2. 具体的なトレンドと対応方針
(1) BtoBに広がるWMSニーズ
BtoB企業に広がるOMOマーケティングに対するニーズの高まりを捉え、配分方式、梱包明細、荷札、SCMラベル、シリアル出荷、トレーサビリティなど、各作業フローにおいて求められるBtoBならではの機能を模索・実装しBtoB企業特有のニーズに応えることにより、BtoB企業の新規獲得を推進していく。BtoB企業の新規獲得に注力する理由は、足元での引き合いが活況を呈していることに加えて、既存のBtoC市場での競争が激しくなっていることも背景にある。BtoC市場でシェアを確保しながら、同社の強みを生かすことができ、相対的に競争度合いの緩やかなBtoB市場へと進出することによって、利益を確保していく考えだ。加えて、業界標準のEDI対応も模索しながら、BtoB市場での標準WMSに成長することを目指す。
BtoBに求められる機能の実装としては、顧客企業と協力しながら、BtoBの作業フローにより即した機能の作り込みを行っている。直近では、「ロジザードZERO-STORE」にネット注文の店舗受取・店舗出荷機能を標準機能として追加したほか、BtoBに特化した基幹システムとの連携として「商蔵奉行クラウド」とのAPI連携を開始している。同社はもともとアパレル業界のBtoB向けに事業を開始したという成り立ちがある。この特性上、BtoBに適したシステムの作り込みはスムーズに進むものと推察される。こうしたなか、BtoBでの導入事例も増加傾向にあり、一例を挙げると、「ロジザードZERO」を導入した(株)ベッドアンドマットレスは、物流倉庫の出荷能力が500%以上伸張した。
(2) 労働力不足を補う自動化トレンド
同社は引き続き、物流業界や倉庫業界における人手不足に対応するために、省力化・自動化ニーズに対応した製品の提供を加速させる考えだ。具体的には、AI物流ロボットとの連携の拡張、RFID※などのオプション機能化による倉庫内作業の効率化を実現している。トラック運送業界の人手不足は大きな問題であり、省力化・自動化ニーズは堅調に推移するものと弊社は考えている。(公社)全日本トラック協会が2023年11月に公表した「トラック運送業界の景況感(速報)」調査によると、2023年7月~9月期において労働力が「不足している」または「やや不足している」と回答した割合は65.4%となり、前回調査(2023年4月~6月期)より6.7ポイント悪化している。また、今後の見通しに関しても69.7%となっており、当面の間は人手不足が継続することが予想される。そうした見通しのなか、顧客の省人化・自動化に資する機能やオプションの拡充により、訴求力を高める方針だ。足元では在庫予測・粗利最大化ツール「LTV-Zaiko」との連携開始によって、在庫データの取得及び集計にかかる時間の大幅短縮を実現するなど、顧客の業務効率化や自動化に資する外部システムとの連携を積極的に推進している。
※ 電波を用いて内蔵したメモリのタグのデータを非接触で読みこむシステム。バーコードではレーザーでタグを1枚ずつスキャンするのに対し、RFIDでは電波で複数のタグを同時スキャンすることができる。電波が届く範囲であれば、タグが遠くにあっても読み取ることが可能である。
(3) 進む店舗のスマート化とオンラインとの融合
OMOマーケティングへの関心と、それを可能にする在庫管理手法への注目が高まるなかで同社は、OMO対応を加速させる。具体的には、他社製品とのAPI※連携の拡大、OMOマーケティングで求められる機能の整理と実装などによって「ロジザードZERO-STORE」「ロジザードOCE」の開発と受注を推し進める。2024年6月期は、OMOマーケティングに対する顧客ニーズを把握・集約し、機能面に落とし込む作業を継続してきた。今後も顧客企業のニーズを汲み取りながら機能の強化・拡充に注力することにより、顧客の在庫管理のより一層の最適化と消費者の購買体験の質向上に貢献していく。
※ API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアやアプリケーション同士を連携させるためのつなぎ役である。他社製品とAPI連携することで、自社システムに実装されていないソフトウェアやアプリケーションなどの機能を利用できるようになる。
これらの各種製品施策に加えて、ハイタッチなサービスを今後も提供していくために社内組織体制の強化や人事制度の拡充などに重点投資していく方針だ。この方針のもと、2024年6月期には、社員が安心して業務できる制度づくりとして新たな人事制度を設けた。新規採用と同時並行で人事制度の拡充を進めることによって、社員の定着率を向上させ、同社の人材リソースに厚みを持たせていく考えだ。また、人員が増加するなかで、受注納品を担うソリューション部と製品開発を担う製品サービス部を新設している。
そのほか、販売促進活動も積極的に継続していく。倉庫を地方に構えている顧客や全国の顧客に対応するため、同社はコロナ禍前よりオンラインを活用した販売促進活動を積極的に行ってきた。オンラインを活用した集客活動と営業活動によってノウハウを蓄積していることに加え、オフラインのイベントも開催する。オフラインは既存の顧客が見込み客と一緒に来場するなど、新規顧客の獲得が期待できる営業機会である。また、オフラインでのコミュニケーションは、顧客のニーズを把握し、研究開発に反映できるという観点からも重要と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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