類似句、挨拶句、物まね句

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類似句、挨拶句、物まね句

 Blog友達のkompfさんが「木魚のテンポ」と題して、お経の速さについて興味あるお話を書いておられる。お経の速さは勿論、リズムセクション(木魚)が決める。木魚の連想から、コメントにエントリーの主題からちょっとハズレた夏目漱石の木魚の句を付け加えたところ、そのレスにkompfさんが類似句を書いてくださった。

叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉     夏目漱石
叩かれて蚊を吐く昼の木魚かな    太田南畝(蜀山人)

 ずにのって、またまた、類似句をあげ、後から作られた漱石の句と良寛の句が好きとコメントした。

裏ちりつ表を散つ紅葉かな        谷木因
うらを見せおもてを見せてちるもみじ    良寛

それに対する彼女のコメント。
 私は俳句に不案内なので分からないのですが、夏目漱石や良寛和尚の例のように、古くからある句を詠みなおす(?)手法は良くあるのでしょうか?
どちらの例も、ユリウスさんと同じく、後で詠まれたもののほうが私も好きです。


 彼女の疑問は翔年の興味でもある。翔年は最近の俳句界は類似句が非常に多いという印象を持っている。五七五の17文字の制約の上に、季語を入れなければいけないという制約を課せられれば、類似句の生まれる可能性が高くなるのは誰が考えてもわかる。

 類似句という言い方にはちょっと安っぽいイメージがつきまとうが、和歌に「本歌取り」があるように、俳句には「挨拶句」という立派なジャンルがある。先人の優れた俳句に対して、後輩が「こんなのはどうですか?」とその先人の句にご挨拶するという趣向である。「挨拶句」とは、いかにも親しい仲間の間で成り立つ「座の文芸」、「言葉遊びの文芸」といわれる俳句にふさわしいジャンルだと思う。

 上の例で言えば、良寛の句は谷木因への挨拶句と見たら、良寛さんのやさしい人柄まで窺われて興趣は増す。漱石の句だって、「南畝さん、こうしたら如何?」と漱石がご挨拶している句とみれば見られないことも無い。

もう少し、挨拶句をあげよう。

葱白く洗ひたてたる寒さかな     松尾芭蕉
易水に葱(ねぶか)流るゝ寒さかな    与謝蕪村
※易水=漢詩の「風蕭々として易水寒し 壮士ひとたび去って復た還らず」をふまえていると思う。


遠山に夕日一すじ時雨かな     与謝蕪村
遠山に日の当りたる枯野かな      高浜虚子


凩の果はありけり海の音         池西言水
海に出て木枯帰るところなし       山口誓子


獺祭忌明治は遠くなりにけり      志賀芥子
降る雪や明治は遠くなりにけり     中村草田男
※獺祭忌=だっさいき、子規の忌日(9/19)。


奈良七重七堂伽藍八重桜       松尾芭蕉
山又山山桜又山桜     阿波野青畝
→ これなどは、類似句に見えないが、「漢字ばかりの句を私もつくりましたよ」という「挨拶句」ととれないこともない。


 このような凄い俳人達の類似句を見ていると、つい、こんな評価順位を考えたくなった。高級なものから順に

挨拶句>類似句>物まね句>盗作

 通常「似たような句だな」と思うのは大抵物まね句でしょうね。
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