c) 保育事業
保育事業は、2024年3月期の売上高で9,113百万円、営業利益で728百万円を目指す。2年間の年平均成長率は売上高で19.2%、営業利益で42.0%となり、業績成長のけん引役となる。ライフサポートをグループ会社化したことにより、当初計画(売上高5,000百万円、営業利益率10.1%以上)に対して売上高で4,113百万円を上積みした。利益率に関しては8.0%と当初計画から引き下げたが、2022年3月期の5.6%からは上昇を見込んでいる。
東京都ではここ数年で保育園の整備が進んだことにより、待機児童問題が解消されつつあるため、認可保育園等の新設需要も減少に転じている。このため、同社においても認可保育園の新設計画を当初の年間3園ペースから、2023年3月期は2園、2024年3月期は1園に見直し、代わりに2024年3月期に公立保育園の民間委託で1園を受注する計画とした。また、ライフサポートにおいては、2023年3月期に公設民営保育園(指定管理)を1園、公設学童クラブを1ヶ所受託するほか、2024年3月期には認証保育園の認可化で1園、公設学童クラブの受託で2ヶ所を計画している。
今後、首都圏で保育園の新規開設需要は減少傾向が続く可能性があるものの、少子化対策としての保育料の無償化は継続されることや、女性の就業率向上もあって保育ニーズについては高水準が続くものと予想される。こうしたなか、同社は公立保育園の民間委託及び民営化の受託※を推進していく戦略となっている。公立保育園の運営コストは民間よりも約3倍高いと言われており、自治体側が財政面及び人材面から、今後は民間委託及び民営化の方向にシフトしていくと予想されるためだ。
※公立保育園の民間委託とは、土地・建物・保育園名すべてが現状と変わらず、運営のみを委託する形態を言う。民営化の受託とは、保育園の名称は変えずに、建物を建て替え、土地も自治体から賃借して運営する形態を言う。
東京都の場合、認可及び認証保育園の数は2021年4月時点で3,977園あるが、このうち4割弱の約1,500園が公立保育園となっている。これら公立保育園の民営委託及び民営化の受託を進めることで、成長を続けていく可能性は十分あり、特に保育士の採用力を強みとしている同社にとっては、事業を拡大していく好機と捉えることもできる。
利益率の改善施策としては、医薬事業との連携によるお薬相談等のサービス提供を推進※していくほか、介護相談等にも対応することで介護事業とのシナジーも創出していきたい考えだ。また、全国の専門学校等採用ルートとの信頼関係をさらに強化し、採用コストの抑制にも取り組んでいく。
※現在はセミナーを開催している程度だが、今後はスマートフォンアプリを活用したサービス提供を検討している。
d) ライフサポート
ライフサポートの重点施策として、保育事業では認証保育園の認可化、及び公立保育園の民間委託、民営化の受託を推進することで売上拡大と収益性の改善に取り組んでいく。また、児童育成事業(学童クラブ)についても、新規プロポーザル案件の入札情報の早期収集と提案力の強化により、公設業務委託学童クラブの施設数をさらに拡大していくほか、適正な運営を遂行していくことで3~5年ごとの委託先見直し時期において再契約の獲得に取り組んでいく。
介護事業においては、東京都港区地域に密着したサービスにより業務の効率化と訪問稼働率の向上を図るほか、地域連携を強化し、要介護度の高い新規利用者の獲得を推進することで収益性の改善に取り組んでいく。
(3) 財務・資本施策について
財務戦略については、2022年3月期にM&Aの実行によって有利子負債が増加したが、2023年3月期及び2024年3月期の2期間で獲得する営業キャッシュ・フロー2,463百万円を原資に、収益性・効率性を重視したアセットライトな投資方針により1,254百万円を成長投資に振り向け、残った1,209百万円のフリーキャッシュ・フローのうち773百万円を有利子負債の削減に、149百万円を配当金に振り向ける計画となっている。業績が計画通り達成すれば、2024年3月期末の自己資本は3,908百万円と2022年3月期末から706百万円増加することになる。なお、M&Aについても条件に適う案件であれば医薬、介護、保育事業ともに引き続き検討していく方針となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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