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2023/08/08 - ダイヤHD(6699) の関連ニュース。 目次徳原英真氏:こんにちは。ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社、専務執行役員CFOの徳原です。さっそくですが、2023年度3月期決算説明会を行わせていただきます。よろしくお願いいたします。

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ダイヤモンドエレクトリックHD、再生最終局面に向け最後の十完歩

投稿:2023/08/08 15:00

目次

徳原英真氏:こんにちは。ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社、専務執行役員CFOの徳原です。さっそくですが、2023年度3月期決算説明会を行わせていただきます。よろしくお願いいたします。

私からは、2023年3月期の決算実績と2024年3月期の通期業績予想についてご説明します。

2023年3月期 第4四半期 決算概要(P/L)

2023年3月期を当期とする第4四半期の決算概要(P/L)をご説明します。売上高は、自動車機器事業と電子機器事業の伸びに伴い、前年同期比148億3,400万円増の911億600万円、営業利益は、前年同期比16億7,900万円減のマイナス11億8,700万円となりました。

自動車機器事業および電子機器事業については、コロナ禍から販売は回復したものの、自動車機器事業は原価高騰の影響を受け減益、電子機器事業のみが増収増益という結果となっています。

一方で、エネルギーソリューション事業に関しては、前年同期比での売上高は若干の微減であったものの、自動車機器事業等と同様に材料高騰などの影響を受け、大幅な減益という着地となっています。

経常利益については、営業利益の増減額マイナス16億7,900万円からさらに約4億円減少し、前年同期比20億8,600万円減のマイナス8億1,700万円となりました。前期から為替差益が縮小したことや、借入等利息の負担が増加したことなどが影響しています。

また、前期は特別利益があり、特に米国の給与保護プログラムとして、コロナ禍での政策融資の債務免除益5.5億円を計上していました。その影響等で前期からのマイナスがさらに膨らみ、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比23億6,200万円減のマイナス10億7,500万円となりました。

営業利益増減要因分析

営業利益の増減要因分析です。2022年3月期の営業利益4億9,200万円からの売上高増の影響は、自動車機器事業と電子機器事業の増収に伴う営業利益のプラスインパクトが20億3,700万円ありました。一方で、材料高騰の影響によって全体でマイナス25億5,500万円のインパクトがあり、増収によるプラスインパクトを相殺するかたちとなっています。

主な要因としては、自動車機器事業のマイナス約11億円がありますが、こちらはほぼ材料高騰の影響によるものです。エネルギーソリューション事業もマイナス約12億円となり、こちらも材料高の影響や材料調達難からくる自社ブランド品の販売減等によって利益率が減少したことが要因です。

為替の影響は自動車機器事業がマイナス約4億円、電子機器がプラス約2億円で、差し引きマイナス1.9億円となっています。その他については、自動車機器事業と電子機器事業の生産増等により、製造経費およびその他固定費の増加などが要因です。

セグメント別四半期業績推移

セグメント別の四半期業績推移です。スライド左側のセグメント売上のグラフでは、下から自動車機器事業、エネルギーソリューション事業、電子機器事業、その他事業と積み上げています。

先ほどお伝えしたとおり、自動車機器事業と電子機器事業はコロナ禍からの回復基調にあるという状況です。エネルギーソリューション事業については、前下期から続く半導体不足による生産停滞のため、前第3四半期から当第1四半期まで売上高が停滞していましたが、当第2四半期以降は少しずつ回復の兆しを見せています。

右側のセグメント利益については、エネルギーソリューション事業の前下期から続く半導体不足の影響がセグメント全体の利益に大きく影響し、前第3四半期から減少傾向が続いていましたが、当第1四半期を底にして、当第2四半期以降は全体的に回復傾向となっています。

セグメント別に見ると、自動車機器事業は全体同様に当第1四半期を底として、第2四半期以降は緩やかな改善を見せています。エネルギーソリューション事業についても、生産停滞の影響が当第3四半期に解消され、当第4四半期以降では販売も回復しています。電子機器事業は、前期以降、四半期を追うごとに増収増益となっています。

2023年3月期 第4四半期 決算概要(B/S)

2023年3月期第4四半期の決算概要(B/S)の増減についてご説明します。総資産は前期687億2,700万円から当期787億2,700万円と、100億円の増加となりました。一方で、負債も585億5,100万円から678億2,300万円と、92億7,200万円増加しています。純資産は101億7,600万円から109億300万円で、7億2,700万円増加という結果となりました。

主な増減要因として、運転資本が約33億円増加しています。特に大きく増加したのが棚卸資産で、43億4,200万円あります。こちらについては、部材調達難を背景とした材料の確保や、販売増に伴う在庫増が主因となっています。

また、自動車機器事業における新規受注対応のための設備投資を目的とした有利子負債が30億6,900万円増加しています。

地域別決算概要

地域別の決算概要です。スライドの円グラフは地域別売上高のポートフォリオを記載しており、左側が2022年3月期第4四半期、右側が2023年3月期第4四半期となっています。

いずれの拠点においても、前期比では増収となりましたが、海外地域での増加が日本での増加を大きく上回った結果、日本での販売割合が49パーセントから45パーセントと縮小しています。拠点単位では、米国での増加が最も大きな伸びとなりました。

2024年3月期 業績予想

進行期である2024年3月期の業績予想の概要をご説明します。通期売上高は980億円で、当期実績から68億9,400万円の増収、営業利益は8億5,000万円で、当期実績から20億3,700万円の増益を見込んでいます。

営業利益増減要因分析(通期予想)

営業利益の増減要因です。2023年3月期実績のマイナス11億8,700万円から、2024年3月期の予想であるプラス8億5,000万円の増減内容を、先ほど同様にウォーターフォールで示しています。

販売単価良化の影響による営業利益増が38億円あります。内訳としては、自動車機器事業で18億円、エネルギーソリューション事業で20億円が増加する計画です。売上増については、販売単価良化以外に、エネルギーソリューション事業と電子機器事業での増収に伴う利益増により、22億円の増加を予想しています。

一方で、固定費増として45億円のマイナスを計画に織り込んでいます。主な要因は、エネルギーソリューション事業の開発投資やアフターサービス体制強化のための固定費増、生産量の増加に伴う製造経費の増加等です。

結果として、2023年3月期のマイナス11億8,700万円から約20億円増益の、8億5,000万円の着地を目指しています。

上場維持基準の適合に向けた計画 1/2

上場維持基準の適合に向けた計画についてです。2023年3月31日時点において、当社は東京証券取引所プライム市場における上場維持基準を満たさない状況となりました。流通株式時価総額について、上場維持基準は100億円以上のところ、当社は基準日時点で77億5,100万円と下回っており、基準を満たしていません。

この状況を踏まえ、6月23日に「上場維持基準の適合に向けた計画書」を東京証券取引所に提出するとともに、みなさまにリリースしました。当社の業績をしっかり上げていくことが株価の上昇につながると考え、計画書の内容を業績改善のロードマップとして示しています。

上場維持基準の適合に向けた計画 2/2

この計画における、当社の課題と課題に対する取り組みについてご説明します。自動車機器事業において、コロナ禍以降のグローバルサプライチェーンの歪みが材料確保難や材料高騰等の影響を招きました。その結果、損益分岐点が大幅に悪化し、当社グループ全体の業績に特に大きな影響を与えています。

この課題に対し、2024年3月期以降どのように改善していくかについてスライドにまとめています。自動車機器事業の2023年3月期実績は約29億円のマイナスでしたが、2024年3月期はマイナス15億円と、約半減させる計画を立てています。

2025年3月期以降も、約15億円から25億円の改善を行う計画としています。2024年3月期以降は各年で約20億円程度、あるいはそれ以上の全体の営業利益改善を見込んでおり、自動車機器事業をどのように改善していくかが非常に重要な要素になると考えています。

その中でも特に影響の大きい米国市場での損益改善についてご説明します。米国での業績は、2023年3月期はマイナス20億円でしたが、2024年3月期はプラス12億円の改善を目指します。2025年3月期、2026年3月期についても、2024年3月期対比で約10億円から14億円の改善を見込んでいます。

業績を改善するための取り組みとして、今期以降は米国自動車メーカーからの復注と新規受注した量産品の本格立上げを進めていきます。また、既存の低採算製品の単価向上と販売単価の良化、その他の合理化施策を進め、米国市場での損益改善を実現します。

その他の改善施策としては、点火コイルの一部生産集約、半導体部品の内製化、成形部品内製化を行います。成形部品の内製化は、昨年仲間化したクラフト社により行います。現ダイヤクラフト社グループとのシナジーを活かし、2025年3月期以降は各事業で年度ごとに約10億円から16億円の改善を目指しています。

このように、自動車機器事業の開発・改善を中心とした全体の業績改善に務め、着実に株価アップにつなげたいという内容にしています。

中長期経営計画 目標

小野有理氏:みなさま、こんにちは。ダイヤモンドエレクトリックホールディングスの小野有理です。平素は我が社の事業に格別のご支援を賜り、誠に以てありがとうございます。私からは、我が社の現状と行く末についてお話しします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

まずは、中長期経営計画についてです。現在、鋭意作成中である中長期経営計画にはまだ名前がついていませんが、「DSA2021再点火反転攻勢版」の終了を受けて、2024年3月期は「当期を起点に次の5ヶ年をいかに戦い抜くか?」をテーマとしています。残念ながら「DSA2021再点火反転攻勢版」で目指した「過去に例なく他に類見ぬ上場企業2社同時再生プラスワン」を達成することは叶いませんでした。

しかし、現在は夜明け前や最後の闇のようなものです。最も暗い闇の中を、多面体に耀き疾走する傍楽(はたらく=傍を楽にする)仲間達皆で駆け抜けるべく、連戦猛進している最中です。再生最終局面の今、この再生を必ずやり抜きます。そして次の5年間は、この地球上で求められる企業、公器としてのあり方を見事に示すべく、また連戦猛進する所存です。

その指標をスライドに示しています。2023年3月期は、ご覧のように残念ながら営業赤字でした。ただし、再生の途上でさまざまな困難が訪れたことを、簡単に外部環境のせいにはしません。

経営とは社長そのものです。社長の持ち得ているものすべてが経営です。そのことを思えば、私が嵐を呼んだのかもしれません。しかし、再生の途上でさまざまな困難が降りかかってきたことは、我が社にとっての社運です。それを全身で受け止めて活かすという心がけで、次の5ヶ年を生き抜いていく所存です。

2024年3月期の予想売上高は980億円です。いったんは980億円として、みなさまに公表していますが、内心は「1,000億円を達成してみせる」という思いで実際に世界中を飛び回っています。

営業利益率は、残念ながらまだ低水準にありますが、前期からは着実に回復させ、優れた事業構成から生み出せる収益構造であることを、みなさまにいま一度証明してみせます。我が社の奮闘を何とぞお見守りくださいますよう、よろしくお願いいたします。

さて、先日発表しました現在鋭意作成中の新たな中長期経営計画ですが、その5年目の我が社の到達すべき点は、スライドに記載のとおりです。コミットメントとして、現業の成長によって、売上高1,500億円を必ず成し遂げます。

また、営業利益率は、最初の中長期経営計画で目指した6パーセントを達成することで存続費用と開発費用を稼ぎ、それを「魅力的だ」と思う新たな傍楽仲間達が数多くやってくる企業に生まれ変わらせていくつもりです。

ROEの目標は20パーセント以上です。ありがたくも多くの金融機関様の強烈な支援と紐帯によって、私基準ではありますが非常に強いバランスシートが作れました。

この後は、エクイティについてももちろん強化を図っていきます。よいバランスシートはありますが、経営とはその優れた比率を誇るバランスシートをいかに崩して前進するかです。それらをしっかりとコントロールする中で崩しながらスクラムを組み、波打つように、塊となって相手を崩しながら前進することが大切です。

営業利益率の向上が最も優位であることは言を俟ちません。しかし同時に、金融機関様とのしっかりとした連携や、機関投資家のみなさまとの確かな信頼関係を結ぶことによって、新たなバランスシートを作り上げ、優れた指標を市場に示し、さらに多くのみなさまのご支援が賜れるように。このようなかたちの5年後を描いていきます。

中長期経営計画 初年度策定社長方針

新たな中長期経営計画のうち、初年度に策定した社長方針をお伝えします。

1つ目が「品質保証更なる厚肉化、販売網構築」です。我が社の不変の社長3大方針の1番目は「お客様要求品質第一に徹する」と定めています。これに従い、我が社では徹底してお客様の要求品質に応えることで、困難な再生を可能にしてきました。

品質保証という、お客様要求品質を満たす活動には終わりがありません。それらを、我が社の販売網構築につながるところまで、あるいはエンドユーザーを含むお客様との本当のカスタマーリレーションまでを見据え、販売網構築に向けてさらに厚肉化していきます。

開発初期からのお客様要求品質追求、すなわち、いわゆるコンカレントエンジニアリングは、当然ながら作りやすさを含みますが、このコロナ惨禍やウクライナでの戦争によって、グローバルサプライチェーンが崩壊しました。

買いやすさは作りやすさと同様に、ものづくり企業にとってたいへん重要です。すでに手を打ってきていることではありますが、それらをしっかりと継続し、もし一人ひとりの属人的な努力によってなされる身体知・暗黙知があれば、それらを着実に集団知化・形式知化し、みんなで戦える体制を、この「品質保証更なる厚肉化、販売網構築」で作り上げていきます。

もう少しかみ砕くと、我が社の収益構造のうち、最も収益率が高いのはエネルギーソリューション事業で、この取引販売商社様との信頼関係の強化は必須です。BtoBであれば、世界に冠たる製造業の企業様のほとんどが我が社のお客様です。それらの企業様との関係は、すなわち品質保証関係です。

一方、エネルギーソリューション事業における商流は「BtoBtoC」というかたちが主流ですが、残念ながら、これは我が社が過去の旧田淵電機単体の時代から培えなかった品質保証関係・信頼関係です。

このかたちを主体としているエネルギーソリューション事業のうち、特に販売商社様やその先の業者様を含めた企業様、さまざまなこの商流で一緒に戦ってくださっている方々とさらなる信頼関係を構築します。

また、お客様要求品質第一という中で、もの作り企業が最是とせねばならぬ理念をどこまでも共有し、エンドユーザーのお客様の信頼を勝ち得ていきます。そして、その中で共同販売戦線を徹底して敷設していきます。これが次の5ヶ年における新中長期経営計画の骨子の1つです。

2つ目は「社長総点検全拠点実施、不良撲滅」です。品質保証を支える我が社の現場の傍楽仲間達全員の力を結集して、エンドユーザーのお客様やB2Bの世界に冠たる製造業のお客様の要求品質を満たすための力量向上を図らねばなりません。

「社長総点検」と我が社では称しています。本来的には現場である工場のチェックですが、そのチェックは現場だけにとどまらず、拠点そのものの運営についてのさまざまなチェックを含んだものです。

これを、海外出張を昨夏から再開して現在世界中を駆け巡っています。今年度は、まず「社長総点検」全拠点実施を必ずやります。そして、その「社長総点検」をもって「不良撲滅」を行い、ミスゼロ、不良ゼロを目指していきます。ただし、クレームゼロは目指しません。なぜか? クレームとは時に、お客様のさまざまな思いでなされることがあるからです。

不良ゼロやミスゼロは心がけによって叶えられますが、クレームゼロはミスゼロとは違います。繰り返しますが、お客様の心情にも関わることでもありますので、クレームがゼロになることはあり得ないだろうと考えています。

逆にクレームは尊ぶべきものです。クレームを生んだことについては、後にしっかり「なぜ? なぜ? なぜ?」「誰? 誰? 誰?」と根本原因である真因を究明して、その撲滅を図らねばなりません。そのため、クレームそのものをなくすことは目指しません。

クレームを言ってくださるお客様は、ありがたいお客様です。まだ少し説明不足かもしれませんが、クレームを受けた我が社の仲間が、すべてを即時に社長の私に報告することは、我が社の優れた姿勢だと思っています。

「社長総点検」を全拠点実施する中で、今年から新たな取り組みを始めました。それは「社長総点検」を受けての「Factory Match」です。「Factory Match」とは何か? 社長、もしくはその命を受けた品質のトップであるCQOが工場を監査したりチェックしたりするだけではなく、工場同士でお互いをしっかりとチェックすることです。

国内には鳥取、新潟、栃木、秋田に工場があります。それぞれの工場が、自分の工場のことは丸々棚に上げて「お前んとこの工場、これできてへんのんちゃうか」「こないだ社長に怒られていたこれ、やれてへんのんちゃうか」など、相手のことを思い切り指摘し合います。これにより、我が社の真面目な仲間達はお互いに学び合っています。

この取り組みについては感想のレポートを提出させ、すべて私が目を通しています。そこには「あんなことを言われた」「こんなことを言いやがった」という怨嗟の声ではなく「あんな取り組みがある」「こんなふうに社長の言葉を正しく理解して、こういう現場作りをしているんだ」などの声が寄せられています。傍楽仲間達同士が喜びに満ちて学びあう風土ができつつあるのです。

ものづくり企業の力の源泉は、工場の傍楽仲間達が熱狂する士気です。この取り組みは、士気を高めるためだけでなく、お客様要求品質第一に徹するための一手でもあります。しかし、このような取り組みにより、お客様にお届けするものづくりの技術が向上していることも事実です。

この「Factory Match」は世界中で展開していきます。前期は、みなが世界中をやすやすと飛び回れるような時ではなく、人々が身じろぎもできず、じっと手を見ていた時機でした。しかしその中でも、テクノロジーの発展により、Web会議やカメラを持って現場を動くことでバーチャルな体験が行えるようになりました。

我が社も同じことを行っています。誰かが胸元辺りにカメラを構えて工場を歩きながら「ちょっとそこを止めて」「もうちょっと上、見せて」「ラインの下、潜って」「ズームして、そこのパーツフィーダーの入り口の辺り、ちょっと映しててよ」ということを行い、経費節減にも努めています。

また、ものづくりにおいて、私が6年前に名前をつけて密かにその開発を進めてきた、次世代燃料点火燃焼技術開発「Project A」についても発表しました。NDAを結んでいるため、詳しいお話は差し控えますが、すでに多くの企業様とコラボレーションを行っています。

3つ目は「グローバルサプライチェーン脱構築(デコンストラクション)」で、「堅固為る紐帯に依る【All Diamonds 経済圏】構築」とうたっています。この数年、グローバルサプライチェーンが崩壊した話を常にお伝えしてきました。しかし、ありがたくも昨年度に再構築の骨組みは完成したのではないかと思っています。

ただし、それは繕った再構築であり、それがダイヤモンドエレクトリックホールディングスにとって本当に正しい姿なのか、次の5年にふさわしいかたちなのか、疑わしいものでした。

昔、ケビン・コスナーが主演の『パーフェクト・ワールド』という映画がありました。彼は誘拐した子どもに向かって「アクセルを踏めば未来だ。とどまれば、ここじゃない過去に戻るんだ」と伝え、逃走を促します。

彼らの場合は残念ながら未来のない逃走でしたが、我々は違います。アクセルを踏んで未来へ向かっていきます。過去に戻ることはもちろん、今ここにとどまることも、私は一切許しません。よいバランスシートがあったとしても、それを崩して前進するのが経営です。現状にとどまっていては前進はありません。

現状をしっかりと見直し、まずは売上高1,000億円まで駆け抜けていきます。そこから1,500億円、2,000億円へ向かいながら、新しい時代に必要なサプライチェーンの再構築を目指します。考え方自体を変え、積極的な脱構築を図ります。

「All Diamonds」とはもともと、我が社の取引先持株会の方々と理念を共有するための組織です。通常、この手の取引先持株会や協力会は、自社の調達担当者と御仕入先様の営業マンとの関係が主になりますが、我々の場合は社長同士が結びついています。

我が社は、背伸びの仕方を間違ってつぶれてしまった中小企業群で、今は再生に身を投じています。そのことはすでに、統合報告書等でお読みいただいているかと思います。我々の周りには心血を注いで企業を創業し、あるいは創業者のもとでしっかりと企業を守ってきた社長の方々が多くおられます。

そのような社長同士が結びついた組織が「All Diamonds」です。長い時間をかけて、驚くほど強固な、金融機関様同様の紐帯を培ってきました。社長同士、あるいは後継者同士がつながって、さまざまなかたちで新しいものが生み出される機会を提供してきたと自負しています。

これらの企業同士が新たな商売を始め、融通を行っていくのが「All Diamonds 経済圏」です。この経済効果を測ることは容易ではありません。「All Diamonds 経済圏」はすでに我々の売上高の合計だけではなく、企業群として大きな効果を生み出しており、その規模は数千億円にものぼると考えられます。

我々の同志としての鉄壁の友情が、大きな販売交渉力や調達交渉力にもつながっていくと強く確信しています。このような関係性を引き続き強めていくことが我が社の目指すべき道であり、強さの根源になると考えています。今後も丁寧に関係構築を行い、邁進していきます。

また、グローバルサプライチェーンの脱構築達成に向け、売上高2,000億円を駆け抜けるための事業、ならびに地域を縦横無尽に網羅するサプライチェーン構想および構築を行っていきます。

我々が現在持っているサプライチェーンは、従来のダイヤモンド電機や田淵電機といった、地域に長年根差してきた中堅上場企業が培ってきたものです。今後、世界で必要とされ、愛される企業になっていくためには、サプライチェーンを再構築する必要があります。1事業の規模がかつての企業規模を凌駕しつつある中で、組織の体質強化を図りながら、サプライチェーン自体をしっかりと見直します。

我が社の事業ポートフォリオは、自動車機器事業、電子機器事業、エネルギーソリューション事業の三本槍で、それぞれに商流を持っています。これらはさまざまなプロダクトミックス、チャネルミックスによって、大きなマトリックス効果を生み出しています。

品質保証の厚肉化と同時に、販売網の構築も行いながら、サプライチェーンの再構築を行います。それが、事業や地域を縦横無尽に走りながら、時には売り、時には買い、というかたちで機能することを構想しています。すでに手は打っていますので、次の中長期経営計画で必ず実現してみせます。

トピックス ①メキシコ拠点設立

トピックスです。我々にとっての新しい挑戦として、メキシコにグループ会社を設立しました。旧田淵電機時代にもメキシコとは縁がありましたが、メキシコでの崩壊の原因となったアメリカも含めて、残念ながらあまりうまくいっていませんでした。

グループ全体では、ウエストバージニアに米国ダイヤモンド電機株式会社があります。いわゆる米国ビッグスリーを中心に、点火コイルの製造においてお客様を長年支えてきた工場です。この工場の立地や経験、何よりも長く真面目に我が社に貢献してきた傍楽仲間達の存在によって、メキシコ拠点の設立が実現できました。

メキシコ拠点設立に際して、我が社だけでは力が及ばなかったことがありましたが、先ほどお話しした「All Diamonds」の中から、「小野社長、我が社はメキシコに行けます」と申し出てくれる社長がいたのです。「All Diamonds」という優れた組織と、この社長のすばらしい侠気によって、最大の負担となる初期費用を賄えたことを申し添えておきたいと思います。このような強い信頼関係によって、驚くべき速度でメキシコ拠点の設立が叶いました。

設立の目的は、北米におけるエアコン事業の展開です。ターゲットは、我が社がこの事業において、占有率を1番にするとお伝えしているお客様です。これらをしっかりと進めるため、この決断をしました。

今年度の電子機器事業は、400億円近い売上高を目標に掲げています。5年後には売上高を800億円にすることを思い描いています。メキシコ拠点の設立は、目標達成のための第一歩です。

まだ困難なことも多く、苦戦する場面もあるかと思います。しかし、鳳が空高く舞い上がるためには逆風が必要です。我々も逆境や苦難を必ず乗り越え、メキシコから北米に向けて連戦猛進していきます。

トピックス ② 【世界初】アンモニア燃焼技術開発

最後に、いわゆる「Project A」と呼ばれるアンモニア燃焼の技術開発についてお話しします。密かに取り組んできたこのプロジェクトは、2017年に着想を得て「絶対にやる」と決断し、2018年の春先には専用ラボとして「A-Lab」を設立しました。

組織の財務的な再生を最優先すれば、点火コイルの製造やエンジニアリングに長じた仲間達は現業の開発や、お客様活動に専念するべきだったかもしれません。しかし当時の私は、その次の5年、10年のことを考えていました。一度は消滅しかけて多くの人々に迷惑をかけた企業が公器として生まれ変わるには、次の時代に求められる技術を身につけることが絶対に必要だと思ったのです。

そのような背景から投資を決断しました。このプロジェクトに取り組む優れたエンジニアの仲間達には「小事に構うな、研究に没頭せよ」「集中とは『真ん中に集めること』ではなく『真ん中にあるもの以外をすべて排除すること』だ」と指示してきました。その結果、アンモニアと水素の混合気を燃料とした既存レシプロエンジンで、高いアンモニア混合率での安定燃焼を実現できました。

アンモニア燃料100パーセントでの安定燃焼は、公表されている限りでは世界初です。この数年でアンモニアが代替燃料として注目され、その製造や運搬についてニュースになることが増えてきました。しかし、燃焼技術の開発は大変難しいと捉えられているものの、これまではあまり話題になってきませんでした。

他の技術に注目が集まる中で「よそもやっているから、ウチも早よやらなあかん」と奥歯を噛みしめながらも焦らず取り組み、今年5月に学会で発表する運びとなりました。

多くの企業様とコラボレーションを行い、NDAを結び、共同開発にも勤しんできました。これらについても可能な時期にしっかりと発表し、多くの未来のお客様や協業相手に届け、我が社の企業価値を徹底的に高めていきます。

また、研究成果をもとに、超高エネルギー点火システムの製品開発にも着手しています。点火コイルでCO2を出し、エアコンの基盤によってフロンガスを出していた会社が、何とエネルギーソリューション事業における新たな技術開発や「EIBS7」のようなハイブリッド蓄電システムによって、今や地球環境を救う企業に生まれ変わろうとしているわけです。

我々の点火コイル技術によって、モビリティの可能性を損ねずにCO2排出ゼロを目指すという、壮大な夢が実現できるかもしれません。また、ハイブリッド蓄電システムを使えば、人々が安心して暮らせる環境を提供できます。

次の5年で我が社が目指すべきは、地球環境に資するものづくり企業に生まれ変わることです。機関投資家をはじめとする多くのみなさまには、このことを十分にご理解いただきたく思います。反省の多かった前期の業績や、少々トリッキーな配当をお願いした株主総会を乗り越えて前進する我が社を、今後ともご支援いただければ幸いです。

我が社の現状と行く末についてのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

Q&A

※今回の決算説明会に際していくつかご質問を賜りましたので、弊社回答と併せてQ&Aのかたちで資料の最後にまとめております。ご参照いただければ幸いです。

配信元: ログミーファイナンス

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