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[FT]働き過ぎ韓国に歯止め、2週間休暇を強制する企業も


 

(2011年7月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)



 韓国の企業は、年に1度の2週間の「強制休暇」の間、仕事中毒の社員をオフィスから遠ざけるために極端な策を講じている。



 



■政府が「リフレッシュ休暇」推進





 韓国の金融大手、新韓金融グループのある幹部は「(休暇中に)社員が出社しても、コンピュータ・システムから閉め出されていることに気付くだけだ」と話す。



 時価総額で国内銀最大手の新韓は、こうした強引な策が認められ、政府が推進する2週間の「リフレッシュ休暇」普及キャンペーンの旗振り役を務めている。



 先進国で最も労働時間が長く自殺率も最高という消耗の激しい韓国の企業文化では、2週間の連続休暇取得など前代未聞である。韓国のビジネスマンは休暇で充電するよりも、働き続けて賃金や称賛を得る方を好みがちだ。



 韓国人はそのような労働慣習に誇りを抱くが、勤勉さが仕事の効率の高さにつながっているとはかぎらない。少なからぬ数の従業員が上司が退社するのを待ちながら席についているだけと認めている。



 



■労働時間最長でも生産性上がらず





 「リフレッシュ休暇」キャンペーンを主導する国営韓国観光公社の李参(イ・チャム)社長は、韓国企業は1960~70年代の急速な工業化の時代に築き上げられた労働観から脱却する必要があると説く。



 同氏は言う。「国民の発想は今でも工業化時代のままで、労働時間から生産性を算出している。だが時代は変わった。今では創造性やイノベーション、新たな技術が(生産性向上の)決め手だ」



 李氏は発展が遅れている韓国の観光業を底上げするためためにも、長期休暇を取得する文化を築き上げるべきだと指摘する。韓国人の年平均旅行日数はわずか4日で、韓国のホテルの客室数は日本の7%にとどまっている。



 経済協力開発機構(OECD)によれば、韓国人の年間労働時間は2256時間と世界最長で、オランダの1389時間やドイツの1430時間とは好対照だ。だが韓国の1人当たり国内総生産(名目ベース)はドイツの約半分で、オランダの半分以下にとどまる。韓国人の年間休暇日数は11日だが、短期休暇に小分けして取得するのが一般的だ。



 李氏は2009年以降、企業経営者に長期休暇を認めさせるため、TV広告や講演、ロビー活動などを通じてキャンペーンを行っている。

新韓が昨年、2週間の休暇制度導入に踏み切ったのは、企業統治強化の実施という事情もある。不正行為は担当者の休暇中に明るみに出やすいためだ。だが、エネルギーなど金融部門以外の企業も大胆な休暇制度を取り入れ始めていると李氏は強調する。


 



■公務員や財閥社員には困難





 それでもなお、公務員や財閥が方針転換に踏み切るのは困難だ。外交通商省は職員に、今年の夏休みを「十分な期間」取得するよう促したが、2週間という期間を明示するには至っていない。



 李氏によれば、韓国財閥の社員は長期休暇を与えられる場合も多いが、経営者はその前提となる先行きの計画を策定できていないという。



 韓国社会に詳しいマイケル・ブリーン氏は、長期休暇の取得を妨げる主な要因は、多くの韓国人が自らを大企業や国家機関の中の小さな歯車にすぎないと感じている点だと指摘する。



 「韓国人が最も恐れるのは使い捨てにされることだ。2週間仕事から離れて、自分がいなくても大丈夫だと同僚に思われないか恐れているのだ」と同氏は言う。

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