アイエックス・ナレッジ<9753>は、独立系の中堅システムインテグレーターである。IT戦略提案、IT化推進などのコンサルティングからシステム開発、検証、保守・運用までのシステムのライフサイクルに対応した、一貫したソリューションを提供する。日立製作所<6501>やNTTデータ<9613>などの大手システムインテグレーターやみずほ情報総研(株)などのエンドユーザー系の情報システム会社、KDDI<9433>などのエンドユーザーなどが主要取引先であり、安定している。顧客企業上位10社で売上高の7割以上を占める。
1. 業績動向
2020年3月期第2四半期の業績は、売上高は前年同期比0.3%増の8,744百万円、営業利益は同18.5%減の339百万円、経常利益は同18.5%減の360百万円、四半期純利益は同25.7%減の222百万円となり、売上高は増収、各利益は減益となった。売上高に関しては、大手金融機関や重工業メーカーにおける案件の収束などにより「コンサルティング・システム開発」の売上高が減少した。これを補ったのは「システム運用」であり、運用設計や基盤構築案件の受注が拡大し、開発から運用フェーズに移行した案件の拡大が寄与した。営業利益が減少した要因としては、販管費の増加(前年同期比13.1%増)が大きく影響した。これは、誕生20周年対応などに伴う活動費用や次期成長事業創出に向けた技術者教育のための費用増加等が要因である。20周年記念に8月に行われた全社パーティーは、社員のモチベーションに配慮した取り組みであり、次期成長事業創出に向けた技術者教育は、中期経営計画の方針である「次期成長事業の創出」に向けた先行投資である。
2020年3月期業績については、売上高で前期比1.4%増の18,014百万円、営業利益で同2.0%増の840百万円、経常利益で同0.0%増の879百万円、当期純利益で同0.9%増の591百万円と堅調な業績を予想しており、期初予想を据え置いている。なお、通期の売上高計画に対する第2四半期進捗率は48.5%(前期は49.1%)と、前期並みの水準に到達している。金融分野に関しては、大手銀行の比率が低下するなか、資産運用系金融機関案件や新規の生命保険関連案件などでのカバーを狙う。一方、情報通信分野では、大手通信会社向けシステム検証案件の一部終了が予定され、落ち込みが懸念される。産業・サービス分野では、車載・画像センサーなどの組み込みシステム開発や化粧品会社向け案件、新規のアパレル関連案件などが期待される。全般的に足元の受注環境は良好だが、大規模プロジェクトの端境期に一過性の谷が現れることもある事業特性であることに留意したい。利益に関しては、営業利益率で0.1ポイント改善を見込む。2020年3月期は、パートナー企業との連携を強化し、プロジェクトの原価管理を徹底し、収益性を高める方針である。なお、通期の営業利益計画に対する第2四半期進捗率は40.5%(前期は50.7%)とやや進捗が遅れる。弊社では、上期の減益要因だった「次期成長事業創出向け教育費」は順次商業ベースに移行していくことで減少が予想され、「20周年記念対応活動費」も下期は一段落するため、売上高の大きな落ち込みがなければ収益性は回復すると予想している。
2. 成長戦略
中期経営計画の重点取り組みは、「守り」と「攻め」に配慮したものである。「守り」に関連しては、(1)営業体制の強化、(2)厳正な開発管理体制とPM人材強化・育成、(3)パートナー企業とともに案件対応力強化、をテーマとして推進中である。「攻め」に関連しては、(4)デジタル化DX対応(デジタル化(DX)に対応した事業検討及びデジタル先端技術を活用したソリューションの創出)、にチャレンジしている。全体として着実に実行に移しており、成果が出始めている。
(1) 営業体制の強化
製販一体組織(プロダクト別)になって2年目を迎えるなか、営業情報の見える化やクロスセルをさらに取り組む計画だ。
(2) 厳正な開発管理体制とPM人材強化・育成
開発の原価管理のやり方を改善することでコスト削減が進んだ上、PMOを組織化したことで不採算案件が減少した。
(3) パートナー企業とともに案件対応力強化
パートナー企業は全国に40社以上あり、プロジェクトの組成や需要の変動に対応するためには不可欠な存在だ。同社とパートナー企業は、プロジェクトの中では一心同体であり、同社はパートナー企業の従業員を含めて教育を行う。同社の外注費は6,247百万円(2019年3月期)であり、売上原価の42.5%に相当し、その存在の大きさがわかる。
(4) デジタル化DX対応
存在感を増すまでに今後3年程度はかかると見て、じっくり育てる方針だ。一部で受注案件が生まれ、事業化フェーズに入っている。
3. 株主還元
同社では、株主還元に関して経済環境の変動が激しいことから、安定配当を第一とし、業績や将来の見通し、配当性向、配当利回り等を総合的に勘案し配当を決定する方針である。過去に遡ると、減益となった年もあったが、1株当たりの配当金は維持または増配を行ってきた。2019年3月期期末の配当は、前期と同額である1株当たり普通配当10円、20周年記念配当10円、合計配当金20円、配当性向は34.2%となった。2020年3月期は、普通配当15円(前期比5円増)、配当性向25.4%を予想する。
■Key Points
・前身2社の経営統合から20周年を迎える独立系システムインテグレーター
・「大手顧客からの安定受注」と「人財マネジメント力」が強み
・2020年3月期第2四半期は増収減益。システム開発案件収束等による売上減少をシステム運用案件の受注拡大でカバー
・中期経営計画の取り組みポイントを着実に実行。デジタル先端技術関連案件のサービス提供が始まる
・安定配当が魅力。2020年3月期は普通配当を5円増配予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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