1. 会社概要
いちご<2337>は、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象に、不動産価値向上ノウハウを活用し、投資・運用を行う心築を強みとしている。また同社は、オフィス特化型、ホテル特化型、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人(いちごオフィスリート、いちごホテルリート、いちごグリーンインフラ投資法人<9282>)を運用・管理するユニークな企業グループである。ストック型とフロー型の収益モデルを有し、特にストック収益の成長に注力するとともに、キャッシュ・フローを最大化する経営を徹底してきた。2002年11月に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現 東京証券取引所(以下、東証)グロース市場)に上場。その後2015年11月に東証1部に昇格し、2022年4月に東証プライム市場へ移行した。同社はすべての事業において社会貢献を目指し、心築事業における環境負荷低減やクリーンエネルギーの創出など本業を通じた貢献に加え、Jリーグのトップパートナーとして地域活性に参画するほか、「RE100」や「国連グローバル・コンパクト」に加盟するなど多面的な活動を通じて、サステナブルな社会の実現に力を注いでいる。
2. 事業内容
同社の事業セグメントは、アセットマネジメント事業、心築事業、クリーンエネルギー事業の3つである。
アセットマネジメント事業は、自社グループで運用するいちごオフィスリート、いちごホテルリート、いちごグリーンインフラ投資法人及び不動産私募ファンドに対し、案件の発掘や供給、運営・管理に加え、心築により物件価値を向上させ、投資主価値の最大化を図る。また、2023年2月期よりセキュリティ・トークンを活用した不動産投資商品である「いちご・レジデンス・トークン」の運用も担う。アセットマネジメント事業の拡大は、安定性と継続性の基盤であり、バランスシートに依存せずにキャッシュ創出を図る同社の戦略の柱である。2025年2月期中間期の売上高は全社の3.5%(内部売上高を除く)、営業利益は9.3%と利益に貢献している。
心築事業は不動産保有期間の賃料収入を享受しつつ遵法性の確保や耐震補強といったベーシックな価値向上に加え、テナントニーズに基づき、共用部機能の充実、近隣とのコミュニティ形成や災害時のBCP対策を目的としたイベントの開催など、稼働率改善及びテナント満足度の向上を通じた賃料の向上を図り、不動産価値を高めて売却することで高い売却益を得る。心築事業は、保有不動産の賃貸収益(ストック)と譲渡収益(フロー)の両面がある。賃貸収益(ストック)は自己保有資産(263,559百万円、取得簿価ベース)から生み出され、2025年2月期中間期にはALL-IN粗利ベース収益で6,138百万円(前年同期比1,261百万円増)と賃料が伸長した。保有資産の特徴は、物件タイプとしてはオフィス(31%)、ホテル(24%)、商業施設(21%)、レジデンス(21%)とバランス型のポートフォリオになっている。譲渡収益(フロー)は、ALL-IN粗利ベース収益で4,703百万円(同5,050百万円減)となった。計画どおり進捗しているが、進行期はレジデンス・トークン(第5号以降)などの売却が下半期に計画されているため前年同期比で減益となっている。2025年2月期中間期の売上高は全社の87.2%(同)、営業利益の72.8%を占める同社の大黒柱である。
クリーンエネルギー事業は、2012年に開始され、現在では全国64ヶ所の太陽光及び風力発電所プロジェクトをグループで運営するまでに成長した。内訳としては、同社が保有する太陽光発電所が48ヶ所、151.4MW。同社が保有する風力発電所が1ヶ所、7.3MW。いちごグリーンインフラ投資法人が保有し、同社が運営する太陽光発電所が15発電所、29.4MW。前期末に稼働を開始した同社2番目の規模のいちごえびの末永ECO発電所(13.9MW)は、進行期は期初から業績に貢献している。今後の開発計画としては、グリーンバイオマス発電所(5ヶ所、4.0MW)、Non-FIT太陽光発電所(9発電所、32.1MW)がある。2025年2月期中間期の売上高は全社の9.4%(同)、営業利益の17.9%と安定した利益貢献をしている。
同社の収益構造にはストック収益とフロー収益があり、バランスよく成長してきた。ストック収益は、2025年2月期中間期実績で11,194百万円となり、上半期での過去最高を記録した。ストック収益の内訳としては、保有資産の賃料収入、発電所の売電収入など保有アセットからの収入に加え、ノンアセット収益であるアセットマネジメント(AM)のベース運用フィーやホテルオペレーター収益及びPROPERA利用料などがあり、収益源を多様化しながら順調に積み上がっている。フロー収益は主に心築事業における不動産譲渡益であり、同4,886百万円の実績である。収益全体に占めるストック収益の比率を60%以上にすることを目標としており、前期の実績においても60%弱まで進捗している。ストック収益は、同社の固定費(固定販管費+支払利息)の2倍以上に相当し、十分カバーして余りあることから、不況期などにより不動産の価格が下がる局面においても物件を売り急ぐ必要がない点が同社の強みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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