で前場の取引を終えている。
6日の米株式市場でダウ平均は10.42ドル高(+0.03%)と小反発。来週に連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて様子見姿勢が広がりやすいなか、終日動意に乏しい展開だった。ヘルスケアなどのディフェンシブ銘柄を中心に売りが出た一方、景気敏感株やこれまで売られていた地銀株に買いが入り、相場を支えた。ナスダック総合指数は+0.35%と反発。米株高を引き継いで日経平均は112円高からスタート。序盤は買いが先行し一時200円超上昇したが、その後早い段階で急失速。幅広い銘柄に売りが出るなか、為替の円高とともに値を崩し、一時は31992.58円(514.2円安)まで下落した。突っ込み警戒感からその後は下げ渋ったが、前引けにかけては再び弱含む動きとなった。
個別では、台湾積体電路製造(TSMC)の今期設備投資が想定レンジ下限近くになる見込みと伝わり、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>、ソシオネクスト<6526>など半導体株が軒並み下落。キーエンス<6861>、ダイキン<6367>、信越化<4063>の値がさ株も大幅安。村田製<6981>、新光電工<6967>、ローム<6963>
のハイテクも全般軟調。
一方、川崎重<7012>、IHI<7013>が大幅高。岩谷産業<8088>は水素関連として物色が続くなか、証券会社の目標株価引き上げも手伝い急伸。トクヤマ<4043>は水電解装置に関する一部報道が材料視された。JNS<3627>、CIJ<4826>、ユーザーローカル<3984>、RPA<6572>など人工知能(AI)関連が賑わっており、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。TOYO TIRE<5105>、グリムス<3150>はレーティング格上げを受けて大きく上昇。クミアイ化学<4996>は業績予想の上方修正で買われた。
セクターでは機械、電気機器、精密機器が下落率上位に並んだ一方、ゴム製品、石油・石炭製品、空運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の54%、対して値上がり銘柄は41%となっている。
本日の日経平均は32700円まで上値を伸ばした後に一時32000円を割り込むなど700円超もの値幅をみせ、乱高下している。今週末は株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)のため、需給主導で荒い展開になりやすい。また、日経平均は5月以降に3000円超から4000円近くも上昇してきただけに、急ピッチでの上昇の反動も出やすいだろう。
ただ、この値幅の大きさについては、日本株を巡る構造的な変化に着目して買ってきている投資家だけでなく、テクニカル要因だけで持ち高を大きく積み上げている向きもそれなりに多いという証左だろう。メジャーSQを通過してからも、東証によるPBR改善要請や賃上げを通じた日本のデフレ脱却など、構造的な改革機運に対する期待は続くだろうが、ここまでの指数の上昇ピッチの速さは、そうしたファンダメンタルズ的な見方だけに基づかないということを改めて認識しておきたい。
世界銀行は6日に最新の世界経済見通しを発表。米国などの主要国の経済が想定よりも底堅いと判断し、2023年の実質GDP(国内総生産)成長率予測を2.1%とし、今年1月公表の前回予測(1.7%)から上方修正した。一方、2024年の成長率見通しは2.4%と前回予測(2.7%)から下方修正している。主要中央銀行による政策金利の上昇が予想されていたよりも大きく、金融引き締めの影響が今後時間差を伴って実体経済に表れると想定している。
株式市場は2024年には主要中銀による利下げが期待できるとの見方から、今年後半からは、来年からの回復期待先取りで株価は上昇していくと考えている向きが多いようだ。しかし、世銀が主張するように、利上げの累積効果がシリコンバレー銀行の破綻のように、今後再びじわりと発現してくる可能性はあり、この点、株式市場はやや楽観視し過ぎかもしれない。
また、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の会長は6日、2023年の同社の設備投資計画について、想定レンジの下限により近くなるとの見通しを示した。一方、同社は依然として今年後半からの市況改善を予想している。加えて、世界半導体市場統計(WSTS)は6日、2023年の半導体市場が前年比10.3%減になるとの見通しを発表し、従来予想(4.1%減)から下方修正した。スマートフォンやパソコンなど民生品向けの需要が低迷していることが背景で、WSTSは世界的なインフレなどで個人消費は振るわず、下押し要因が当面続くと見ているもよう。ただ一方で、WSTSも24年の市場見通しについては23年比11.8%増となり、22年実績を上回ると予想している。
しかし、この半導体に関しても個人的には市場はやや楽観的すぎるのではないかと思っている。日米の半導体企業の株価をみると、昨年はほぼ全ての銘柄が大幅に株価調整しており、日柄的にも値幅的にもたしかに一旦は悪材料を織り込み切ったと思われる。しかし、最終需要の底入れ感がほとんど確認されていないにもかかわらず、大半の半導体企業の株価は昨年秋頃には底入れし、そこから今年は大幅に回復、生成AI
(人工知能)向け需要という新たなカタリストも加わり、足元では下げをほぼ帳消し、すでに上場来高値を更新している企業などもある。
ただ、上述したように、足元で半導体市況見通しの下方修正はまだ続いている。また、例えば東京エレクトロン<8035>は、前期は計画の下方修正が2回もあった。加えて、アドバンテスト<6857>は直近の決算まで2四半期連続で半導体市況の見通し前提を下方修正している。これだけ市況見通しに関する下方修正が多方面から相次いでいると、長らく言われいている今年後半からの市況回復という見立ても後ずれする可能性が十分にありそうだ。
こうした中、すでに多くの関連株が上場来高値を更新していたり、昨年の下げを取り戻し切っているのは正直どうなのかという印象を受ける。もちろん、株価は常に先を見据えて動くものであり、一般的に半年先を見据えて動くといわれる。しかし、いまの関連株の株価水準は今後訪れる市況回復を先走って大分織り込んでしまったのではないかという気がしてならない。生成AI需要という新たな材料が加わったことでアップサイドが出てきたともいえるが、やや期待先行の印象も拭えない。
本日も日経平均が後場に力強い回復を見せれば、日本株の強気モードはメジャーSQ後も続きそうだが、ここからは楽観の揺り戻しなど総じて慎重な姿勢で臨みたい。
(仲村幸浩)
<AK>
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