び」を書いた。内容的にユーモアが出しにくかったので、堅苦しいという批評は甘んじて受けることにし、一切書かなかった。
 仲間や先生から遠慮のない辛らつな評がたくさんもらえることを期待している。(教室が仲間褒めの場にならないことを本心から願っています。)

 一足先に、読者のみなさんのきびしい批評を期待して、恥ずかしいですが翔年の作品をお目にかけます。この文章は、2週間後に仲間の合評と先生の批評がありますので、それをまたアップする事をお約束しておきます。


      手談の喜び     
 「半目勝ち」だった。勝敗を確認した瞬間、興奮冷めやらぬ面持ちで「クロースゲーム・・・、ベリークロース・・・」とつぶやきながら、相手はよろよろと立ち上がって握手を求めてきた。
 十四年前、場所は米国のワシントンDCで行われた「US碁コングレス」会場、対戦相手のD氏とは朝の九時過ぎから、昼食休憩を挟んで延々五時間余に及ぶ熱戦だった。我々アマチュアの碁は大抵どちらかのミスによって勝敗が決まる。だが、この大会は持ち時間が一人二時間半とたいへん長いので、真剣に打てばケアレスミスは かなり防げる。

 この日の相手は序盤からゆったりした態度、着手はジックリと長期戦の構えだった。こういう相手は勝負に強い。「気迫に負けまい、アグレッシブに戦う」と心に誓って打ち進めた。
 布石はお互いに腰を落としてがっぷり四つ、布石とは序盤戦のこと。ビジネスに例えれば新興企業が世界戦略を構想するようなもので、日本とアメリカの本社が支店をヨーロッパに置くか、アジアに置くか、その下部組織はどの国においてどんな役割を持たせるかなど、主に右脳を使った戦略的思考をするようなもの。まだ石が接触しない段階なので読みと言うよりも感覚が大事、あれこれと構想をめぐらせることができる最も楽しい時だ。
 中盤に差しかかって、小さな小競り合いが、だんだんのっぴきならない大戦争の様相を呈する。もう後へは引けない。「コウ」の代償を何処に求めるか、という難しい局面にさしかかった。先の例えでいえば、どこかの国の営業権を放棄する代わりに、別の国の営業権割譲を要求するというような交渉である。
 午後に入って、この交渉でようやくやや優勢な局面に導くことに成功した。ほっとする。だがこういう時が一番危ない。無意識のうちに心に隙が生じるから。反対に非勢を意識した相手は猛然と頑張りだした。ミスを犯さないよう慎重に対応して、優勢を維持しようと努めたが、そういう守りの姿勢がいけなかったのか、局面はふたたびもつれて、勝ちとも負けともハッキリしない局面のまま終盤になだれ込んだのだった。
 囲碁は最終的に地の大小で勝敗が決する。終盤戦はこれまで投資した資金を効率よく使って、いかに土地の面積を相手より多く獲得するかといういわば領地の境界争いとなる。左脳の計算能力が一番要求される場面だ。どちらかと言えば計算の苦手な自分は、日本の囲碁大会のように持ち時間が四十分というような短い大会は好まない。幸い、この大会では十分時間が与えられているから、自己の能力の限界まで考えようとありったけの知恵を絞った。それが功を奏したのか、微差の半目勝ちだった。

 囲碁は別名を「手談」という。碁盤をはさんで一言も言葉を発しなくても、着手は相手の意図を雄弁に語る。その意図を察知して妨害の限りをつくすか、あるいは相手の言い分を認める代わりに、別の場所でこちらの言い分を認めさせようとするか、着手と着手が厳しい話し合いをする。これは「正」と「反」の意見が止揚して「合」が生じるという哲理にも似て、「手談」のプロセスは創造的で楽しい。あの時、恐らくD氏も同じように感じたのではないだろうか? 

 長時間に亘って二人で作り上げる盤上創造の喜びが忘れられず、定年退職してからは毎年、囲碁三昧の楽しみを求めてアメリカに行く。以来、くだんのD氏とは長い付き合いがはじまり、今夏オレゴン州ポートランドで行われるUS碁コングレスでまた会えるのを、何よりも楽しみにしている。
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