3. アナリストの視点
同社グループは、これまで「目利き力と市場対応力」をコアコンピタンスとして、海外先端技術の日本市場への導入・普及に豊富な実績を持っている。ただし業績推移を見ると、売上面はM&Aも寄与して拡大基調であるものの、利益面は収益認識基準の適用、サブスク型への転換期、特需の反動、先行投資段階の子会社の新規連結、為替の円安、一時的費用の発生などの影響を受けたことを考慮しても、持続的な利益成長・利益率向上という点で物足りず、過去の強み・実績が現在の業績に表れていないという印象が否めない。2024年3月期は円安影響を大幅増収効果で吸収する見込みだが、投資家の関心が利益と配当の成長期待にあることを勘案すれば、持続的な利益成長・利益率向上の実現が同社グループの課題と考えられる。
同社グループは中期経営計画で、M&A・アライアンスも活用した新技術・新規領域への展開加速など、事業ポートフォリオの拡充やストック型ビジネスモデルへの転換という方向性とともに、事業展開加速に向けた人的資本投資強化による従業員エンゲージメント向上やM&A戦略の基準明確化など意欲的な戦略を打ち出した。この点については、中長期的に売上高100億円を目指す戦略として一定の評価ができるだろうと弊社では考えている。さらに加えれば、DXの進展とともにセキュリティニーズが高まるなど同社グループを取り巻く事業環境は良好であるだけに、単なる売上拡大戦略にとどまらず、持続的な利益成長・利益率向上への取り組み施策(為替変動リスク低減策としての価格戦略や為替変動影響を受けにくいシステム構築などITサービス分野の拡大戦略、サブスク型や保守サービス収入などストック収益の拡大戦略、売上ミックス改善に向けた部門別戦略など)や、新たな成長ドライバーとなる製品・サービスなどがより具体的に示されれば、同社グループの成長シナリオに対する投資家の関心度も高まってくるだろうと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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