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首相所信表明 当たり前の事を実行せよ

通貨量増やし円高阻止を

野田佳彦首相が就任後初めての所信表明演説で最優先課題に掲げたのは、東日本大震災 の対応と「日本経済の立て直し」だった。特に最近の歴史的水準の円高について「空前の産業空洞化の危機を招いている」と危機感をにじませ、日本経済再生に取り組む意欲を見せたのは心強い。

 野田首相はこれまで、あまり成長戦略を語ってこなかった。東日本大震災の復興策を盛 り込む第3次補正予算についても具体的な復興策が見えないなかで、財源問題だけが先行した印象がある。東日本大震災からの復旧・復興が政権の最優先課題であることは言うまでもないが、景気を良くしないと税収が大幅に減り、復興費用を賄うのも難しくなるだろう。

 経済学者の間では、日本の通貨供給量(マネーサプライ)の減少が円高やデフレ不況を 招いたとする見方がある。米国や欧州諸国は08年秋のリーマン・ショック以降、ドルやユーロの供給を2~3倍増やしているのに、日銀は資金需要がないなどの理由で、言われるほど通貨供給量を増やしていないというのである。それが事実なら、円高、デフレが解消しないのも無理はない。

 野田首相は、所信表明演説で、政府の新成長戦略を強化した「日本再生の戦略」を年内 にまとめると表明した。日銀の通貨供給量が適切なのか検証し、本当に不足しているなら対策が必要ではないか。場合によっては日銀法改正も視野に入れ、効力のある円高対策を実行してほしい。

 欧州の財政危機や米国経済の失速、電力需給のひっ迫など問題が山積しているなかで、 最も急がれるのは円高対応である。為替介入などでは、問題の根本的な解決にはならないのは明らかだ。

 野田首相は産業空洞化の防止や国内雇用の維持のために「金融政策を行う日銀と連携し 、あらゆる政策手段を講じる必要がある」と述べた。具体策として、立地補助金を拡充するなどの緊急経済対策や円高メリットを活用した海外の企業買収や資源獲得の支援策を挙げたが、そんな対症療法だけでは効果は限定的だろう。


北国新聞社説

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