むーびんぐさんのブログ
ブログ
オバマのIT政策
オバマ政権で進む米国のネット帝国主義
私が常日頃尊敬している総務省の今川拓郎・情報通信国際戦略局情報通信経済室長が、IT PLUSのコラムで「オバマ政権になったら情報通信分野が米国政策の中心となるだろう」と予言している。非常に正しい見識であるが、それへの対抗として、私の予想を披露しよう。ずばり、オバマ政権の下で米国のネット帝国主義が大幅に強化されるのではないか。日本を含む他国は、この深刻な問題への対応を考えるべきである。
■オバマ政権の情報通信技術重視
オバマ次期米大統領の情報通信分野での政権公約の内容については、今川氏のコラムで詳述されているのでここでは繰り返さないが、補足すべき点として、オバマ氏の属する民主党が元々情報通信分野に熱心だったことを指摘しておきたい。
ゴア氏(左)はオバマ氏を支持していた〔AP Photo〕
クリントン政権時代、副大統領であったゴア氏が提唱した情報スーパーハイウェイ構想を覚えている方も多いのではないだろうか。当時、日本のNTTの構想に触発されたゴア氏は、米国の全てのコンピューターを高速通信回線で結ぶという構想をぶち上げたのである。
ネットビジネスの付加価値の構造は、ざっくりと言ってインフラ、プラットフォーム、コンテンツという3つのレイヤーに区分することができる。ゴア氏は15年前に、このうちのインフラ・レイヤーの重要性を認識していたのであり、それは高く評価されるべきだが、今や米国のネットインフラの整備状況は日本などの後塵を拝している。公約にも明示的に記載されているように、オバマ氏はインフラ・レイヤーでの遅れを取り戻すのであろう。
■ネットに蔓延する帝国主義
しかし、それがオバマ氏の情報通信分野の政策のメインではないだろう。15年前と今では環境がだいぶ違うからである。今やネットインフラは当たり前の存在となり、それ自身は儲からなくなっている。プラットフォームやコンテンツというレイヤーの方が重要になっているのである。
そして、米国の検索サイトが世界を席巻していることからも明らかなように、プラットフォーム・レイヤーは米国の帝国主義と言える状況になっている。パソコンと同じである。日本には外資をハゲタカと罵る人が多いが、そういう人たちもパソコンではマイクロソフトのソフトウエアを、そしてネット上では米国の検索エンジンをというように無意識のうちに米国製品を使っているはずである。
ところで、よくネットには国境がないと言われるが、正しくはない。実体経済のように政府が決めた国境が厳然と守られるという意味での国境はないものの、民間が自由に国境を設定できるのである。それは、日本からは米国の放送局のサイトで番組を見られない(DVDのリージョンコードと同じ)ことから明らかであろう。少なくともコンテンツ・レイヤーにはそうした人為的な国境が存在しているのである。以上を整理すれば、
・プラットフォーム・レイヤーでは、国境のない寡占状況の中で、世界的に米国企業の一人勝ちとなっている
・まだ儲からないコンテンツ・レイヤーでは、米国企業は国境を利用してうまく立ち回っているが、儲かるビジネスモデルが確立されたら、国境をなくしてハリウッド流の米国帝国主義が展開されるであろう
となる。極論だと思われる人も多いだろうが、現実問題として知らず知らずのうちにネット上で米国帝国主義が蔓延しているのである。
もちろん、こうした動きは民間が主導したものであるが、私が気になるのは、今後はオバマ政権が、民間主導で作り出したネット上の米国帝国主義を強く後押しするのでは、ということである。
オバマ氏が大統領選に勝利した後に経済顧問チームを組織したが、そこにグーグルとタイムワーナーという、プラットフォームとコンテンツのレイヤーを代表する企業のトップが参加しているからである。
もちろん、穿った見方が過ぎるのかもしれない。シリコンバレー代表とハリウッド代表が入っただけなのかもしれない。しかし、他の主だった産業の代表はメンバーに入っていないことを考えると、既に一人勝ちのプラットフォーム・レイヤーでの支配をさらに強め、今後はコンテンツ・レイヤーでも一人勝ちを目指そうという、帝国主義の強化を仄めかしているように感じる。
そして、米国経済の現状を踏まえると、そうせざるを得ないのではないか。金融危機の影響で来年はマイナス成長が予想され、経済成長や雇用創出を牽引できる産業がほとんどないからである。実際に、オバマ氏の情報通信分野の政策公約でも「成長セクターで給与の高い仕事を維持・増加させる」と明言されている。
■現状のままなら日本は惨敗
このように考えると、間違いなく今後はグローバルなレベルでメディアやコンテンツを横断したネットの覇権争いが激化するであろう。米国がネット帝国主義を強める一方で、ヨーロッパやアジアの多くの国はクリエイティブ産業の強化に取り組み始めている。どちらも国家の成長産業とソフトパワーに関係し、かつ重複する部分も多いので、今後は世界中で官民一体となった取り組みが強化されるのではないか。
そのとき、日本はどのような戦略でどの部分を強化していくのか。少なくとも現状の政府のバラバラな取り組みのままでは、惨敗は必至である。個人的には、日本としての新たな戦略が必要であり、その遂行の過程では、プラットフォーム・レイヤーも含めた全く新しい形での“ネット鎖国”的な取り組みも必要ではないかと思っている。今のままでは、ネットは米国の価値観を具現化する場にしかならず、独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させることもできないであろう。
IT-PLUSの記事です。
オバマさん、IT政策を強化していただけるわけですね。
いいかもね。わからんけど・・・。
私が常日頃尊敬している総務省の今川拓郎・情報通信国際戦略局情報通信経済室長が、IT PLUSのコラムで「オバマ政権になったら情報通信分野が米国政策の中心となるだろう」と予言している。非常に正しい見識であるが、それへの対抗として、私の予想を披露しよう。ずばり、オバマ政権の下で米国のネット帝国主義が大幅に強化されるのではないか。日本を含む他国は、この深刻な問題への対応を考えるべきである。
■オバマ政権の情報通信技術重視
オバマ次期米大統領の情報通信分野での政権公約の内容については、今川氏のコラムで詳述されているのでここでは繰り返さないが、補足すべき点として、オバマ氏の属する民主党が元々情報通信分野に熱心だったことを指摘しておきたい。
ゴア氏(左)はオバマ氏を支持していた〔AP Photo〕
クリントン政権時代、副大統領であったゴア氏が提唱した情報スーパーハイウェイ構想を覚えている方も多いのではないだろうか。当時、日本のNTTの構想に触発されたゴア氏は、米国の全てのコンピューターを高速通信回線で結ぶという構想をぶち上げたのである。
ネットビジネスの付加価値の構造は、ざっくりと言ってインフラ、プラットフォーム、コンテンツという3つのレイヤーに区分することができる。ゴア氏は15年前に、このうちのインフラ・レイヤーの重要性を認識していたのであり、それは高く評価されるべきだが、今や米国のネットインフラの整備状況は日本などの後塵を拝している。公約にも明示的に記載されているように、オバマ氏はインフラ・レイヤーでの遅れを取り戻すのであろう。
■ネットに蔓延する帝国主義
しかし、それがオバマ氏の情報通信分野の政策のメインではないだろう。15年前と今では環境がだいぶ違うからである。今やネットインフラは当たり前の存在となり、それ自身は儲からなくなっている。プラットフォームやコンテンツというレイヤーの方が重要になっているのである。
そして、米国の検索サイトが世界を席巻していることからも明らかなように、プラットフォーム・レイヤーは米国の帝国主義と言える状況になっている。パソコンと同じである。日本には外資をハゲタカと罵る人が多いが、そういう人たちもパソコンではマイクロソフトのソフトウエアを、そしてネット上では米国の検索エンジンをというように無意識のうちに米国製品を使っているはずである。
ところで、よくネットには国境がないと言われるが、正しくはない。実体経済のように政府が決めた国境が厳然と守られるという意味での国境はないものの、民間が自由に国境を設定できるのである。それは、日本からは米国の放送局のサイトで番組を見られない(DVDのリージョンコードと同じ)ことから明らかであろう。少なくともコンテンツ・レイヤーにはそうした人為的な国境が存在しているのである。以上を整理すれば、
・プラットフォーム・レイヤーでは、国境のない寡占状況の中で、世界的に米国企業の一人勝ちとなっている
・まだ儲からないコンテンツ・レイヤーでは、米国企業は国境を利用してうまく立ち回っているが、儲かるビジネスモデルが確立されたら、国境をなくしてハリウッド流の米国帝国主義が展開されるであろう
となる。極論だと思われる人も多いだろうが、現実問題として知らず知らずのうちにネット上で米国帝国主義が蔓延しているのである。
もちろん、こうした動きは民間が主導したものであるが、私が気になるのは、今後はオバマ政権が、民間主導で作り出したネット上の米国帝国主義を強く後押しするのでは、ということである。
オバマ氏が大統領選に勝利した後に経済顧問チームを組織したが、そこにグーグルとタイムワーナーという、プラットフォームとコンテンツのレイヤーを代表する企業のトップが参加しているからである。
もちろん、穿った見方が過ぎるのかもしれない。シリコンバレー代表とハリウッド代表が入っただけなのかもしれない。しかし、他の主だった産業の代表はメンバーに入っていないことを考えると、既に一人勝ちのプラットフォーム・レイヤーでの支配をさらに強め、今後はコンテンツ・レイヤーでも一人勝ちを目指そうという、帝国主義の強化を仄めかしているように感じる。
そして、米国経済の現状を踏まえると、そうせざるを得ないのではないか。金融危機の影響で来年はマイナス成長が予想され、経済成長や雇用創出を牽引できる産業がほとんどないからである。実際に、オバマ氏の情報通信分野の政策公約でも「成長セクターで給与の高い仕事を維持・増加させる」と明言されている。
■現状のままなら日本は惨敗
このように考えると、間違いなく今後はグローバルなレベルでメディアやコンテンツを横断したネットの覇権争いが激化するであろう。米国がネット帝国主義を強める一方で、ヨーロッパやアジアの多くの国はクリエイティブ産業の強化に取り組み始めている。どちらも国家の成長産業とソフトパワーに関係し、かつ重複する部分も多いので、今後は世界中で官民一体となった取り組みが強化されるのではないか。
そのとき、日本はどのような戦略でどの部分を強化していくのか。少なくとも現状の政府のバラバラな取り組みのままでは、惨敗は必至である。個人的には、日本としての新たな戦略が必要であり、その遂行の過程では、プラットフォーム・レイヤーも含めた全く新しい形での“ネット鎖国”的な取り組みも必要ではないかと思っている。今のままでは、ネットは米国の価値観を具現化する場にしかならず、独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させることもできないであろう。
IT-PLUSの記事です。
オバマさん、IT政策を強化していただけるわけですね。
いいかもね。わからんけど・・・。
コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。