同社のビジネスモデルはソフトウェアライセンス収入と顧客のソリューション支援2つが軸となっている。ライセンス収入では、顧客プロジェクトの進行に応じて収益が「顧客製品化前」と「顧客製品化後」の2段階に分かれており、「顧客製品化前」では、顧客がKudan技術を製品開発に組み込む段階で開発ライセンス料や開発受託料を受け取る。「顧客製品化後」では同社技術を採用した顧客製品が市場で販売されるごとにロイヤリティ収入が発生し、製品普及に応じて収益が大きく伸びる仕組みとなっている。顧客製品化後には僅かなサポートコストのみになるため、高い利益率を実現できるポテンシャルがある。一方、顧客へのソリューション支援は、協業による案件規模の大型化を狙ってプロジェクトベースでソリューション支援を行っている。
2025年3月期第3四半期累計の売上高は前年同期比2.2倍の250百万円、営業損益は687百万円の赤字で着地した。事業進捗の指標となる顧客製品化と製品関連売上は予想通りに進み、同社技術の実用化が拡大している。顧客製品化は件数が順調に拡大しており、3Qまでの案件数は8件、製品関連売上は1.8億円となる。ソリューション化は、デジタルツイン案件で公共中心から民間設備管理・製造向けへ拡大して順調に進捗。全体としては2領域のうち、デジタルツインが牽引している一方で、ロボティクスで遅延中となっているため、注力案件のリバランスを実施して先行してコストが増加している。短期的には、デジタルツインの市場普及が先行して売上成長を牽引し、ロボティクスは遅れを見込んでおり、通期計画は売上高で前期比10.2-11.2%増の500-550百万円、営業損益が850-820百万円の赤字となる。売上比率では、デジタルツイン62%、ロボティクス38%と想定している。
ハイライトとしては、デジタルツイン領域でソリューションの基幹技術となる次世代デジタルツイン技術をXGRIDS社と開発。産業・物流設備向けへの需要を取り込み、欧州での大規模案件に向けて進捗している。また、ロボティクスの有人補助では、FOX Sports社向けのロボットカメラ(有人操作)の位置認識に採用され、革新的なAR映像による視聴体験を実現した。高速カメラワークに追従可能な世界唯一の技術を認められ、世界最大規模イベント「Super Bowl」にて実用化されている。
今後も「成長の二本柱」となる顧客製品化、ソリューション化の進捗により売上成長を図っていく。継続的な顧客製品化と顧客製品の進捗を推し進めることで、収益構造の転換を早期に実現するほか、注力領域の拡大、顧客製品の普及による技術の市場浸透により、製品関連売上を大きく積み上げて飛躍的な利益拡大を目指す。顧客製品化では、デジタルツインやロボットで2023年3月期以降に製品の初期導入が始まっており、今後顧客製品化後の刈り取り期に入っていく。今後本格導入が始まり、拡大が進むとライセンス収入も中長期的に大きく増加しそうだ。合わせて、複数のソリューション案件も着実に対応していくことで、全社的な通期での黒字化タイミングも近い将来に期待が持てそうだ。少数精鋭で狙う「ARM的ポジション」を狙う中、人工知覚(Artificial Perception, AP)技術の世界最大級の独立専業企業として中長期的な成長に期待しておきたい。
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