(3) 事業セグメント別見通し
a)ファインケミカル事業
2023年3月期におけるファインケミカル事業の売上高は13,850百万円(年平均成長率4.6%)、営業利益は1,800百万円(同11.0%)を目標に設定し、今後の収益けん引役と位置付けている。
国内の一般消費者向けカー用品では、顧客先ごとに適した既販車メンテナンスサービスの構築と、DIYニーズの変化を見据えた製品・サービスの開発に取り組んでいくほか、カーシェアリング市場の普及拡大に対応して、レンタカー、カーシェアリング事業者、商用車向けのメンテナンス商品の提案を推進していく。海外市場においては、欧州、ロシア、南米、南アジア、西アジアを重点販売地域として位置づけ、場合によっては現地生産化も検討していく。
また、業務用製品では主力コーティングブランドである「G’ZOX」のリブランディングに取り組み、売上拡大を目指すほか、ステンレスの汚れ防止対策として、ビルメンテナンスや建設業界向けに、また、表面改質技術の印刷及び接着業界向けへの展開も進めていく。それぞれ協力企業との協業体制構築と需要の確認はできていることから、今後の立ち上がりが期待される。
TPMS事業では販売代理店網構築による運輸・運送業界向けの拡大に加えて、乗用車向けアフターマーケット用製品並びに中小型トラック領域での拡販を進めていく。自動車が「保有」から「利用する」時代に変わりつつあるなかで、レンタカーやカーシェアリング事業者が利用者の安全性を担保するうえでTPMSの搭載を進める可能性もあるだけに、将来的に大きく育つ可能性のある事業として弊社では注目している。
電子機器・ソフトウェア開発事業では、携帯電話の3Gネットワークの停波(2026年)に伴う4G、5G以降による監視機器等の切り替え需要を確実に取り込んでいくほか、無線通信と各種センサーを用いた遠隔監視システムの技術・ノウハウを生かしてコンシューマ製品の開発も手掛けていく考えだ。
b)ポーラスマテリアル事業
2023年3月期におけるポーラスマテリアル事業の売上高は6,050百万円(年平均成長率2.1%)、営業利益は640百万円(同4.4%減)と今回の中期経営計画では唯一、減益を見込んでいる。これは将来の成長を見据えた人的投資、研究投資などの先行投資を継続していくためだ。また、一部の工場棟の老朽化が進んでいるため、新工場棟の建設についても検討を開始している。実際の工場棟建設については2024年3月期以降となる見通しだ。
売上面を見ると、産業資材に関しては半導体やHDD業界向けでのシェア拡大やフラットパネルディスプレイ、プリント基板業界向けでの拡販を進めていくほか、医療用途や環境用途、プリンタ用途など新市場の開拓に取り組んでいく。特に、医療用途では現在、インフルエンザ検査用キットの吸水材を主に提供しているが、中期経営計画期間内に一般医療機器(Class 1)の製造認可を取得し、機器の製造まで手掛けていくことを目指している。一方、生活資材に関しては、OEM展開やEC販売の強化に加えて、スポーツ用途など新市場の開拓を進めていく方針だ。
c)サービス・不動産関連事業
2023年3月期のサービス・不動産関連事業の売上高は7,200百万円(年平均成長率2.7%)、営業利益は410百万円(同4.1%)を目指す。
自動車整備・鈑金事業では、美装関連事業に注力していくと同時に、自動車のハイテク化に伴って需要が増えている特定整備(エーミング対応)※に取り組んでいく。また、自動車教習所では運転免許試験場以外の各種研修(高齢者ドライバー講習等)の拡大と新サービスの開発などを進めていく。新サービスとしては2022年度から免許制度の導入が決定している。ドローンなどが候補として考えられる。ドローンについては今後、物流など産業用途での利用拡大が見込まれており、免許取得者も一定数規模が見込めるためだ。
※ASV(先進安全自動車)が搭載している衝突防止システムや車線維持支援システムなど各種安全システムが正しく動作するか検査し、不具合がある場合は調整する業務。エーミングには専用のツールや電波測定などをする作業環境が必要となる。
生活用品企画販売事業については、ECビジネスのさらなる拡大を目指して、自社ECサイトの再構築とオリジナル商品の開発を強化していく。自社ECサイトではこれまでもコンシューマ向けカー用品で数量の出ない品種(補修用塗料等)などの販売を行ってきたが、今後はO2Oの取り組みも強化し、取引先小売店との共生を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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