6. グループ力強化
エラン<6099>はグループ力の強化も推進している。2019年4月には、個人請求・カスタマーサポート部門を分社化し、エランサービスが業務開始した。さらなる顧客満足度向上、生産性向上、付加価値向上を推進するとともに、自立に向けて他社の入院セット請求業務の請負も行い事業拡大を目指している。エランサービスにおける他社からの請求業務請負は2022年12月期末時点で入院セット運営会社5社・30施設(前期末時点は4社・22施設)に拡大した。
物流業務については、従来は営業の生産性向上に向けて外注化を推進してきたが、人件費上昇に伴い外注費が上昇していることに加えて、災害時の配送や欠品リスク対応のため、一部を自社運営する方針に切り替えた。2020年12月期に横浜物流センター(神奈川県横浜市・約245坪)を開設し、横浜近隣23施設への消耗品・紙オムツ等の配送・在庫管理業務を開始した。2022年12月期には神奈川物流センター(神奈川県相模原市・約452坪)に移転・拡大するとともに、長野県松本市に新たな物流拠点を設置し、2022年12月期末時点の自社配送施設数は110施設(前期末時点は73施設)に拡大した。
海外展開については、インドのリネンサプライ市場への進出等を視野に入れて、2018年11月にインドの医療関連商品卸会社BIHSに出資、2021年2月にインドの病院向け洗濯会社QSWに出資(さらに追加投資で出資比率が25%程度に上昇する予定)した。当面はコロナ禍で活動が制限されるが、BIHS及びQSWへの投資を通じて、インドの医療市場流通構造やリネンサプライ市場の成長可能性などの調査を継続し、インドにおけるCSセットの実行可能性やヘルスケアビジネスへの参入など、新たなビジネスの創出を目指す。
7. リスク要因・収益特性と対策
収益に与えるリスク要因としては競合リスクがある。入院セットサービスの認知度向上に伴って参入業者が増加している。ただし大手企業の参入はなく、参入の多くは地場のリネンサプライ業者であり、競合リスクは小さいと言えるだろう。
入院セットビジネスは参入障壁が低いように見られがちだが、採算ラインの見極め、行政指導に適合したサービス運営、看護・介護現場への説明・運用及び請求・回収業務などの面において、ノウハウの蓄積は容易ではなく、実は想定以上に参入障壁が高いビジネスである。同社のように独自ノウハウを蓄積してビジネスモデルを構築し、全国展開している競合先は少ない。きめ細かい営業努力、充実した商品ラインナップ、より付加価値の高い新サービス・新事業への展開などにより同社の競争優位性は揺るがないだろう。さらにエランサービスの他社からの請求業務請負が拡大することで、実質的な市場シェアがさらに上昇する可能性もあると弊社は見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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