4. システム事業
システム事業は子会社のインフォディオが「スマートOCR」関連を中心に、保険分析・販売支援等のシステム開発やソフトウェア受託開発を展開している。「スマートOCR」は、定型・非定型の数千万枚の手書き・活字の文書等を認識してデータ化できるエンタープライズ向けシステムである。単に手書き・活字の文字変換を行うだけでなく、マスターデータ連携・自動処理、高いセキュリティ、スマホアプリ等も備えた総合システムとして高い評価を得ており、保険用途に留まらず幅広く企業・官公庁等のデジタル化・ペーパーレス化に貢献している。2024年4月には「スマートOCR」が、「AIsmiley AI PRODUCTS AWARD 2024 SPRING」にてAI-OCR部門を受賞した。
「スマートOCR」の収益は、初期費用+定額制の月額定額収益(サブスクリプション)、処理枚数が増えるほど収益が増加する従量課金制収益(リカーリング)、及び開発+長期利用契約の個別開発収益(カスタマイズ)の3種類となっている。リカーリングについては、販売した先にエンドユーザーがいるため広がりが大きい。顧客ニーズに合わせて柔軟なカスタマイズに対応できることが特長・強みである。販売はソリューション事業のAS部門が金融機関向け、インフォディオが官公庁・一般企業向けを中心に展開し、既に数百社の顧客へ提供している。
リカーリング型の導入事例としては(株)みずほ銀行がある。2021年11月に、みずほ銀行の経理業務効率化支援サービス「みずほデジタルアカウンティング」に「スマートOCR」が搭載された。フォーマットが異なる様々な紙の請求書をデータ化し、振込システムや会計システムへの連携も可能となった。
個別開発型の導入事例としては、独立行政法人統計センター(2020年11月に個々を特定できない処理が施された情報を認識処理する「AI技術を用いた文字認識サービスの提供業務」を受託、令和2年国勢調査等の定型帳票の手書き文字の認識に使用)、埼玉県警察(2021年12月に「スマートOCR」を導入、紙文書の取り扱いが多い警察業務においてデジタライゼーションを推進)、法務省矯正研修所(2021年5月に手書きアンケート情報を認識処理する「効果検証用OCR機器の賃貸借」を受託)、国税庁課税部個人課税課(2021年4月に国税庁の「確定申告書等作成コーナーの源泉徴収票OCR機能に係る開発及び機器等の提供等」を受託、OCRエンジンだけでなくWebアプリケーション開発、サーバー構築・運用、画像処理エンジンまで提供)などがある。
このほかの官公庁・一般企業の導入事例としては、2020年12月に(株)JTBが「スマートOCR」を組み込んで独自開発した「証憑書類電子保存化システム」が稼働開始した。JTBグループ全体で年間約570万枚のペーパーレス化、約7億円の経費削減に貢献している。2021年3月には(株)日立ソリューションズが開発したビジネスデータ活用支援「活文」に「スマートOCR」が採用された。金融機関への導入事例としては同年10月に、はなさく生命保険(株)が「スマートOCR健康診断書」を導入した。健康診断結果のうち引受査定に利用する項目の大部分(80~90%)の自動入力が可能となった。
同事業では商品・サービスのラインナップも強化している。データ抽出の基本パッケージとしての「請求書」「領収書・レシート」「名刺」「運転免許証」「健康保険証」「決算書」「源泉徴収票」「通帳」「健康診断書」「注文書革命DX」などに加え、次々と新たなサービスを開始している。2021年12月には「スマートOCR」で蓄積したAI-OCR技術を活用し、簡単操作で紙帳票を分類・データ化・保管・全文検索できる電子帳簿保存法に対応したクラウドサービス「DenHo(R)(デンホー)」(以下、DenHo)をリリースした。さらに「DenHo」の高機能バージョンという位置付けで、2024年1月に「brox(ブロックス)」の提供を開始した。スキャンした紙文書をAI-OCRでテキストデータ化し、PDF、Office系ドキュメントも含めて横断的に全文検索できるエンタープライズサーチである。
また2021年11月には、(株)アシスト及びUbicomホールディングス<3937>と共同開発した生命保険エコシステム「生命保険給付金支払いプラットフォーム」の提供を開始(チューリッヒ生命保険(株)が業務利用開始)した。給付金支払い判定に必要な「診療明細書」「領収書」「調剤明細書」等を「スマートOCR」によってテキスト化・コード化し、支払い査定業務をデジタル化することで顧客サービス向上と査定業務の自働化・事務効率向上を実現するプラットフォームである。2022年2月にメディケア生命保険(株)、同年4月にアイアル少額短期保険(株)、2023年7月にネオファースト生命保険(株)に採用され、採用社数は4社となった。
その他の展開として、2022年5月にアミフィアブル(株)が開発したテスト工数削減AIアプリ「MELT.II」に「スマートOCR」が搭載されたことで、国内IT市場で6.4兆円規模になると想定されるテスト市場での活用が開始されている。同年8月には(株)flixy(2023年9月1日アンター(株)に吸収合併)の「メルプWEB問診」に「スマートOCR」のオプション機能である「手書きOCRフォームメーカー」(2022年7月リリース、かんたんな操作性を実現、特許出願済み)を搭載し、共同で全国の医療機関に展開することで合意した。医療機関への「手書きOCRフォームメーカー」を搭載したサービス提供は初となる。同年11月には会計システム向けに電子帳簿保存法・インボイス制度に特化したAI-OCRのAPIサービスを開始した。2023年10月には全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)が「スマートOCR」及びWebカメラアプリ基盤モジュール「スマートパシャリDX」を導入した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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