半導体業界は、足元で依然としてコロナ禍による半導体供給不足に対応するために積み増した在庫を通常在庫へ戻す調整プロセスを継続している。過剰在庫の度合いは需要家ごとに異なるが、従来モデル完成品と部品の在庫について解消するか否かの見極めが難しく、新規モデルの開発に慎重な需要家が依然として多い。加えて、同社の業績に大きな影響を与える中国本土の需要家については、半導体不足の時期にできるだけ確保しておきたいということに加え、米中経済摩擦による将来への調達不安から半導体部品の買い溜めを行う傾向が強かったため、在庫過多の状況が需給の健全化をさらに遅らせているという状況にある。
監視カメラシステム、車載カメラシステムを含む電子デバイスメーカーの多くにおいても同様で、新モデルの開発に着手する完成品メーカーは限定的である。同社の新製品であるCMOSイメージセンサーやドアフォン向け半導体についても、一部のメーカーが機能評価を終え、一部のドアフォンメーカーが採用を開始したことを除いては、新モデルの開発には慎重な姿勢を示している。ただし、在庫調整については一部の需要家において健全化の兆しが見られる。特に車載カメラシステム向け半導体分野の一部の需要家が需要予測を引き上げているほか、監視カメラシステム市場向け半導体分野でも市中の需要に回復の傾向が見られており、今後は監視カメラシステム向け半導体分野や車載カメラシステム向け半導体分野の需要家による過剰在庫の正常化が進み、部品の追加調達が本格化すると予測している。
なお、ファウンドリ業界の世界最大手であるTSMCは、2024年度第1四半期決算説明において、世界の半導体市場は2023年の急激な在庫調整と低水準を経て、2024年通年ではメモリを除く半導体市場全体が前年比10%程度増加すると、2023年度発表の「前年比10%以上」から若干ネガティブに予測を修正した。一方で、ファウンドリ大手の聯華電子股フン有限公司(United Microelectronics Corporation)(UMC)は、2024年度第2四半期決算説明において、今後は特に通信分野とコンピューティング分野ではエンドマーケットの動向がさらに改善すると予想している。自動車業界については、BYDなどがグローバル成長を加速させており、車載機器、産業機器及びAI向けは旺盛な需要が継続すると見込まれる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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