日本の連休中、米株式市場ではNYダウが17日に166ドル安、20日に614ドル安と大きく下落した。中国恒大集団の経営危機が欧米経済や金融市場にも波及することが懸念され、連邦政府の債務上限問題や連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の縮小(テーパリング)への警戒感も広がった。また、主要株価指数が直近のトレンドを下抜けしたとの見方に、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が節目の20を上回ったことも重なり、システム的な売りに拍車がかかったとみられている。連休明けの日経平均はこうした流れを引き継いで478円安からスタート。寄り付き直後に一時29832.52円(667.53円安)まで下落すると、押し目買いが入って3万円台まで値を戻す場面もあったが、中国恒大問題の行方を見極めたいとの思惑から一段の戻りを試す動きは限られた。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が5%を超える下落。中国企業への投資リスクが改めて意識されたようだ。その他売買代金上位も郵船<9101>、レーザーテック<6920>、川崎船<9107>、商船三井<9104>、トヨタ自<7203>など全般軟調。日本製鉄<5401>とJFE<5411>が揃って4%前後下落し、TOTO<5332>なども中国経済の鈍化懸念から下げが目立つ。また、立会外分売の実施を発表したキャリアインデ<6538>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、英社と共同開発している抗がん剤の試験結果が良好と伝わった第一三共<4568>は7%超の上昇。緊急事態宣言の解除検討との報道でJAL<9201>などが買われ、業績上方修正の旭ダイヤ<6140>やダイセキS<1712>は東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、鉄鋼、機械、海運業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、空運業、電気・ガス業、医薬品の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。
本日の日経平均は連休中の海外株安を受けて大幅なギャップダウンスタートを余儀なくされた。20日も中国恒大の株価急落が続き、香港株安が欧米市場にも伝播する格好となった。日本を含むアジア株は中国恒大問題が各種メディアでクローズアップされるようになった先週後半から不安定な値動きを示しつつあったが、欧米では地理的な遠さもあってか先週まで「当局がソフトランディングに導くべく救済に乗り出すのでは」「金融市場への影響は限られるだろう」という楽観的な見方が多く、市場反応もアジアほど見られなかった。しかし、負債3000億ドル(約33兆円)以上と言われる中国恒大の経営危機は中国内外の経済や金融市場に相応の影響があるとみられ、欧米投資家は楽観的過ぎた感がある。
本日の香港ハンセン指数は朝方の売りが一巡すると下げ渋っている。ひとまずリスクオフ的な動きに歯止めはかかるだろうが、中国恒大問題の行方を見極めるまで積極的に買いづらいとのムードは残るだろう。ここにきて事業面で中国の影響が大きい日本株への慎重論もやや増えてきた。実際、TOTOなどは先週後半からの下げがかなりきつい。日経平均が下値模索にまでは至らずも、戻りの鈍い展開となっていることはこうしたムードを如実に表しているだろう。
さらに、今週は23日も秋分の日の祝日となり、21~22日には日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)という重要イベントがある。自民党総裁選を前にした日本株の先高期待は根強く、中国恒大問題が浮上した先週後半も海外実需筋の東証株価指数(TOPIX)先物の買い戻しや出遅れていた個人投資家の押し目買いが入っていた。総裁選後も当面は新首相による政策期待が高まると考えれば、日本株の相対的な好パフォーマンスが続くと予想するが、短期的に不安定な相場展開となることにも十分備えておきたい。
(小林大純)
<AK>
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