日本BS放送<9414>は、無料のBSデジタルハイビジョン放送「BS11(ビーエス・イレブン)」を運営する独立系のBS放送局である。キー局系列に属さない独立系であることに加えて、無料放送という2つの特徴を持つ。独立系ならではの強みを生かし、全国のテレビ局及び制作会社との自由なコンテンツ制作・展開を実現している。
1. 2024年8月期の業績概要
2024年8月期連結業績は売上高が12,241百万円(前期比1.4%減)、営業利益2,083百万円(同5.0%増)、経常利益2,097百万円(同4.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,455百万円(同5.0%増)となった。計画値(売上高12,600百万円、営業利益1,910百万円、経常利益1,910百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,318百万円)に対して売上高は若干下回ったが、各利益は上回って着地した。売上面では、主力のタイム収入は通販番組枠の強化・拡充や大型スポーツコンテンツによるセールス強化を図ったが、スポンサー制作の持込番組の終了時期と重なったこと等から減収となった。スポット収入はコロナ禍後の通販市況低迷の影響が続き、減収で着地した。その他収入はイベント事業や各種配信事業、アニメ製作委員会からの配当増加等が寄与し、増収となった。タイム収入やスポット収入といった放送事業の減収を、その他収入及び出版子会社の増収で一部穴埋めした。利益面では原価や費用の削減に取り組んだ。番組関連費用については、アジアドラマの放送枠を見直し、費用対効果を求めた結果、前期比2.2%の削減に成功した。放送関連費用についても、衛星利用料の見直しや外部スタジオ利用費用の削減効果等により、同12.3%減と低下した。広告関連費用については、出稿媒体を見直しコスト効率を意識した広告宣伝施策により、同30.5%減と大きく改善した。この結果、営業利益率は17.0%(前期比1.0ポイント増)と向上した。
2. 2025年8月期の業績見通し
2025年8月期の連結業績予想については、売上高12,314百万円(前期比0.6%増)、営業利益2,004百万円(同3.8%減)、経常利益2,032百万円(同3.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,407百万円(同3.3%減)と、前期比で増収ながら各段階利益は減益を見込んでいる。タイム収入は前期比3.1%増の8,518百万円、スポット収入は同6.2%減の2,128百万円、その他収入は同15.5%増の953百万円を計画している。タイム収入とスポット収入からなる放送事業収入に関しては、「鶴瓶のええ歌やなぁ」をはじめとする自社制作番組のマルチ展開とセールスに注力していく。また、継続して新規クライアント、通販スポンサーの出稿開拓を行っていく。その他収入はアニメ番組への積極投資や関連イベントの開催、動画配信メディア等への自社制作番組の配信等によって高成長率を目指す。利益面については引き続き番組関連費用の効率的な使用に努める。スタジオ設備更新に伴う償却負担は減少するが、周辺事業強化等への積極的な投資のほか、人材投資も進める計画で、利益面はやや保守的に見込んだと考えられる。投資対象は明確で、その効果により業績向上実現の確度は相応に高いと弊社では見ている。
3. ファンのニーズを幅広く捉えたコンテンツのマルチユースの取り組みを評価
同社は会員登録制視聴サイト「BS11+(プラス)」を運営しており、人気番組のアーカイブが視聴できるほか、限定の番組スピンオフ企画やオリジナル作品が視聴可能である。「見放題プラン」月額550円(税込)とリーズナブルな価格設定で、同社放送コンテンツのフォロワーをはじめとする視聴者を会員として取り込んでいる。また外部配信プラットフォームへの同社コンテンツ配信も拡充している。同社公式YouTubeチャンネルの登録者数は約32万人(2024年11月時点)と、BS放送局でナンバーワンとなっている。ほかにもFOD、U-NEXT等に加えて、2023年5月よりTVerでの見逃し配信を開始した。ラジオ局の(株)文化放送や(株)エフエム東京ともコラボレーションを展開しており、音声コンテンツでの報道番組アーカイブ配信により多忙なビジネスパーソンユーザーの獲得や、番組関連イベント開催での顧客満足度向上など、BS11ファンの拡大に貢献している。
■Key Points
・コンテンツのマルチユース等による非放送分野への展開を加速
・2024年8月期は放送事業の減収をその他事業等で補うも微減収、各段階利益は費用削減策等が奏功
・重点施策を新たに「Value4」として推進
・配当性向40%程度を基準とした配当方針を維持
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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