1. 事業セグメントとサービス内容
報告セグメントは「日本事業」と「韓国事業」の2つで、日本事業は3つの領域に区分されている。各領域の特徴は以下のとおり。
(1) 日本事業(2024年6月期売上実績377億円、連結売上構成比86%)
‐注力領域(2024年6月期売上実績148億円、連結売上構成比34%)
主力事業であるオンライン及びデジタルリサーチを提供。粗利率は60%程度で他領域と比較して利益率が高く利益拡大のドライバーとなる事業、高収益性と安定成長を追求する領域である。請求体系は「アンケート対象人数×質問数」で年間数万単位の案件をアドホックで受注。アドホック案件が大半ではあるが、定点観測で活用される場合は継続的に受注するケースが多く、リピート率は高いため安定した売上基盤がある。顧客需要は景気に一部連動する部分もあるが、顧客が分散化されていること、企業内で消費者行動変容の把握が進んでいること、データを活用したマーケティング手法が浸透していること、により安定的な需要拡大が見込まれる。
‐戦略投資領域(2024年6月期売上実績67億円、連結売上構成比15%)
データコンサルティング、グローバルリサーチ、新規事業で構成されている。事業モデルの変革を推進する事業群であり、売上2ケタ成長・将来の利益貢献を目指す領域。粗利率は30%程度で投資フェーズにあるが、高成長が続く市場であるため、グループとして中長期的に安定した売上伸長を継続するために戦略的に投資を行い、将来の利益貢献の拡大を目指す事業群である。他領域との違いは、データコンサルティング、グローバルリサーチ、新規事業の全ての領域において案件規模が大きく、中には数千万~億円単位のプロジェクト受注もある。また、データコンサルティングは、人月モデルの請求体系となっている点も特徴として挙げられる。当該領域の拡大は、新たなオンライン・デジタルリサーチの売上を創出することにもつながっており、注力領域の売上の後押し効果も期待できる。
‐基盤強化領域(2024年6月期売上実績160億円、連結売上構成比37%)
オフライン及びデータ提供、さらにその他広告代理店等との合弁事業を展開する子会社群で構成されている。
子会社群の中には、同社及び電通グループ<4324>との合弁会社である(株)電通マクロミルインサイト、(株)博報堂との合弁会社であるQO(株)(旧 (株)H.M.マーケティングリサーチ)、ケアネット<2150>との合弁会社、また2023年7月に子会社化した(株)モニタスなどが含まれている。当該領域は専門性を追求し「強み」を磨く事業群であり、より高い競争優位性・参入障壁を確立することを目的としている。粗利率は45%程度で安定した成長と利益貢献の継続を目指している。
(2) 韓国事業(2024年6月期売上実績61億円、連結売上構成比14%)
韓国では、子会社であるMacromill Embrain Co., Ltd.がマーケティングリサーチ事業を展開している。Macromill Embrainは日本と同様にオンラインリサーチに強みがあり、韓国の大手リサーチ会社の中で唯一、自社パネル基盤を保有している点も特徴として挙げられる。韓国のマーケティングリサーチ市場は、日本と比較して、郵送や電話、訪問調査等のオフラインリサーチ比率が高い状態が継続していたが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を経てオフラインリサーチがオンラインリサーチに代替され、オンラインリサーチ比率が高まった。こうした背景から同社は韓国におけるオンラインリサーチ市場では高いシェアを有している。2024年6月期からは、より安定した成長フェーズへと移行しており、日本同様に事業モデルの変革の取り組みを始めている。
2. ビジネスモデル
同社の主力事業であるオンラインリサーチは、インターネットを介したリサーチを通じて、企業が市場に提供する商品やサービスの開発・改善に役立つ情報を消費者から収集・分析する業務である。同社は国内に約3,600万人のパネルネットワークを構築し、顧客企業のマーケティング課題に合わせた調査を実施し、対価の一部をパネルに謝礼として支払うことで高品質な情報を収集している。顧客企業には、調査結果に加え、属性情報を紐づけたデータを提供し、顧客企業は自社内では取得できない情報をマーケティングに活用できる。同社は、こうしたサービスを通じて「消費者インサイト」を明らかにし、顧客企業のマーケティング課題の解決に貢献している。消費者インサイトとは、消費者自身が気付いていない動機や本音を指す。近年、リサーチ業界は「インサイト産業」に再定義されつつあり、同社はリサーチの枠を越えた「インサイト」で顧客のビジネス課題の解決支援やマーケティング戦略への提言を行う。同社は「リサーチ企業」から「総合マーケティング支援企業」への事業モデルの変革を推進し、顧客のマーケティングパートナーとして貢献することを目指す。既存事業領域のみならず新たな事業領域でも、同社の「自社パネル」は他社との差別化要因として競争力を発揮すると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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