何か書けと、中宮さまから立派な紙を拝領して、
さて何を書こうかと迷っていた頃、
たまたまふたりだけになった折、
中宮さまが、ふっとつぶやかれた。
「春は一日のうちでいつがいいだろうね」
「春はあけぼの・・・」
と、反射的にお答えしていた。
「夏は」「夜」
「秋は」「夕暮れ」
「冬は」「早朝」
矢継早にお問いになるのにうてばひびくようにお答えしていると、
面白くなってつい中宮さまと声をあわせて笑ってしまった。
その瞬間、あ、これを書きとめようと思いついた。
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★「月の輪草紙」
瀬戸内寂聴著 講談社 1,300円+税 2012.11.1.第一刷 P.40より抜粋
オイラの大好きな寂聴さんが描いたというのと、
オイラの大好きな清少納言がテーマだったので、
購入をためらうはずもなかった。
伏見稲荷の鳥居のように鮮やかな朱色に彩られた表装なので、
ひとめで発見できるだろう。
史実を織り交ぜながら、寂聴節によって清少納言が描かれている。
橋本治氏の「桃尻語訳 枕草子 上・中・下(河出文庫)」で採られた手法のように、
作者自身が清少納言となって語りかけてくるんだ。
寂聴さんはもう90になるという。
完成するまでに3年かかったという。
作品の出来・不出来なんぞを計算しているゆとりもなかった、
そして清少納言が寂聴自身に乗り移ってくれたと、
あとがきで書いている。
いま途中まで読んだところだ。
やるしかない持ちだしの実験的な仕事に邪魔をされたので。
けれど読みたいものがあるときには、仕事もはかどるものだと得心した。
こんなにタイミングよく次々と清少納言に触れることができるなんて、
こういう展開は奇跡に近いものがある。
やっぱり、伏見稲荷の卷族がオイラの心の中でささやいているんだな。
「こっち、こっちだ・・・」って。
冒頭、年老いた清少納言の回想から話が展開していく。
宇治源氏物語ミュージアムにて
寂聴さんがプロデュースした橋姫伝説の小映画を彷彿とさせる。
清少納言は晩年、伏見稲荷そばにある泉涌寺(せんにゅうじ)で過ごしたという。
中宮定子の墓が近いので、そこで菩提を弔っていたとされる。
さてとこれから出勤までに、続きを読んでしまおう。
PS:「月」とくれば「月夜のnet」。
11/25(日)夜22:30からニコニコ生放送で、
壺坂が出るようなので是非視てちょーだい♪