今週の新興市場は続伸。米5雇用統計は雇用者数の伸びが予想を大幅に上回った一方、平均時給の伸びは鈍化し、失業率が予想以上に上昇したことで、金融引き締め長期化に対する懸念が緩和、週明けから新興株は大幅高で始まった。5月ISM非製造業景気指数の支払い価格の低下を受けたインフレ沈静化期待も寄与し、その後も堅調に推移した。一方、株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)を前に地合いが需給主導で崩れたことで週後半には急落する場面もあった。ただ、SQ通過によるあく抜け感や、米新規失業保険申請件数の予想を上回る増加で金融引き締めに対する懸念が後退すると、週末は持ち直した。なお、今週の騰落率は、日経平均が+2.35%だったのに対し、マザーズ指数は+1.97%、東証グロース市場指数は+2.17%だった。
個別では、時価総額上位銘柄はまちまちで、週間でカバー<5253>が+12%、FPパートナー<7388>が+14%、弁護士ドットコム<6027>が+14%、MacbeeP<7095>が+8%、サンウェルズ<9229>が+7%となった一方、ビジョナル<4194>は-2%、フリー<4478>は-2%、ispace<9348>は-7%、BuySell Technologies<7685>は-6%だった。週間上昇率ランキングでは、自動車機器大手ボッシュとの資本業務提携を発表したフィーチャ<4052>に買いが殺到し、+92%と急騰した。米企業とのパートナーシップ締結で前週末に人気化したアクリート<4395>も買いが続き、74%と急伸。ティムス<4891>は、エーザイ<4523>と米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病新薬が米食品医薬品局(FDA)の完全承認を得る可能性が高いとの報道から思惑が向かい、+55%となった。
■IPO2銘柄のほか、好業績かつチャート良化の銘柄に注目
来週の新興市場は上値の重い展開か。米連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中央銀行(ECB)定例理事会、日銀金融政策決定会合とイベントが目白押しなため、週後半まで手掛けづらさが意識されやすい。
今週は週前半を中心に出遅れ感の強い中小型株や新興株を物色する機運が一時強まったが、週末にかけては再びハイテクや景気敏感など時価総額の大きい主力処が優勢の展開となった。今週末の米株式市場でも主要株価指数が上昇するなか、中小型株から構成されるラッセル2000だけが続落していた。
加えて、マザーズ指数は7日に795ptと2月9日の794pt以来の高値を付けてからは長い上ヒゲを残して失速する形となっており、チャート形状からしても目先は75日線、200日線が位置する水準まで調整する可能性が高そうだ。
また、来週から新規株式公開(IPO)ラッシュの序盤戦がはじまる。徐々にセカンダリー投資に備えた資金確保の動きも出てくると考えられ、需給面ではやや重荷となりそうだ。ただ、全体的には吸収金額の大きい銘柄は限られる。また、主要中銀のイベントを控え、これまでの上昇ペースの速かった主力大型株を手掛けづらいこともあり、幕間繋ぎ的な物色で出遅れ感の強い新興株に、IPOを契機とした物色が広がることを期待したいところだ。
来週のIPOは人工知能(AI)を活用した英語学習プラットフォームを手掛けるGlobee<5575>、AI技術に長け、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)などを支援するABEJA<5574>の2社だ。ABEJAは吸収金額がやや大きいこととテーマ性から特に人気が高いため、来週については資金確保の動きから既存新興株は上値が重くなりやすいことに注意したい。
ほか、個別では、市場規模の大きさと市場内でのポジショニングの優位性などから中長期で期待できるM&A総研HD<9552>、eWeLL<5038>などに注目。どちらも足元でチャート形状が良化してきていることも好印象だ。
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