9月5日に発表された2024年7月期の決算は、売上高で前期比3.5%増の2,465百万円、営業利益で同27.8%増の311百万円となり、事前予想(売上高は前期比2.9%増の2,450百万円、営業利益は同1.0%増の246百万円)を上回っての着地となった。産業システム事業で一部大型の仕掛案件の売上計上が2025年7月期にずれ込んだものの、保守サービス事業が大きく伸びてカバー。適正な価格転嫁と個別案件の原価低減も寄与し、大幅増益となっている。
2025年7月期は、売上高で前期比7.4%増の2,650百万円、営業利益は同4.3%増の325百万円と、過去最高の売上高が見込まれている。コロナ禍の反動と主要顧客である自動車産業のEV関連投資への慎重姿勢もあり、前期末の受注高は低迷したが、半導体不足による長納期も解消される見通し。ストックビジネスとなる保守サービス事業も順調に積み上がっていることから、自動車業界の不透明感にも耐えうることができるという予想であろう。産業システム事業次第では、大きく上振れる可能性もあるという前提か。配当性向は30%以上が目標であり、現状の配当利回りは2.46%。成長と配当のバランスは良い。
決算発表と同時に「中期経営計画 2025-2029(ローリングプラン)」が策定されている。従来の計画において、2028年7月期の売上高で3,250百万円、営業利益で430百万円であったが、売上高で3,272百万円、営業利益で470百万円に上方修正された。2029年7月期の計画も新たに追加され、売上高3,528百万円、営業利益533百万円(営業利益率は2025年7月期予想比2.9pt増の15.1%)となる。
株価の水準訂正が進んだとはいえ、PERは1桁台、PBRは1倍割れとなっている。株価の割安感も強い。
なお、同社は工業炉の開発・設計・製造及び保守点検を手掛ける。設計のみ、製造のみを請け負うメーカーが多い中、川上の設計から川下の保守までの一連の工程すべてを自社で行う。売上高の約66%が自動車業界向け。事業セグメントは産業システム事業と保守サービス事業に分けられ売上構成比は約65:35となっている。保守サービスはストックビジネスであり、同社では他社製品への対応も可能であることから、その顧客数は年々増加している。
産業システム事業では産業用の大型工業炉を、オーダーメイドで設計・製造する。世の中で使用されている様々な商品や製品については、強度を増したり、物性を変化させて安定させたりするために、いわゆる「熱処理」が施され、その品質が維持されている。同社は、これらの「熱処理」を行う工業炉をオーダーメイドで設計、製造する。工業炉には、金属を溶解する「溶解炉」、塗装を乾燥する「乾燥炉」、樹脂を硬化する「硬化炉」など、様々な種類がある。それらの工業炉を通じて、アルミ・ガラス・炭素繊維などの素材から、車やスマートフォンの部品などが作り出されている。
保守サービス事業は、同社の祖業のビジネス。工業炉のメンテナンスを始めたのが同社の出発点であり、そこで得たノウハウをもとに産業システム事業を立ち上げ、成長してきた。全国で500社、1,200を超える設備のメンテナンスを請け負っている。同事業は利益率が高く、景気に左右されにくいのが特徴。
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