ウイングアーク1st<4432>は、企業向けにソフトウェア及びクラウドサービスを提供している。企業の基幹業務を支える帳票・文書管理ソリューションとデータから価値を生み出すデータエンパワーメントソリューションを手掛ける。2013年9月にMBOにより上場廃止となるも、競争優位性を維持し、将来にわたって安定的かつ持続的に企業価値を向上させるというMBOの目的を達成したと判断し、2021年3月に東京証券取引所(以下、東証)1部に再上場し、2022年4月に東証プライム市場に移行した。
1. 2025年2月期の業績概要
2025年2月期の連結業績は、売上収益は前期比11.5%増の28,708百万円、営業利益も同12.4%増の8,216百万円、EBITDAは同12.2%増の9,650百万円となり、第3四半期発表時(2025年1月)に上方修正した会社計画(売上収益28,500百万円、営業利益8,100百万円、EBITDA9,560百万円)を上回って過去最高益を更新して着地した。企業向けIT市場では、引き続き大企業を中心に積極的なDX投資が行われたことや、前期(2024年5月)に買収した(株)トライサーブの収益が寄与した。データのクラウド化の進展も貢献した。これにより帳票・文書管理ソリューションの売上収益は同13.7%増の18,761百万円、データエンパワーメントソリューションの売上収益は同7.4%増の9,946百万円となった。
2. 2026年2月期の業績見通し
2026年2月期の会社計画は、売上収益は前期比5.5%増の30,300百万円、営業利益は同8.3%増の8,900百万円、EBITDAは同7.8%増の10,400百万円の見通しである。帳票・文書管理ソリューションは、デジタル帳票基盤の確立を目指す。SVFは、2025年2月期の大型案件の反動のため、伸び率が鈍化するものの、保守・クラウドを中心に引き続き拡大が見込める。また、公共関連システムのデジタル化の進展が見込める。データエンパワーメントソリューションは、生成AIやローコード/ノーコード開発といったBIの隣接領域への展開を目指す。事業別では帳票・文書管理ソリューションの売上収益は同3.4%増の19,400百万円、データエンパワーメントソリューションの売上収益は同9.6%増の10,900百万円を見込んでいる。なお、この業績見通しにはスマートバリュー<9417>から2025年6月30日に取得予定の子会社の業績は織り込んでいない。また、2026年2月期の業績予想は市場に対する最低限のコミットメントとしており、引き続き期初計画を着実に達成したい考えである。
3. 中長期の成長戦略
同社は2022年1月に5ヶ年の「中期経営方針(2023年2月期~2027年2月期)」を発表した。「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に据え、主にクラウドビジネスでの大きな成長を目指す計画である。このプラットフォームをベースに、帳票・文書管理ソリューションはデータを流通させ、企業間取引の変革を実現する「企業間DX」、データエンパワーメントソリューションはデータから価値を引き出し、生産性の向上や新しいビジネスの創出に資する「企業内DX」に取り組む方針である。当該期間中に同社が達成を目指す目標は、「クラウド成長率40%(2022年2月期~2027年2月期平均)」「リカーリング比率75%(2027年2月期)」「クラウド比率40%(2027年2月期)」「EBITDA※120億円(2027年2月期)」としている。「中期経営方針」3期目の2025年2月期はクラウド成長率が22.5%、リカーリング比率が60.9%、EBITDAが96.5億円であった。2026年2月期においてはクラウド成長率16.9%、リカーリング比率64.5%、EBITDA104.0億円を目指している。最終年度に向け着実に実績を積み上げる計画である。
※ 当初は「調整後EBITDA」としていたが、2024年2月期からは「EBITDA」へ変更。
■Key Points
・2025年2月期は前期比11.5%増収及び12.2%増益(EBITDA)、各ソリューションが堅調に推移。期初計画、第3四半期発表時の上方修正値を上回り、過去最高を更新
・2026年2月期は増収増益を予想。SVFが伸び悩むものの、クラウドの高い伸びに期待
・2022年1月に「中期経営方針」を発表。「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に、クラウドビジネスでの大きな成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 井上 康)
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