1. 2024年7月期第2四半期の業績概要
明豊エンタープライズ<8927>の2024年7月期第2四半期の連結業績は、売上高で10,868百万円(前年同期比221.1%増)、営業利益で1,374百万円(前年同期は89百万円の利益)、経常利益で1,192百万円(同67百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益で835百万円(同46百万円の損失)となった。不動産市場においては、国内の低金利環境や円安傾向を背景として、特に住居系不動産を中心とする投資用不動産への海外投資家の投資意欲が引き続き高く、需要・供給とも堅調に推移している。このような追い風を背景として、同社の強みを生かした物件調達や設計・施工、及び販売活動を推進し、特に主力である不動産分譲事業においては、第3四半期以降の販売を予定していた物件の繰り上げ販売や、販売物件の高い利益率・利益額を確保できたこともあって大幅な増収・増益を達成した。従来、東京都内の城南・城西地区を主要エリアとしてアパート・マンション用地を厳選し、条件に合致した物件を発見した場合には短期間で事業化の検討を行い早期に仕入れを実行するといった手法で用地取得を進めているため、地場の不動産仲介業者の間でも定評がある。また高い設計・施工力で主要ブランドである「EL FARO」や「MIJAS」といったシリーズの物件を開発し、さらには高い購買力を持つアジア圏(台湾、香港、シンガポール等)の投資家を積極的に開拓した結果、好業績を実現した。
(1) 不動産分譲事業
不動産分譲事業の2024年7月期第2四半期のセグメント業績は、売上高で8,898百万円(前年同期比358.5%増)、セグメント利益は1,622百万円(同894.1%増)と大幅な増収・増益となった。第2四半期までの累計では、主要ブランドである「EL FARO」及び「MIJAS」シリーズ13棟の引渡しを完了したほか、中古収益用不動産1棟、開発事業用地2件を売却した。前年同期においては「EL FARO」及び「MIJAS」の引渡し完了は2棟に留まっていたため、この引渡し棟数の差が売上高及び利益の差となって表れた形である。「EL FARO」シリーズは物件にもよるが、「MIJAS」シリーズと比較して金額の規模が大きく、海外投資家からの注目度が高い。従来、アジア圏の海外投資家の開拓を積極的に行っているが、2023年11月に台湾で海外投資家向けセミナーを開催したほか、2024年3月にはシンガポールにて現地の日系の仲介業者の協力の下に個別商談会を実施した。このような販売努力もあって比較的高額な物件の販売が進んでいる。なお、第2四半期までにアジア圏の海外投資家に販売した物件棟数は7棟に上っている。
(2) 不動産賃貸事業
不動産賃貸事業に関する2024年7月期第2四半期のセグメント業績は、売上高999百万円(前年同期比1.9%減)、セグメント利益は18百万円(同79.9%減)と減収・減益となった。主な収入源は、不動産分譲事業において投資家等に売却した物件の管理を中心としたプロパティマネージメントからの報酬である。不動産賃貸事業は2023年7月期時点で稼働率97.0%と非常に高い水準を維持しており、収益面は安定しているが、前期より担当人員を増加した影響で人件費が増加しており、セグメント利益を圧迫する要因となっている。今後の物件販売状況と併せて同事業の損益状況を確認していく必要があると弊社では見ている。
(3) 請負事業
請負事業の2024年7月期第2四半期のセグメント業績は、売上高で951百万円(前年同期比147.5%増)、セグメント損失は180百万円(前年同期は40百万円のセグメント損失)と増収ながら損失計上した。同セグメントでは、主にグループ会社である明豊エンジニアリング及び協栄組が受け持つ建築・施工の実績が計上され、不動産分譲事業で販売する物件のほか、グループ外顧客との直接取引による新築請負工事や各種リニューアル工事等が対象に含まれる。売上面では当該2社が参画した効果によって大幅な増収を果たしたものの、損益面では原材料高を背景とした建築コストの上昇や、人手不足による人件費の負担をはじめとする販管費の増加を吸収しきれず、損失計上となった。なお、連結会計処理の影響で、同セグメントにおける不動産分譲事業分の売上高は不動産分譲事業における原価と相殺されてしまうため、売上高が過小に見え、損失が過大に発生しているように表面上は見えるが、実際の損失額は計上額よりも小さいものと考えられる。
(4) 不動産仲介事業・その他
不動産仲介事業の対象となる不動産媒介報酬は発生しなかった。その他のセグメントでは主に保険代理業等で生じた収益および損益を計上しているが、2024年7月期第2四半期の売上高は30百万円(前年同期比22.9%減)、セグメント利益は30百万円(前年同期比20.2%減)となった。
2. 財務状況
(1) 財政状態
2024年7月期第2四半期末における資産合計は23,774百万円となり、前期末比1,294百万円増加した。主な要因は、新規開発事業用地の取得、建築中の投資用不動産等により棚卸資産が1,040百万円増加したものである。一方、負債合計は16,197百万円となり、前期末比723百万円増加した。主な要因は、新規開発事業用地等の取得のための長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)の増加809百万円等によるものである。純資産は7,576百万円となり、前期末比570百万円増加した。親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による利益剰余金の増加570百万円によるものである。
2024年7月期第2四半期末の自己資本比率は31.9%(前期末比0.7pt増)となった。また流動比率は216.1%(同10.6pt減)となっている。自己資本比率については大手同業他社と同水準にあり妥当なものと考えられる。流動比率についても開発用事業用地取得のための必要資金を主に長期借入金により調達している状況で、資金繰り面は安定していると見受けられる。
(2) キャッシュ・フロー
2024年7月期第2四半期末時点の現金及び現金同等物(資金)の状況は3,347百万円となり、前期末比90百万円減少した。
営業活動によるキャッシュ・フローについては783百万円の支出(前年同期は6,111百万円の支出)となった。主に棚卸資産の増加1,455百万円、前受金の減少267百万円によるものである。投資活動によるキャッシュ・フローについては173百万円の収入(前年同期は171百万円の収入)となった。主に預金の払い戻しによる収入106百万円、貸付金の回収による収入105百万円によるものである。財務活動によるキャッシュ・フローについては519百万円の収入(前年同期は4,437百万円の収入)となった。主に物件売却等に伴う長期借入金の返済3,484百万円、開発事業用地取得のための長期借入金の増加4,198百万円によるものである。
同社は業容拡大のために積極的に開発事業用地を取得していることから棚卸資産の増加によるキャッシュ流出が大きく、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス傾向にあり、不足する資金を主に長期借入金により調達している。同社のビジネスモデルが投資物件の1棟売りという性格から資金回収も他の分譲形態に比較して早いほうではあるが、今後も営業活動によるキャッシュ・フローの動向には留意すべきと考えられる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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