今週の新興市場は続落。欧米での金融システム不安が後退し、米長期金利が上昇する中、新規株式公開(IPO)ラッシュに伴う換金売りなども加わり、新興市場は週前半に大きく下落。週末にかけては米長期金利の上昇一服で買い戻しが優勢となったが、週末の米2月個人消費支出(PCE)コアデフレーターの発表を前にした様子見ムードが強まり、週前半の下落を埋め切れなかった。なお、週間の騰落率は、日経平均が+2.40%であったのに対して、マザーズ指数は-0.70%、東証グロース市場指数は-1.19%だった。
時価総額上位銘柄は全般冴えず、週間でビジョナル<4194>が-5.5%、フリー<4478>が-8.3%、ANYCOLOR<5032>が-11.5%、JTOWER<4485>が-4.5%、サンウェルズ<9229>が-4.5%、ステムリム<4599>が-6.8%、FPパートナー<7388>が-6.4%となった。ChatGPT関連の報道を契機に人工知能(AI)関連の一角が賑わい、週間騰落率ランキングではシルバーエッグ・テクノロジー<3961>が+40.5%と急伸。フッ素フィルムを用いたアンテナ一体型高周波伝送路を世界で初めて開発したとのリリースが手掛かり材料となったセレンディップHD<7318>も+33.0%となった。週間売買代金ランキングではハルメクHD<7119>、アイビス<9343>など直近IPO銘柄が上位にランクインした。
■個人のセンチメント良好、トレンド上向き・業績良好な銘柄に着目
来週の新興市場は堅調か。今週末に発表された米2月PCEコアデフレーターは前年比+4.6%と市場予想(+4.7%)及び前月(+4.7%)から鈍化し、モメンタムを示す前月比でも+0.3%と市場予想(+0.4%)を下回り、前月(+0.6%)から鈍化した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止が近いとの期待が一段と高まり、米長期金利が低下する中、今週末の米株式市場はハイテク株を中心に大きく上昇した。今週の新興株は週前半の米長期金利の上昇と米PCEコアデフレーター前の様子見ムードから全体相場に比して出遅れ感が強かったため、来週は遅れを取り戻す形で買いが先行しそうだ。
今週まで続いていたIPOラッシュも来週は小休止の場面で、来週予定されているIPOは1社のみ。翌週以降に再びIPOの数が増えることや来週もブックビルディングは多数予定されいるため、換金売り圧力が完全になくなるわけではないが、セカンダリー投資を前提とした買い手控え要因は緩和されよう。
今週明けはハルメクHD<7119>や日本ナレッジ<5252>など直近IPOが急落する場面も見られたが、需給が過度に悪化することはなく、その後のIPO銘柄の初値形成や株価推移は良好なものが多かった。個人投資家の含み損益やセンチメントは悪くないと想定され、この点も来週の新興市場の堅調さを裏付けるものになりそうだ。一方、週末には米3月雇用統計が控えるため、週末にかけては利益確定売りに注意したい。
個別では、値動きの軽い直近IPO銘柄を中心にセカンダリー投資が活況となりそうだ。また、既存銘柄への押し目買いも想定されるため、今回は今週末終値が25日移動平均線より上方に位置し、25日線が上向きの銘柄の中で、今期増収率が30%以上と業績も良好な銘柄をスクリーニング。この中で特にENECHANGE<4169>、CCT<4374>、スマレジ<4431>、Finatext<4419>、Chatwork<4448>、unerry<5034>、ポート<7047>、MacbeeP<7095>、M&A総合研究所<9552>などはチャート形状も良好で、注目に値しよう。
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