同社の強みは、第一に鉛・銀製錬における国内随一のリサイクル体制にある。使用済み鉛バッテリーを再資源化し、鉛鉱石の調達と合わせて鉛製品安定生産と、鉛鉱石中に含まれる金、銀、ビスマス、アンチモンも生産販売を実現している。第二に、環境リサイクル事業における酸化亜鉛製造で高収益率を確保している点である。酸化亜鉛は需要が底堅い上、産業廃棄物を引き受けての精製となるため原価がマイナスで収益性が高い。今後はLIB(リチウムイオン電池)リサイクルを新規事業として立ち上げる計画も進む。第三に、電子部材・機能材料の分野で電解鉄など高付加価値製品を展開し、航空機や再生エネルギー関連市場に対応できることが挙げられる。これらは基盤・成長事業として、長期的な需要拡大と収益改善をもたらす中核領域である。
2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上高26,874百万円(前年同期比23%減)、営業損失853百万円(前年同期は3,538百万円の黒字)となり減収減益であった。資源事業撤退や亜鉛製錬再編による売上剥落に加え、鉛価格下落や円高による在庫評価損などが響いた。一方、希少金属ビスマスや金の価格上昇が続いており、収益を一定程度補った。通期予想は売上高115,700百万円(前期比8.4%減)、営業利益4,900百万円(同12.9%減)で据え置かれている。これは主力の鉛製錬の設備トラブルや酸化亜鉛精製設備での火災発生などの今後の影響を考慮したものであるが、一方で決算説明資料では、為替・市況・一過性要因を除いた正常収益EBITDAを11億円と試算し、Q2以降は電解鉄の増産効果や再生施策の浸透により改善が見込まれるとしている。
今後の成長見通しとしては、事業再生計画に基づき、外部からの75億円の出資を活用して基盤・成長事業を軸に収益構造を強化する方針が明確だ。鉛・銀製錬はリサイクル比率を高めつつ安定供給を維持し、環境リサイクルでは酸化亜鉛の増産・低コスト化と新規のLIBリサイクルを開始する。電子部材・機能材料は他社との協業を通じ市場拡大を図り、電解鉄の製品ラインを拡充する。さらに、亜鉛製錬については、環境ダストリサイクル熔融炉設備導入を計画しており、リサイクル原料販売を中心とした金属リサイクル事業への展開を目指す戦略を掲げている。スポンサー企業からの出資や業務提携により財務・販売・物流面での支援を得て再生計画の実行力を高めている点や、生産工程のDXによる抜本的な生産効率の改善を計画していることも成長基盤を裏付ける。
株主還元については、現時点で年間配当は無配予想であり、当面は再生投資と財務基盤の安定化を優先する方針である。ただし、過去には安定配当を実施しており、将来的には成長投資と株主還元の両立を掲げている。今後の5年間は収益回復と財務健全化を着実に進行していき、収益性が高まったタイミングで積極的な株主還元を開始していく計画である。
総じて、東邦亜鉛は不採算事業からの撤退を断行し、鉛・銀製錬やリサイクル、電子部材・機能材料といった基盤・成長事業に集中することで再生を進めている。今後は希少金属や環境リサイクルの成長余地を取り込みながら、持続的収益モデルを確立できるかに注目したい。
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