米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。一大現象となっているアマゾン・エフェクト。実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■米国とは異なる日本市場アマゾン、楽天、ヤフーの三つ巴
日本では、アマゾン・エフェクトはどのように作用していくのだろうか。
アメリカでは、アマゾン1社がECサイトで飛び抜けた存在になっているが、日本では、楽天<4755>、ヤフー<4689>、アマゾンの3社が三つ巴で状況は異なる。
日本貿易振興機構(JETRO)が2017年7月に公表した「ジェトロ世界貿易投資報告2017年版」によると、日本のEC市場におけるシェアは、アマゾンが20.2%でトップ、2位には僅差で楽天(20.1%)、3位はヤフーショッピング(8.9%)だった。
アマゾン1社がECサイトの約5割を握るアメリカ市場に比べ、日本では上位3社の合計が市場シェアの約5割を占める点は大きな違いといえる。とはいえ、小売業界では「米国で起きたことは数年後に日本でも起きる」とよくいわれる。数字からもその兆候は見てとれる。
アメリカと同じ道をたどると予想される筆頭は、百貨店業界だろう。2017年には、楽天、ヤフー、アマゾンジャパンの国内ネット通販大手3社の販売額が約6兆7,000億円に達し、約5兆9,500億円の百貨店を初めて抜いた。
アメリカでも百貨店の存在感は薄くなるばかりだが、日本でもこの趨勢は基本的に大きく変わらないだろう。実際、百貨店はショールームと化している。ECサイトで高級品を買う前に百貨店で実物を見て、価格が安いECサイトで買う人は少なくない。定価販売が基本の百貨店は価格競争力がなく、かつてのように「百貨店で買う」というステータスもなくなっている。日本でも百貨店は時代から取り残された業態になりつつある。
小売業最大の販売額(約10兆6,480億円)を誇るスーパーとの差も急激に縮小している。こうした状況に歯止めをかけようと、国内大手スーパー各社はアマゾンに対抗すべく提携する動きを活発化させている。
セブン&アイホールディングス<3382>は、アスクルと共同でネット利用の食材宅配サービス「IYフレッシュ」を開始したほか、楽天はネットスーパーで西友(ウォルマート傘下だが、売却する方針といわれている)、家電分野でビックカメラ<3048>と提携した。ソフトバンクグループ<9984>とヤフー、イオン<8267>は3社共同でイオンの店舗や物流網とソフトバンク・ヤフーのIT技術を組み合わせた新しいサービスを開始する方針だ。
家電やアパレルのECサイトでも競争は激化しているが、対アマゾンの取り組みで消費者から支持を得るケースも出てきている。なかでも評価が高いのが、ヨドバシカメラのネットショップである「ヨドバシドットコム」だ。
同じ商品であれば、ポイントでの還元額を含めてもアマゾンのほうが安いことが多いが、アマゾンでは送料がかかるケースが多いのに対し、ヨドバシドットコムは配送料が全品無料。ヨドバシエクストリームサービス便を選択することで、東京23区内なら最短2時間30分で商品が届く。アマゾンを上回るスピード配送は、多くの消費者から支持を得ている。
なお、2018年に入り、アマゾンは日本市場におけるファッション事業に本格参入した。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング<9983>や「ゾゾタウン」を展開するZOZO<3092>が強いアパレル通販業界に殴り込みをかけるかたちだが、現状ではそれほど大きなインパクトになっていない。
しかし、東京・品川に4階建てで延べ床面積は7500平方メートル以上の世界最大規模の専用撮影スタジオを建設するなど、ファッション分野への投資額を今後も増やす意向で、2017年から2018年にかけて約1,000の新規ブランドの販売を開始し、さらにその数を増やす方針だという。自社ブランドの育成にも力を入れていることもあり、今後は間違いなく、ユニクロやゾゾタウンといった国内ファッションEC大手にも脅威になりそうだ。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.9 マクロ経済にも影響を与えるアマゾン・エフェクト【フィスコ 株・企業報】」~)
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