こうした技術優位性を背景に、競合他社と比較しても品質とコストの両面で優位性を発揮しており、自動車OEMおよびTier1との関係を強固にしている。特にxEV向け部品やEPS部品といった新領域においても実績を積み重ねており、電動化対応が進む中で次世代車両に適応できる開発体制を強みに挙げることができる。また、従来型のエンジン部品についても残存者利益を追求する方針を打ち出しており、収益性の確保と将来の成長投資を両立させる構えをみせている。現状、前期時点で製品別売上高はプーリ40%、xEV・EPS部品17%、トランスミッション部品22%、その他21%と中経の想定通りで進捗しているようだ。
2025年3月期の売上高は11,117百万円(前期比0.2%増)、営業利益は750百万円(同30.9%増)で着地した。日本国内でのトランスミッション部品やxEV部品の受注拡大で好調に推移、中国でもプーリ以外製品の伸長などが寄与してセグメント利益は黒字に転換した。一方、東南アジアではタイの自動車販売低迷により減収減益と地域間で状況が異なった。2026年3月期の売上高は11,170百万円(前期比0.5%増)、営業利益は830百万円(同9.9%増)を見込んでいる。米国の関税政策やマクロ環境の不透明感を考慮しての想定となっている。
市場環境では、自動車業界全体でEVシフトが進んでいる一方で、過去に想定されていたほどよりEV化は進んでいない。また、エンジン搭載車は中長期的にアジアを中心に需要はまだまだ存在しており、国内のエンジン搭載車の部品を製造・販売している企業は加速的に業績が低迷していく可能性は想定しにくい。一方、電動化の進展も同社のxEVやEPS関連事業には追い風となっており、特に軽量・高強度製品を武器とする同社の技術力は今後の需要拡大に応じた対応力を有している。
中期経営計画「第9次中計」では、プーリ依存度の低下とトランスミッション・xEV部品など次世代商品群の成長を打ち出している。とりわけ三木工場をプーリ専用工場に特化し、加西工場や長崎工場において非プーリ製品の製造比率を高めることで、事業ポートフォリオの見直しを進めている。プーリ外商品の国内外での拡販やモーターコア商品の国内で拡販していくようだ。また、自動車以外のロボット部品・農機部品といった事業分野にも参入し、開発型企業への進化を掲げている点も注目に値する。
そのほか、同社は株主還元を重要な経営課題の一つと位置付けしており、安定した配当を実施する方針。2026年3月期の予想配当は31.5円と今期も増配を計画しており、利益成長に応じた安定的な還元姿勢が伺える。また、所有株式数・保有期間に応じて株主優待制度を設置しており、1単元(100株)以上保有の株主に継続保有期間1年未満でクオカード500円分、継続保有期間1年以上でクオカード1,000円分を配布している。総じて、同社は伝統的な製造業でありながらも、技術開発と構造改革によって持続的な競争力を獲得しつつある企業となる。今後はxEV部品を中心とした成長戦略の実行力が問われるが、プーリ事業の収益性を保ちつつ、開発型企業への転換を加速させられるかがカギとなろう。
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