―ヘルスケア/フィットネス(ウェアラブル機器&サービス)で浮上する有力株に照準―
超高齢社会に突入した我が国においては、社会保障費の増大や生産年齢人口の減少など、様々な課題に直面しているが、課題解決の一つとして、国民の健康を維持・増進し、健康長寿社会を実現することが有効とされている。ICTの活用による地域の医療機関や介護事業者のネットワーク化とともに、個人の健康・医療・介護データをEHR(医療情報連携基盤)などから本人に還元し、本人の意思に基づくデータの管理・流通・活用を可能とする。
更に、本人に還元された健康・医療・介護データであるPHR(生涯型電子カルテ )を利用したサービスを通じて本人がメリットを実感することで、時系列のPHRが集積され、臨床研究に活用されることによる医学の発展への寄与も期待されている。
●政府主導の取り組みでマーケットの関心高まる
年金や医療、介護などの社会保障給付費が年々増加しており、2016年度に118兆円を上回り、17年度は120兆円超の水準となっている。年齢別1人当たりの年間医療費は、乳幼児期を除くと年齢とともに多くなるが、65歳以降は急速に増加し、80歳以降は入院にかかわる費用(入院+食事・生活療養)の割合が高くなる。次世代ヘルスケアとして、生活習慣病などに関して、「重症化した後の治療」から「予防や早期診断・早期治療」に重点化するとともに、地域包括ケアシステムと連携した事業(介護予防・生活支援等)への取り組みが重要視されることになる。
厚生労働省は19年9月に社会保障審議会医療部会を開催し、20年度診療報酬改定に向けたスケジュールと、基本方針の策定に向けた改定に当たっての基本認識や、改定の基本的視点・具体的方向性の例示を確認。改定に当たっての基本認識として、「健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた全世代型社会保障の実現」「医師等の働き方改革の推進」「患者・国民に身近な医療の実現」といった命題が例示されている。
なお、予約から問診、診察、処方、決済までをインターネット上で行う診療方法となるオンライン診療は、18年の診療報酬改定で保険診療での診療報酬点数が新設され、対面診療と組み合わせることなどを条件にビデオ通話を用いた診察方法が認められている。
こういった政府主導による取り組みに加え、人工知能(AI)技術が進歩し、次世代通信規格5Gの本格普及に伴い、ヘルスケアやフィットネス(ウェアラブル機器とサービス)に関連するサービスが多く生まれてくることが予想される。19年12月に厚労省は、最大約9万人分の日本人のゲノム(全遺伝情報)を解読する「全ゲノム解析等実行計画」を発表するなど、医療データ利活用が進む見通し。
医療のICT化は、単に院内情報にとどまらず、患者の日常的なバイタルデータの蓄積など、病気に至る前の段階のデータ、退院後のデータなどヘルスケア領域も対象となる。ビッグデータの利活用の範囲が院外、患者から健康な人まで広がるきっかけとなるのが、社会を変えるテクノロジーの進化ということになる。
●有力株が目白押し、ここからの注目銘柄は?
オンライン診断に関連するところでは、エムスリー <2413> が、医療従事者のみならず、一般の人もインターネットで気軽に医師に相談できるQ&Aサイト「AskDoctors(アスクドクターズ)」のほか、医師の知恵を活用できる健康情報サイト「医知恵(いちえ)」、多数の医師の評価・レビューによりヘルスケア情報ページが探せるサイト「Doctors Review(ドクターズレビュー)」などを展開している。
また、メドレー <4480> [東証M]は日本最大級のオンライン診療システムである「CLINICSオンライン診療」を中核として、患者のための医療情報サービス「MEDLEY」、市民のための介護情報サービス「介護のほんね」などを提供。MRT <6034> [東証M]は医師・非常勤に特化した人材紹介サービスを主力に、スマホでできる遠隔診療・健康相談アプリ「PocketDoctor(ポケットドクター)」、医療・ヘルスケア情報の発信により集患につなげる新しい医療マーケティングである「GoodDoctors(グッドドクターズ)」などを提供している。
更にAI・IoT・ビッグデータプラットフォームを展開するオプティム <3694> は、患者への声がけ状況、バイタルデータ、訪問スタッフの業務記録や現在地などを一元管理できる「スマートホームメディカルケア」システムを手掛ける。ファインデックス <3649> は、大学病院や地域中核病院の医療用データ管理や院内ドキュメント作成といったシステムを展開している。
このほか、ソフトウェア・サービス <3733> [JQ]は、電子カルテやオーダリングシステムなどの医療情報システムを開発。メディカル・データ・ビジョン <3902> は、病院経営の支援システムや蓄積したデータ利活用サービスを展開。みらかホールディングス <4544> は、受託臨床検査や臨床検査薬が中核であるが、電子カルテ・分析連携システムやタブレット型検査依頼システムを手掛けている。
●LINEやドコモも参入に意欲的
LINE <3938> はエムスリーと共同出資による新会社「LINEヘルスケア」を設立しており、遠隔健康医療相談サービスを行うほか、将来的には、病院での待ち時間の解消や、診療時だけでなく患者の日常生活における実態を把握した上での最適な医療の実現を目指している。大手ではNTTドコモ <9437> も同分野に意欲的だ。12年にオムロン <6645> とのヘルスケアの合弁会社として、ドコモ・ヘルスケアを設立しているが、20年4月1日をもって吸収合併する予定。ドコモユーザー向けのdポイントが貯まる歩数計アプリ「歩いておトク」が最も利用されているサービスである。
Welby <4438> [東証M]は、本人に還元された健康・医療・介護データであるPHRサービスを展開しており、NTTドコモとヘルスケア分野で業務提携しているほか、ベネフィット・ワン <2412> とも業務提携している。また、ベネフィット・ワンは、子会社である「ベネフィットワン・ヘルスケア」を昨年吸収合併し、健康関連サービスと福利厚生をワンストップ提供している。トーカイ <9729> は、24時間モニタリングシステム「iAide」の在宅患者向け活用が注目される。病院関連事業、調剤薬局、介護用品レンタル事業の顧客基盤活用や顧客数増加にもつながることに期待が大きい。
最後に、総合余暇サービス提供企業であるコシダカホールディングス <2157> もマークしたい。カラオケボックス「まねきねこ」のカラオケ事業、女性専用フィットネスを展開するカーブス事業が柱である。「スピンオフ」という仕組みを使って、カラオケとカーブス事業を分離すると発表しており、分離したカーブスホールディングスが3月2日に東証へ上場する予定(上場市場未定)である。カーブスは、「女性専用のフィットネス」を全国展開しており、ヘルスケア企業として注目される。
株探ニュース
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