現時点で、同社を含む中古車事業者から本格的なオンラインディーラー事業への参入の意思表示は無い。しかし、米国も州、自治体で登録申請のフォーマット、方法は統一されたものはなく、日本ではシステム化が不可能なものとも考えにくい。また、消費者が購入決定後、10分で車両を引き渡すことは将来的な目標設定としては適切かもしれないが、わかりやすいセールストークと認識した方が良いかもしれない。極端な短納期以外のオンライン化によるユーザーのメリット(価格透明性やサービスの公平性の確保など)、事業者のメリット(スケール化に成功後のコスト低減効果とブランド力強化による市場優位性の強化など)は、米国での実例を見る限り競合企業との差別化を図る非常に大きな要素となる可能性があるためである。また、オンライン販売を可能にするのは、ディーラーとしては中古車を調達後、販売可能なレベルに整備、補修、清掃しておく必要があるが、これは現在の日本の大手中古車流通からすると順番が逆でコスト増加要因になりかねない。しかし、これはオンライン販売には必須事項であり、決めてしまえば不可能なことでもないと考えられる。日本での中古車販売のオンライン化はもちろん簡単な事とは思わないが(簡単なことであれば既に事業化されているはず)、米国での10年以上の実例が存在すること、日本においても消費者、事業者ともにメリットの期待される事業モデルであるため、日本の中古車流通において常に先進技術を導入し、変革を進めてきた同社の動向が注目される。つまり、当面は大型店舗とピットサービス強化によるシェアアップが期待されるが、その後も有力な成長戦略が残されているといえよう。
リアルな販売店舗を全米展開し、その上でオンライン販売との融合を進めるCarMaxの動向は日本最大手のIDOMにとって、より参考にすべき対象と考えられる。CarMaxは1993年に設立され、全米に247店舗を展開する全米最大の中古車小売業者としての地位を確立している。2018年にアトランタでオムニチャネル戦略を試験的に導入し、2021年にはオンラインでの自動車情報提供とデジタルショッピングのリーダーの1つとして広く認識されているEdmunds Holdingを買収し全国展開を完了した。CarMaxのオムニチャネル戦略は、顧客がオンラインと実店舗のどちらでもシームレスに車を購入できるように設計されている。顧客は自分の都合に合わせて購入プロセスを進めることができ、顧客がオンライン、店舗、またはその両方を通じて中古車を購入できる柔軟な体験を提供している。オムニチャネル戦略はオンライン専業やリアル店舗専業の事業者と比較して、システム化の困難さ、複雑さはあるものの、顧客満足を高める有効な戦略と考える。
IDOMは現時点ではオンライン小売事業の導入は表明していないが、在庫車両データのオンライン検索機能の強化や資金調達と保険、下取り見積もりのオンライン化などは積極的に進めており、ある程度の準備期間と意思決定がなされれば、日本における中古車オンライン販売が実現可能な有力な1社といえよう。その場合は、CarMaxに近いオムニチャネル戦略が採用される可能性が高いと考えられる。
<HM>
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