―実態良好で成長期待も十分、リベンジ逆襲トレンド点火前夜の銘柄群に瞠目せよ―
桜の季節が近づいてきた。今年は「寒の戻り」の影響で開花が遅れているが、遅かれ早かれ来週には咲き誇る桜を堪能することができそうだ。日本を訪れる外国人観光客にとっても“日本の桜”を見ることは季節限定の魅力的な一大イベントとなる。日本経済の活性化に大いに貢献しているインバウンド消費だが、この恩恵を享受する銘柄群がいま再び開花の時を迎えている。半導体関連の高パフォーマンスが目立つが、実は内需セクターも捨てたものではない。業績回復色を強める インバウンド関連株を投資対象として刮目する場面だ。
●株式市場を取り巻くハト派的な空気感
日米ともに主要株価指数が最高値圏で想定外の強調展開をみせている。中銀ウイークとなった今週は、結果として株式市場にとってフレンドリーな1週間であったといえる。ここにきて世界的なインフレが沈静化の方向をたどり、米国では今週19~20日の日程で行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内3回の利下げ見通しが維持された。このまま行けば6月のFOMCで米連邦準備制度理事会(FRB)は想定通り最初の利下げカードを切る可能性がある。
これに先立って行われた日銀の金融政策決定会合では、マイナス金利解除のほか、ETF買い入れ及びイールドカーブ・コントロール(YCC)の終了を決めたが、これについてはもはや既定路線としてマーケットは織り込んでおり、それよりも声明文に「緩和的金融環境が継続する」と盛り込まれたことが、依然ハト派寄りの印象を与えた。
そうしたなか、21日にはスイス中銀が政策金利を0.25%引き下げ世界の耳目を驚かせた。かつて日本と同様にマイナス金利政策に舵を切っていたスイスだが、その残像が今も残るなか、今回インフレ見通しを下方修正し「G10」通貨国で先陣を切って利下げに動いたことは、株式市場にとって“春風サプライズ”といってもよい出来事であった。
●2月訪日客は前年比9割増で過去最高
こうして投資マインドに心地良い風が吹き抜けるなか、22日の東京株式市場では日経平均株価が朝方寄り付き直後に4万1000円台まで駆け上がる場面があった。前週末15日の終値は3万8707円であったから、わずか1週間の間に3万9000、4万、4万1000と大台を3つ替えたことになる。何と言おうとこの強さは現実であり、投資家としても慎重かつ大胆に今の相場と対峙していく必要がある。これまで相場を牽引してきたのは売買代金上位を占める半導体関連の値がさ株で、これらは今後も波状的な実需買いが続く公算は大きいのだが、今の相場は銀行や不動産、倉庫といった内需株にも物色の矛先が満遍なく向いている。そして、ここから満を持してリターンリバーサルの流れに乗ることが期待されるのが個人消費関連セクター、ずばりインバウンド関連株である。
日本政府観光局が19日に発表した2月の訪日外国人客数は278万8000人と高水準で、新型コロナウイルス流行前の2019年2月との比較で7.1%増、また、昨年2月比では89.0%増と急拡大し、2月単月で過去最高を記録した。なお、今回も含め単月ベースでは9カ月連続で200万人超えとなった。厳密にはアフターコロナというよりは今なおウィズコロナの状態ではあるが、かつてのコロナ禍でもたらされた閉塞感は影も形もない。
物価高の影響はじわじわと消費者マインドをむしばんではいるが、外国人観光客にすれば日本の物価は安く、更に昨今の円安効果もあって日本はリベンジ消費の格好の舞台となっている。もちろん、日本固有の文化や景観、コンテンツ、サービス、安全性といったものに魅了される要素があるからこそ訪日外国人の急増につながっているわけだが、結果としてインバウンド消費は小売やサービス業界にとって、ある意味革命的な収益環境の変化をもたらすに至っている。
●桜の開花がリベンジ相場の号砲となる
そして今、株式市場でインバウンド関連株を注目すべきタイミングが急接近している。1年を通じて最大の書き入れ時が桜の開花シーズンであるからだ。“日本の桜”に対する外国人観光客の興味はおそらく日本人をはるかに上回る。この桜の季節に恩恵を享受できる銘柄ほど、商機を捉えることに長じているという観点も成り立つ。
寒の戻りで開花が遅れているが、これは半導体関連株の上昇一服と重なりちょうどいいタイミングでインバウンド関連にバトンが回ってくる可能性もありそうだ。桜前線の北上は同関連株の本格反騰相場と軌を一にする公算がある。なお、ウェザーニュースによると直近の桜の開花予想は東京、名古屋、福岡が今月24日、大阪は26日、金沢と仙台が31日。更に新潟が4月2日、長野が4月5日、秋田4月9日、青森4月15日と続き、札幌は4月24日という見通しとなっている。
ホテルなどの宿泊施設や飲食業界、移動で使う空運や陸運、更に物販やエンターテインメントなどモノ・コト消費に関わる業界と関連する企業は多岐にわたる。そのなか、今回のトップ特集では足もとの業績好調で中期的にも成長余地の高い銘柄の中から、株価的に出遅れている妙味株を厳選エントリー。大型、中型、小型株を織り交ぜているが、いずれも実態面に株価の評価が追いついていない、リベンジ逆襲トレンドへの点火秒読みの6銘柄を選りすぐった。
●本格反騰期待のインバウンド関連6銘柄
◎エアトリ <6191> [東証P]
エアトリは航空券予約サイトのほか、旅行やホテル関連の商材を取り扱うサイトを運営する。また、ITオフショア開発、投資事業など幅広く手掛けている。主力の旅行事業では国内航空券が好調で収益を牽引し、海外旅行も回復基調が鮮明。24年9月期第1四半期(23年10~12月)は売上高が前年同期比27%増と大幅な伸びを示し、営業利益も増収効果を反映して同69%増の9億8000万円と急拡大した。通期の営業利益見通しは10億円(前期比51%減)を見込んでいるが、大幅な増額修正が濃厚な状況といえる。同社はトップラインの伸びが顕著ななかも、グループ連結取扱高5000億円を目指す中長期成長戦略「エアトリ5000」を最速で達成することを目指し、成長投資にも積極的に取り組んでいる。そのため、利益見通しはあえて保守的な傾向があるが、その分将来への伸びしろが大きい。株価は目先底値圏からの離脱を鮮明としているが、株価水準的には初動であり、早晩2000円台を地相場とする強調展開が見込まれる。
◎インバウンドプラットフォーム <5587> [東証G]
インバPFはWi-Fi端末のレンタル事業を展開するが、多言語対応を強みとし訪日外国人向けで高水準の需要を捉えている。日本国内には無料の公衆無線LAN環境が整備されていないことで、同社の活躍余地は大きい。また、日本に在留する外国人を対象に生活情報サポートや煩わしい取次業務を請け負うライフメディアテック事業でもニーズを確保している。エアトリが同社の66%強の株式を保有する親会社だ。昨年8月に東証グロース市場に新規上場したニューフェースだが、業績はまさに日の出の勢いで急拡大途上にある。営業利益は23年9月期の2.6倍化に続き、24年9月期も前期比34%増の4億5000万円を見込む。今後は外国人向けビジネスの多角化を図る方針で成長戦略にも抜かりがない。今年1月末からナビタイムジャパン(東京都港区)と連携し訪日・在留外国人向けに新幹線チケットの手配サービスをスタートさせている。株価は大底離脱の第一歩を踏み出した段階で、2月中旬の戻り高値水準である2000円大台ラインが最初の目標に。
◎手間いらず <2477> [東証S]
手間いらずはホテルなど宿泊施設を対象とした予約管理システムの提供を主力とし、旅行サイト運営会社との協業なども積極的に進め業容を広げている。コロナ禍から脱しここ訪日外国人が急増傾向をたどるなか、宿泊施設の稼働率が高水準となっていることで同社が手掛ける一元管理アプリケーション「TEMAIRAZU」シリーズも順調に需要を獲得している。24年6月期上期(23年7~12月)業績は営業利益段階で前年同期比10%増の7億2000万円と好調で、通期予想の12億9700万円(前期比3%減)は14億5000万~15億5000万円程度に増額修正される公算大、減益予想から一転2ケタの利益成長を達成し、連続で過去最高を更新する可能性が高い。株価は2月中旬を境に下値切り上げ波動を明示、時価は3000円台前半まで浮上しているが、昨年1月につけた昨年来高値5250円からは依然として2000円近くディスカウントされた水準にあり、ここからの戻り余地は大きいと判断される。
◎寿スピリッツ <2222> [東証P]
寿スピリッツは菓子製造・販売の大手で、数多いグループ会社を通じて北海道をはじめ全国各地の地域限定菓子を販売している。北海道に拠点を置く「ケイシイシイ」や首都圏で洋菓子を展開する「シュクレイ」などが主力で収益押し上げの原動力となっている。アフターコロナに伴う経済活動正常化で国内旅行需要の拡大が顕著となり、訪日外国人の購買ニーズも強力な追い風だ。外国人採用を積極化して外国語での接客にも抜かりなく対応を進めている。23年3月期は売上高が前の期比56%増の501億5500万円、営業利益は同7.1倍の99億5100万円と驚異的な伸びで、一気にピーク利益更新と気を吐いた。続く24年3月期も増収効果を映して営業利益が前期比43%増の141億9200万円と連続で最高を更新する見込み。25年3月期以降も2ケタ成長が続く可能性が高い。株価は昨年11月下旬に2400円台で戻り高値を形成してから、中長期にわたる調整を余儀なくされたが、直近は底入れ反騰色を強めている。2000円近辺は買い場に。
◎マツキヨココカラ&カンパニー <3088> [東証P]
マツキヨココはドラッグストア大手として存在感を示すが、今から約2年半前の21年10月に旧マツモトキヨシホールディングスと旧ココカラファインが経営統合し、持ち株会社として誕生した。経済正常化に伴う人流回復とインバウンド特需を取り込み足もとの業績は絶好調、化粧品需要の拡大や医薬品の伸び、更に物流効率化などに伴うコスト低減効果によって収益力に磨きがかかっている。営業利益は過去最高を大幅に塗り替えた23年3月期に続き、24年3月期も、前期比21%増の755億円予想とピーク利益更新が続く見通し。マンダム <4917> [東証P]とメンズ化粧品の共同開発を進め、花王 <4452> [東証P]とは日焼け止め商品の共同企画に取り組むなど化粧品関連会社との協業にも積極的で、消費者ニーズの掘り起こしに余念がない。株価は2月26日の戻り高値2746円をつけた後に調整局面に移行したが、ここにきてソーサーボトムを形成し戻りトレンドに突入。早晩5日・25日移動平均線のゴールデンクロスを経て上げ足を強める展開が予想される。
◎ツカダ・グローバルホールディング <2418> [東証S]
欧米邸宅風施設を使った婚礼ビジネスを直営展開しており、コロナ禍を経てリオープン環境での需要拡大が続いているほか、傾注するホテル事業がインバウンド特需を享受し収益押し上げに貢献している。ホテル事業は世界60カ国以上に広がるインターコンチネンタルホテルズ&リゾーツから受け継いだハイクオリティーな接客で好評を博し、稼働率と単価いずれも上昇基調にある。現在、東京都内に3カ所、名古屋に1カ所の計4つの高級ホテルを運営している。業績は23年12月期に営業利益が前の期比80%増の53億4100万円と大幅な伸びを達成しており、最終利益段階では補償金特益なども加わり過去最高を更新した。24年12月期営業利益はインバウンド効果による一段の単価上昇が見込まれることで60億300万円(前期比12%増)予想と2ケタ成長を維持する見通しだ。株価は400円台と値ごろ感があるほか、PER、PBRいずれも割安感が強く狙い目となる。テクニカル的にも400円台前半で売り物がこなれており上放れの機が近い。
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