同社は静岡県を地盤にLPガスを中心とした「エネルギー・住生活関連事業」と「情報通信事業」を主軸に事業を展開しており、暮らしに関わるあらゆるサービスをワンストップで提供し、顧客やその先の地域・社会・地球環境とのつながりを深めながら、人々の豊かな生活、地域社会の発展、地球環境保全に貢献し、日本を代表する生活総合サービス企業に成長することを目指している。
現在の事業セグメントは、「エネルギー事業」「情報通信事業」「CATV事業」「建築設備不動産事業」「アクア事業」「その他」の6つに分けて開示している。事業セグメント別の売上構成比(2024年3月期)を見ると、祖業である「エネルギー事業」が43.6%、「情報通信事業」が24.5%、「CATV事業」が15.4%で、これら3事業で全体の80%を超えており、直近5年間の推移を見ても大きな変化はない。
1. エネルギー事業
エネルギー事業では、売上高の約83%をLPガス事業、約17%を都市ガス事業が占めている。主力のLPガス事業は(株)TOKAIで家庭・産業用を主に販売し、一部卸販売も行っている。サービスエリアは静岡県や関東圏が中心であるが、2015年以降は新規エリアとして南東北や中部・東海、中国・四国、九州エリアなどにも順次進出し、顧客基盤を拡大している。2025年3月期中間期末時点の顧客件数は804千件で、既存エリア、新規エリアとも増加基調が続いている。新規エリアの構成比については、2019年3月期の約4%から直近は約13%に上昇している。業界のポジションとしては、直販で岩谷産業<8088>、日本瓦斯<8174>に続く3番手となる。市場シェアは、地盤である静岡県で約2割とトップを占め、競争の激しい関東圏でも1割弱と2番手に位置する。LPガス利用世帯数は全国で約2,100万世帯あるため、全国シェアで見ると3%強の水準だが、今後も営業エリアの拡大とM&Aの推進によりシェアを拡大する戦略である。国内のLPガス販売業界は中小零細事業者が多く、経営環境の厳しさから年々大手資本への集約化が進んでおり※、同社のシェア拡大余地も大きいと弊社では見ている。
※ LPガス販売事業者数は2012年の約2.1万事業者から2023年は約1.5万事業者に減少している。
都市ガス事業は東海ガス(株)が静岡県の焼津市、藤枝市、島田市で都市ガスの販売を行っているほか、2017年4月のガス小売全面自由化を契機に、自治体が運営していた都市ガス事業を譲受することで営業エリアを拡大している。具体的には、群馬県の下仁田町(2019年4月より)、秋田県にかほ市(2020年4月より)から都市ガス事業を譲受し運営している。2025年3月期中間期末時点の顧客件数は74千件となっている。都市ガス事業者は全国で190事業者(私営172、公営18)あり、このうち大手4社を除けば地域の中小規模事業者がほとんどであることから、今後もM&A案件が出てくれば検討する方針だ。
2. 情報通信事業
(株)TOKAIコミュニケーションズで展開する情報通信事業は、コンシューマー向け事業としてISP(インターネットサービスプロバイダ)事業、MVNO※事業、モバイル事業(携帯電話販売代理店事業)を、法人向け事業として通信回線サービス、データセンターサービス、クラウドサービス、システム開発などを行っている。2025年3月期中間期の売上構成比は、コンシューマー向け事業が約41%、法人向け事業が約59%とここ数年は法人向け事業の比率が上昇傾向にあり、営業利益でも大半を占める格好となっている。
※ MVNO(Mobile Virtual Network Operator):携帯電話等の無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供する事業者。
ISP事業は、全国をサービスエリアとする「@T COM(アットティーコム)」と静岡県をサービスエリアとする「TOKAIネットワーククラブ(TNC)」の2つのブランドで展開しており、静岡県内でのシェアは約2割と首位を占める。また、2015年2月よりNTT(日本電信電話<9432>)から光回線の卸提供を受け、自社の光インターネット接続サービスとセットで提供する光コラボサービス(「@T COMヒカリ」「TNCヒカリ」)の提供を開始したほか、大手携帯キャリアのサービスとセットにしたプランも提供している。2017年からはMVNOを利用した格安SIM/スマートフォン「LIBMO(リブモ)」の販売も開始した。2025年3月期中間期末の顧客件数は、従来型ISPサービス等で387千件、光コラボサービスで378千件、「LIBMO」で78千件となっている。
モバイル事業では、ソフトバンク<9434>の代理店として静岡県内を中心にモバイルショップ14店舗を展開しているほか、iPhoneの修理サービスを行う「iCracked Store」を7店舗出店している。2025年3月期中間期末の顧客件数は165千件と2016年3月期の236千件をピークに漸減傾向が続いている。
3. CATV事業
CATV事業はM&A戦略によりサービスエリアを徐々に広げており、直近では2022年10月に沖縄ケーブルネットワーク(株)をグループ化した。2025年3月期中間期末で静岡県、東京都、神奈川県、千葉県、長野県、岡山県、宮城県、沖縄県の1都7県で事業展開している(グループ会社11社)。顧客件数は放送サービスで920千件、通信サービスで403千件、合計で1,324千件と緩やかながらも増加基調が続いている。国内のCATVサービスの契約件数は通信サービス等も含めて全体で2,712万件(2023年3月末、うち多チャンネルサービス777万件、インターネットサービス1,062万件、電話サービス873万件)とインターネットサービスがけん引する格好で緩やかに増加している。業界ではJ:COM(JCOM(株))グループが視聴世帯数ベースで5割強のシェアを握っており、2番手以下は同社も含めて数%程度のシェアとなっている。このため、同社は今後もM&Aによってシェア拡大を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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