2. セグメント別の計画
中期経営計画実現に向けた各セグメントの事業方針は、以下のとおりである。
(1) エンタープライズソリューション
各業種ノウハウを生かしたDXオファリングを推進する。流通業向けにはESL/欠品検知/接客/配送/EC通販連携、製造業向けにはERP/デジタル生産支援/物流改革/AI図面、物流向けにはAI配送/画像識別/ロボティクス/卸向けSCM、金融向けにはクラウドシフト/モダナイゼーション、公共向けにはデジタルガバメント政策対応、などを推進する方針だ。これらの施策により、2025年3月期に売上高17,000百万円(2022年3月期比14.1%増)、営業利益率13%(2022年3月期は13.2%)を計画している。初年度の2023年3月期実績は、小幅の減収に終わったが、増益によって計画を上回る利益率を確保している。
(2) サービスソリューション
顧客のDX部門へのアプローチを強化しDX推進を支援するほか、ビジネスモデル変革事業の対応領域の拡大、クラウドネイティブへの対応強化とデータマネジメント領域の拡大、などを推進する。これらの施策により、2025年3月期に売上高14,000百万円(2022年3月期比18.1%増)、営業利益率7%(2022年3月期は4.4%)を計画している。体制強化のコストや不採算案件の影響がなくなり、今後は利益も改善する見通しであることから、営業利益率については上昇を計画している。2023年3月期実績は増収ながら減益であったことから、計画を下回った。低採算案件をなくし利益改善を図ることが課題となっている。
(3) エンベデッドソリューション
既存の組込み技術領域を活用したサービスの創出、エッジコンピューティング分野の推進、自動運転や5G/6Gなど成長分野への取り組み強化と事業拡大、などを推進する。これらの施策により、2025年3月期に売上高10,000百万円(2022年3月期比13.5%増)、営業利益率13.5%(2022年3月期は13.8%)を計画している。2023年3月期実績は計画を上回る増収増益となり、好調を維持している。
(4) デバイスソリューション
LSI開発技術を基盤としたデザインサービスの拡大、クラウドデザインサービス事業への展開、DeepLearningをコアとした事業推進、などを図る。これらの施策により、2025年3月期に売上高9,000百万円(2022年3月期比14.0%増)、営業利益率14.5%(2022年3月期は15.3%)を計画する。営業利益率については低下を見込むものの、引き続き高水準の利益率を見込んでいる。2023年3月期実績は計画を上回る増収増益となり、好調を持続している。
3. 「DX FIRST」に向けた取り組み
同社では、「DX FIRST」をスローガンに、顧客のDX実現を先導する企業を目指しており、中期経営計画においても「DX実現による顧客価値の追求」を重点戦略の1つに掲げている。このDXについて、同社では「当社が持つデジタル技術を顧客のビジネスモデルやビジネスプロセスに利活用し、新しい価値を創造する取り組み」としている。すなわち、これまで培った業務ノウハウや技術力と様々な実現手段を組み合わせることによって、DX実現を支援するソリューションやサービス事業を提供し、顧客のビジネスモデル変革と業務プロセス変革を共に推進していく取り組みである。
同社はコロナ禍でも顧客のDX実現を支援するために、IoT、AI、XR※といったデジタル技術を基盤に、様々なサービスやソリューションを新規開発やパートナーとの協業により提供してきた。特にXR分野は、非対面・非接触ということで急速に伸びている。この結果、同社がDXを提供する顧客対象は製造業を中心に建設業への参入も進み、顧客社数は2019年3月期以降、約3倍増(平均年率約45%増)に急増している。
※クロスリアリティの略。現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚できる技術の総称。
同社では、これまではデジタル技術の提供が中心であったが、今後はデジタル技術の提供のみならず、顧客と共に新しい価値やビジネスモデルを創造する「共創」により「DX FIRST」に取り組んでいく。同社の持つノウハウ・技術・知見などの強みと、パートナーの知見や外部のデジタル技術を掛け合わせることで、顧客の課題やビジネス変革へのニーズに応え、変革共創企業として飛躍することを目指している。
DX実現によるパートナーとの共創の事例としては、インテル(株)と千葉市動物公園の混雑予測配信などの実証実験を2022年7月~2023年2月まで実施したことが挙げられる。千葉市動物公園内の各ゲート(3箇所)や利用の多い園内施設、駐車場出入口に取り付けたカメラ映像から、AIを活用して来園者数のカウントを行うほか、リアルタイムに混雑予測情報をホームページなどで配信するものである。地域課題の解決や、新たな価値創造に貢献するものだ。その他の共創事例としては、2023年3月には、慶應義塾大学と 空気環境管理ソリューション開発の共同研究を開始した。保管や物流段階などでフードロスをなくす取り組みの有効性について、同社と慶應義塾大学が空気環境における様々な視点から仮説を立て、共同研究や実証実験から検証するもので、社会的課題へ貢献することで、「持続可能な社会の実現」を目指すものだ。今後も、さらなる具体的な成果が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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