【2022年7月20日配信の内容】
日米の主要株価指数(日経株価・NASDAQ)に加え、医薬品関連株価指数(TOPIX33[医薬品]・NBI)が堅調に推移するなか、創薬平均株価は軟調となりました。
その構造は大型株高・小型株低であり、大型株ではペプチドリームが5%に迫る上昇となるものの、小型株ではナノキャリアとキャンバスがストップ安となり、全体としては前日比マイナスの結果になりました。
ペプチドリームは2週間前の相場概況において1,450円から等間隔(100円)に計4本の上値抵抗線が存在していると言及しました。
そして、7月8日に終値ベースで2本目の抵抗線(1,550円)を超えたものの、その後は伸び悩み、2本目と3本目のボックス圏(1,550~1,650円)で推移しております。
本日の上昇によって短期的なダブルボトムが形成され、直近の上値1,600円にも勢いよく辿り着いたため、このまま1,650円を超えて行く可能性が強まりました。
同じ大型株であるジーエヌアイグループやそーせいグループも上昇トレンドとなっているため、そのトレンドもペプチドリームを後押しすると思われます。
なお、残すところ2本の抵抗線が存在しますが、前途したテクニカル面や、放射性医薬品事業の売上開示が見込まれる8月の第2四半期決算短信の発表(推定)を理由に、8月中の同抵抗線オールクリアが期待されます。
本日の主役であるナノキャリアとキャンバスは、異なる原因によってストップ安となりました。
ナノキャリアは本日、同社が国内開発を担当する遺伝子治療用製品「VB-111」について、卵巣癌を適応とするフェーズ3試験におけるトップラインデータを発表しまし、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の統計的に有意な改善という主要評価項目を達成出来なかったことを報告しました。
その内容は、PFSではVB-111群が5.29ヶ月、対象群では5.36ヶ月であり、OSではVB-111群が13.37ヶ月、対照群では13.14ヶ月という結果で、全くと言って良いほどVB-111の有効性が得られませんでした。
VB-111の米国における市場規模は年間20億ドル程度と推定されており、一部権利を保有するナノキャリアといえ、それを失った衝撃は大きなものでした。
今後のナノキャリア株の推移は厳しいものとなるでしょう。
それは、ナノキャリアが所有する他のVB-111パイプライン群(グリオブラストーマ・大腸癌)への評価が落ち込むことや、それに伴って、ナノキャリアのパイプラインが早期段階(フェーズ1・非臨床試験)で占められることになるからです。
要するに、ナノキャリアのパイプラインポートフォリオの大幅な評価減が想定されます。
また、ナノキャリアは日本における承認済み点耳抗菌薬「ENT103」を所有していますが、セオリアファーマ社との共同ライセンスであることや、売上高が限定的であると見込まれることから、上記を補うほどの製品にはなり得ません。
そのため、時価総額で10億円を下回る可能性が高く、それは株価にして100円を切ることを指します。
ナノキャリアの株価は落ち着くまで時間を要し、100円前後の水準になると思われます。
ストップ安となる材料があったナノキャリアに対し、キャンバスはテクニカル面での過熱感による売りが集まったように思えます。
2ヶ月近く続くキャンバスの上昇相場は「CBP501」による膵臓癌を適応とするフェーズ2試験の速報を材料としたものですが、同試験は極めて小規模であり、まだ20人程が登録された段階のものです。
そのため、キャンバスのIR活動による印象操作は行き過ぎており、投資リスクを極限まで高めていると感じています。
その中でのストップ安ということで、本日のそれはいずれ起こるであろうとマーケットが想定していたものでした。
キャンバスは2ヶ月間の上昇トレンドの最中、本日と同様に過熱感による大幅な下落は過去に2回存在し、その全てで持ち直した実績があります。
今回の下落は節目の1,000円に到達後に起こったもの、かつ、株価がトレンド前に比べて5倍になるなど、過去2回に比べて持ち直すためにはより大きなエネルギーを要します。
果たしてキャンバス株は今回も乗り越えられるのか、注目が集まります。