1. 事業領域
サイジニア<6031>が提供するサービスは、ハイエンドなデジタルマーケティングツールによって、ECサイトに来訪したユーザーの購買体験を改善し購買を促進することでECサイトの売上を伸ばす、CX改善サービスである。潜在ユーザー層にターゲティングしてECサイトへと送客するネット広告サービスも行っていたが、高収益・高成長のCX改善サービスに経営資源を集中するため2023年7月にネット広告サービスを売却し、CX改善サービスの単一セグメントとなった。同社の顧客は、ユナイテッドアローズ<7606>や(株)アーバンリサーチといったブランド、コーナン商事<7516>やCROOZ SHOPLIST(株)といったリテーラーなど、大量の商品を在庫・販売する有力小売企業が多い。昨今の有力小売企業はインターネットに流出する消費者を囲い込もうとEC事業を強化しているが、同社のサービスが「ほしい商品に気づく」「ほしい商品が見つかる」「店舗へとつなげる」というECの目的を高いレベルでカバーしているため、同社へのニーズは日増しに高まっている。
EC売上高上位30社のうち30%以上が「ZETA CXシリーズ」を導入
2. 事業内容
CX改善サービスでは、「ZETA CXシリーズ」や「デクワス.RECO」などを提供している。このうちZETAが提供する主力の「ZETA CXシリーズ」は、キーワード入力時の表記揺れの吸収やサジェスト機能・もしかして検索・絞り込み・ファセットカウント・並べ替えなど、多彩な検索機能を備えたEC商品検索エンジン「ZETA SEARCH」を中心に、機械学習による協調フィルタリング・ルールベースフィルタリング・相関など複数のマッチングロジックを組み合わせてパーソナライズする「ZETA RECOMMEND」、総合点・品質・コストパフォーマンスなど複数項目の点数評価やフリーコメントなど多角的な評価軸を有し、カスタマーレビュー機能を容易に実装できる「ZETA VOICE」(投稿数は既に1,000万件を超える)、商品説明やクチコミなどのUGCを解析してキーワードを抽出し、商品詳細ページのハッシュタグを自動生成する「ZETA HASHTAG」、サイト内検索クエリを分析してリアルタイムニーズに適合したサイト広告を表示する「ZETA AD」などのサービスを組み合わせて高い効果をあげることができる。なお、「ZETA AD」は、デジタルマーケティングにおける新領域のリテールメディアへの扉を開く先駆的なツールで、顧客にとっても同社にとっても大きな意義を持っている。
「ZETA CXシリーズ」の特長は、このようにECサイト内での商品検索やレコメンドなど必要な機能をすべて備え、しかも処理スピードや処理量など他に類を見ないハイエンドな作りとなっている点にある。また、アパレル・家電・ショッピングモールなど各サイトに合わせた自由度の高い設計や柔軟なデータ連携が可能で、効果測定やA/Bテストを通じた新機能の提案、改善チューニングなど継続的なサポートも提供しており、様々な顧客の戦略的なマーケティングを支援することができる。さらに、ユーザー視点を意識した設計になっているため、優れた購買体験をユーザーに提供することができる。これらのことから、CXを向上させてコンバージョン率を上昇へと導くソリューションとして、各種メディア・ランキングで上位または推奨サービスとなっていることが多く、EC売上高上位30社の有力企業のうち30%以上が「ZETA CXシリーズ」を導入している。
高収益・高成長のZETAは、強みを背景にさらに成長加速へ
3. ZETAの強み
「ZETA CXシリーズ」を展開する子会社のZETAは、ECサイト内の商品検索・レビュー・ハッシュタグ・OMOソリューションを開発販売する高収益・高成長企業である。コマースとCXのリーディングカンパニーとして、(1) 他に類を見ないハイエンド多機能サービス、(2) 自社開発による高収益及びストック型収益であるため粗利率上昇が加速しやすいビジネスモデル、(3) 売上拡大に伴って高まるEC事業者のハイエンドニーズへの対応、(4) 一気通貫したサービスを背景に増加するサービスの複数導入、(5) 関連市場であるEC市場やデジタルマーケティング市場自体の拡大 ―― といった強みを持っている。同社は、こうした強みを背景にこれまでも強い成長力を示してきたが、今後もさらに成長を加速しようとしている。
なお、強みの中身は次のとおりである。
(1) 他に類を見ないハイエンド多機能サービス
ECを始めようとする事業者は、ECサイト制作やECモールに付属しているローエンドサービスでCX改善をスタートする。しかし、売上が拡大するに伴い、離脱率・放棄率の低下を抑制しコンバージョンを最大化するためにハイエンドで多機能なサービスを求めるようになる。こうしたハイエンド多機能サービスを提供している企業は、ZETA以外には国内にほとんど見当たらない。なお、CX改善サービスで先行する欧米では、Adobe
(2) 自社開発による高収益及びストック型収益であるため粗利率上昇が加速しやすいビジネスモデル
「ZETA CXシリーズ」は同社オリジナルのハイエンドサービスであるため高収益である。かつサポートを付随したストック型収益であるため変動費率が低く、毎期粗利益率が上昇しやすいビジネスモデルである。また、固定費が増大する要素が少ないため、営業利益率も年々改善する傾向にある。
(3) 売上拡大に伴って高まるEC事業者のハイエンドニーズへの対応
EC売上やOMOが一定水準を超えると、きめ細かいサービスやフレンドリーな接客(UI)を求めるユーザーが増え、EC事業者はユーザーの期待に応えるハイエンドサービスが必要になってくる。EC市場が拡大するなか、そうしたサービスを求めるEC事業者の増加に拍車がかかってきており、このため「ZETA CXシリーズ」を展開する同社の顧客数は毎期着実に増加している。
(4) 一気通貫したサービスを背景に増加するサービスの複数導入
ZETAは時宜を得たオリジナルの新サービスの開発を続けているため、メニューが充実しているうえ、CXに関して一気通貫したサービスの提供が可能である。このため、例えば「ZETA SEARCH」でエントリーしたのち「ZETA VOICE」や「ZETA HASHTAG」など同社サービスを複数導入するEC事業者が増えており、顧客企業当たりの売上高も毎期着実に拡大している。
(5) 関連市場であるEC市場やデジタルマーケティング市場自体の拡大
EC市場はコロナ禍でも成長を続け、特に同社の顧客が属する物販系EC市場は大きく伸びた。仮にアフターコロナで踊り場があったとしても、中長期的なEC化の流れは止まらないと見られている。また、デジタルマーケティング市場もDX化の流れのなかで中長期的な成長が予測されている。このようにZETAの関連する市場環境は非常に良好と言うことができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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