SBテクノロジー、子会社株式譲渡で通期純利益は前期比2倍超の82億円に 公共拡大に向けデジタル庁案件受注
2024年3月期第1四半期決算説明
阿多親市氏:みなさま、こんにちは。SBテクノロジー代表取締役の阿多でございます。本日はお忙しい中、我々の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。それでは、業績の概要および中期計画の進捗についてご説明したいと思います。
はじめに、FTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄に初選定されたことを本日プレスリリースしました。2022年にプライム市場に公開して、すぐにJapan Sector Relative IndexとしてFTSEに認めていただきました。1年間このスコアを上げることに努力した結果、2023年6月にESGスコア3.3以上で対象銘柄310銘柄のFTSE Blossom Japan Indexに選定されました。
決算サマリ
業績の概況です。今期の第1四半期は、公共・エンタープライズ分野における増収で、第1四半期としては過去最高の売上高を記録しました。一方で、通信での投資抑制影響や採用強化などにより、営業利益は減少しました。
受注高は、前期に受注した自治体情報セキュリティクラウドの影響等により減少したものの、地図関連において非常に戦略的な横展開案件の実証フェーズを受注できました。
今期の業績予測について、子会社のフォントワークス社の株式譲渡に伴う特別利益計上により、当期純利益を期初予想に対して42.5億円増加の82億円へ上方修正することとなりました。
また、売上高は10億円減少し680億円に、営業利益は5億円減少し59億円に修正しています。
連結PL(通期累計)
スライドに記載のとおり営業利益、経常利益は当初計画どおり推移しています。
マーケット別売上・売上総利益
マーケット別の売上高です。通信領域の売上高は、2022年の50億円から30パーセント弱減少し、36億円となりました。売上総利益は、7.9億円から10数パーセント下がって6.6億円となっています。
エンタープライズ領域の売上高は2022年の70億円から78億円、売上総利益は17.6億円から18.8億円になりました。売上高は伸びましたが、注力顧客に対するライセンス販売があったため、利益率が若干押し下げられています。
公共領域の売上高は、2022年の23億円から50パーセント近く伸びて34億円となっています。売上総利益については、2022年までは自治体案件など大きな引き当てを必要としたため非常に小さかったですが、2023年はいろいろな案件が運用フェーズに入ってきています。それによりある程度の利益が出ており、売上総利益は4.6億円となりました。
個人領域については、ノートンライフロック社との契約変更があったものの、概ね期初予想どおりに進捗しています。
営業利益の増減要因
営業利益のブリッジです。増収効果により0.9億円の押し上げがありました。そして、収益性の改善として、特に公共の部分が先ほどお話ししたような理由で7.6ポイント上がりました。通信においては、地道な努力によって2.3ポイント上がっています。
販管費の増加については、同じ時期で比べると人員が85名増加したことと、5月の連休以降、活動が非常に活発になってきたため費用が増加したことから3.1億円の減少となりました。結果として営業利益は10.5億円となっています。
【単体】受注高/受注残高(個人向け除く)
受注高の状況です。通信の領域は、2022年度の48億円から13億円減少して35億円となりました。これは、このエリアにおける投資抑制があることを表しています。
エンタープライズ領域は、2022年度の54億円から50億円となりました。先ほどライセンスの販売に触れましたが、全体の基調としては利益率の低いライセンスや機器の販売が減ってきており、その分の受注高が若干減っています。
一番大きく変化があったのは公共領域です。本来、2021年3月末に受注すべき案件が2022年の第1四半期にずれました。通常、第1四半期にこれほどの受注を受けることはないのですが、2022年は大きな受注が入っていたため異常値となりました。そのため、2022年と比べて2023年の19億円は決して小さくなく、戦略的なものについては十分受注ができています。
全体の受注残高としては、前年同期末に296億円だったものが、現在333億円となっています。そのうち約6割が今期中に売上を計上する見込みで、その中の50パーセントが公共領域になります。
FY23通期業績予測の修正
通期業績予想の修正はすでにアナウンスしていますが、売上高についてフォントワークス社の半期分の売上高10億円を機械的に減らし、通期予想を690億円から680億円に修正しています。
営業利益についてもフォントワークス社の下期に予定していた営業利益5億円を機械的に引いて、64億円を59億円に修正しています。経常利益も同様です。親会社株主に帰属する当期純利益は、フォントワークス社の株式譲渡により出る42.5億円の特別利益を計上し、39.5億円から82億円に修正しています。
第4次中期経営計画への影響
中期経営計画の進捗です。中期経営計画は2022年度から始まり、現在1年3ヶ月が経過しています。もともと営業利益は80億円を目標に掲げていましたが、先ほどの理由により71億円に変更しています。営業利益率は9パーセント台、クラウド・セキュリティ&サービスの売上高は500億円超という目標に変更はありません。
通信向けビジネス
通信向けビジネスについてご説明します。依然として投資の抑制がかかっていますが、その中でもコスト低減やケイパビリティの拡充等により、売上総利益率は18パーセントとなっています。前期の第1四半期と比べると15.7パーセントから18.0パーセントと大きく伸びています。
続いて、第2四半期以降の考え方についてです。従来オフショアを進めていましたが、コロナ禍においてなかなか海外の状況をコントロールすることが叶わず、現地でのパートナーに対する指導が難しい状況でした。
こういった状況も第1四半期より改善してきたため、第2四半期から徐々に本格的に立ち上げ、第3四半期はより拡大していくと考えています。これによりエンジニアリソースを拡大し、一層の効率化を図れると思っています。こちらについては、従来から取り組んでいたアプリケーション開発のみならず、AIなどの先端領域でも先行活用することで、オフショア展開に向けたより積極的な取り組みが進んでいくとご理解ください。
エンタープライズ向けビジネス
エンタープライズ向けのビジネスについてです。マイクロソフト関連では、日本マイクロソフトが戦略的にもっとも重視しているソリューションパートナー認定制度の6分野すべてにおいてパートナー認定をいただいており、これは現在国内で当社のみと聞いています。
スライド右側はセキュリティの分野です。セキュリティ分野における市場調査レポートで、ITRの「SIEM運用分析サービス/マネージドXDRサービス」市場において1位であると報告されました。さらに、デロイトトーマツミック経済研究所の「SIEM運用分析サービス」市場でも1位であると発表されました。
エンタープライズ向けビジネス
エンタープライズ向けの分野で今もっとも注目度が高いのは、AIの活用です。「ChatGPT」等で知られていますが、実際のビジネスにおけるAIの活用にはそれなりのコツがあり、また、AIとほかのシステムも一緒に連携して使っていく必要があります。
その中で我々がご提案している基本的な内容をご紹介します。従業員の方が「ChatGPT」や「Azure OpenAI Service」を活用する場合、「Teams」やWebベースのインターフェースに質問を書くと、汎用データから答えが導き出されます。
一方で、企業や組織が利用する際には、今までの経験値が入っている社内のデータベースも参考データの中に入れて提案や判定をしてもらわないと、なかなか実業務の役には立ちません。そのような中で、「Azure OpenAI Service」は、新しく入れた独自データを活用でき、かつそれが外に漏れることはない環境であると、2023年4月頃に話題になりました。
これをより使っていくためには、安全にクローズドの「Azure OpenAI Service」の中にデータを入れて、AIの答えを引き出していくことが大事です。そのために、現在当社はオリジナルのAI活用エンジンの開発を行っています。今はコードネームですが、サービスとして発表できる時になれば名前をつけたいと思っています。
具体的には「SharePoint」や「Teams」の会議録画データ、ほかの監視システムからの障害データ等を全部ふまえた状態で、質問に対してどのデータを「Azure OpenAI Service」に取り込めばよいかを判断できるエンジンです。
スライド右側のように、現在PoC(概念実証)を進めているところです。例えば建設業のお客さまにおいては、施工マニュアルや社内規定・ルールと合致しているかの確認や、新技術データをどのように活用するかというアイデア出しなどについても活用していきます。
医薬品メーカーでは、薬品マニュアルの確認・参照、学会データに基づいた回答に加え、グローバル企業であるため英語での入出力も可能な状態で試そうと動いています。
製造業においては、製造ラインにおける障害情報のサマリーレポートや類似障害の検索、「Teams」の会議動画をデータソースとした音声翻訳と要約等を検討しています。
おそらく第2四半期から第3四半期にかけてより本格的なフェーズに移っていき、実際のビジネスの拡大は来期になる可能性が高いです。今期中にいろいろなかたちで試しながら、来年以降にAIと共存していく世の中ができていくと見ています。今後はビジネスにおいて、単純にクラウドに投げれば返事が返ってくるのではなく、自社のデータを使ってAIに考えさせることができるような世の中になってくると思います。
公共向けビジネス
公共向けビジネスです。こちらは冒頭で触れたように、新しい戦略的な分野です。こちらにおいて、デジタル庁の不動産登記ベース・レジストリの実証案件を獲得することができました。
我々は9年かけて、農林水産省における電子申請と、「eMAFF地図」という農地の地図の電子化プロジェクトに関わってきました。9年前には航空写真しかない状態でしたが、衛星による位置データや写真がどんどん活用されてくる中で、当社は農林水産省と一緒にデータ活用方法を編み出してきました。それを他省庁でも活用していく考えです。
そのためには、デジタル庁の不動産登記ベース・レジストリにおいて、農地のデータ化で行ってきたことを本当に不動産データに使えるのか実証していく必要があります。この実証案件の入札に参加したところ、技術点が重視される中で最高得点にて受注することができました。
今後、この不動産登記ベース・レジストリのデータが整備されていくとどのような世界になっていくのか、とても楽しみに感じています。この案件で、地図に関する事業をほかの省庁も含めてどんどん横展開していきたいと思っています。最終的には自治体の管理下も対象に展開を進めていく方針です。
第4次中期経営計画 / FY24 経営指標
あらためて第4次中期経営計画です。営業利益の目標値は、フォントワークス社の譲渡に伴い9億円を差し引き、80億円から71億円としました。営業利益率は9パーセント台、クラウド・セキュリティ&サービスの売上高は500億円超という目標で、今期・来期と進めていきたいと思います。
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