今週の新興市場は反発。急ピッチで上昇していた米長期金利の動きに落ち着きが見られたことで投資家心理が改善した。また、マザーズ指数は先週末にかけて大きく下落し、200日移動平均線を大幅に下放れていたこともあり、テクニカル的にも自律反発狙いの買い戻しが入りやすかったようだ。なお、今週の騰落率は、日経平均が+0.55%だったのに対し、マザーズ指数は+4.29%、東証グロース市場指数は+4.23%だった。
個別では、週末の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を前に全体的に手掛かり材料難となるなか、低位株への物色が強まり、アマナ<2402>、メドレックス<4586>、アクアライン<6173>、和心<9271>などが特段の材料もないなか大きく上昇した。Globee<5575>はベンチャーキャピタルによる保有株全売却で需給懸念が後退したことが好感された。決算を機に上昇が続いているGNI<2160>は週間売買代金トップで株価もさらに上伸した。M&A総研HD<9552>は東証プライムへの市場変更が承認され一時急伸も地合い悪化もあって伸び悩んだ。直近の新規株式公開(IPO)銘柄であるGENDA<9166>は堅調な値動きで上場来高値を更新している。
一方、決算を材料に急伸していたjig.jp<5244>は初の配当実施を発表したが、投資家層拡大と流動性向上を目的とした株式売出しに伴う株式価値の希薄化懸念などが嫌気され、大きく値を崩した。
■重要指標を控え様子見か、インバウンド関連への物色波及に期待
来週の新興市場はもみ合いか。マザーズ指数は依然として75日線や200日線といった主要な移動平均線の下方に位置しており、戻りを試す余地がありそうだ。しかし、25日線と75日線によるデッドクロスが既に示現していることに加え、今週末は下向きの25日線が上値抵抗線として作用する形で週後半に伸び悩んだ。テクニカル的にはダウントレンドの初期段階にあり、株価がこれに抗って騰勢を強めていくのはハードルが高そうだ。
また、来週は週末にかけて米個人消費支出(PCE)コアデフレーターや米雇用統計、米供給管理協会(ISM)の製造業景況指数など重要指標が発表される。足元で上昇が一服している米10年債利回りは依然として2007年以来の高値圏にあり、先高観はくすぶっている。指標の結果次第では米長期金利が一段と上昇し、再び株式市場の波乱要因になる可能性も残っており、金利に敏感な新興株を積極的に買い向かえる状況とは言いづらいだろう。
来週は30日にインバウンドプラットフォーム<5587>が東証グロース市場に新規に上場する。国内・海外用のWi-Fiレンタル、Webメディア運営、在留外国人向け生活関連サービスなど、在日外国人や外国人観光客の満足度向上を目的とした事業を展開している。インバウンド関連銘柄は株式市場でも数少ない堅調なチャートを維持しているテーマ株であるため、今回は久々のIPOということもあり注目度はそれなりに高そうだ。ほか、9月中旬以降のIPOが続々と発表されているため、要チェックだ。
個別ではインバウンドプラットフォームのIPOに絡んで、ベストワンドットコム<6577>、ハナツアーJ<6561>、アドベンチャー<6030>、スカイマーク<9204>などに物色が波及する可能性がありそうだ。
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