2020年前半の株式市場は、米中協議の第1段階合意による米中対立の緩和で米国株の最高値更新が続き、 日経平均株価も一時2万4000円台を回復するなど好スタートを切った。しかし、中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変する。新型コロナウイルスの感染は2月下旬からイタリアをはじめ欧州、さらに米国にも広がり、世界の株式市場は軒並み急落する「コロナショック」に見舞われた。その後、東京株式市場は3月20日前後に底を打ち、欧米市場では外出制限の一部緩和など経済活動の再開への動きが出始めたことを受けて急速に切り返した。東京市場もこれに連動する形で買い戻す動きが強まり、日経平均株価は4月30日に2万円大台を回復した。
以下では、こうした大波乱の相場展開にもかかわらず、今年前半に株価が大きく上昇した銘柄に注目し、上昇率ベスト50を取り上げ、その上昇の主因を記した。今年は値動きの軽い東証マザーズやジャスダックなどの新興市場銘柄が26社と昨年の39社を大きく下回り、株価が倍化した銘柄数も昨年の35社から大幅に減り8社にとどまった。
値上がり率トップは、医家用衛生材料最大手の川本産業 <3604> [東証2]。手掛けているマスクや防護服が新型コロナ感染対策で需要が拡大するとの思惑から人気化し、一時前年末比8.9倍の4000円まで買われる場面があった。新型コロナ感染対策関連では、12位に中京医薬 <4558> [JQ]、16位に興研 <7963> [JQ]、21位に重松製作所 <7980> [JQ]などがランクインした。
2位は恐怖指数とも言われる米国のVIX指数に連動する国際のETF VIX短期先物指数 <1552> [東証E]で異例のランクイン。波乱相場を映して投資家の不安心理を反映する形で上昇した。日本の恐怖指数である日経VI指数に連動するNEXT 日経平均VI先物 <2035> [東証N]も5位に入った。
3位は新型コロナウイルス感染症向けDNAワクチンを大阪大学と共同開発しているアンジェス <4563> [東証M]。この開発プロジェクトにはダイセル <4202> 、EPSホールディングス <4282> 、新日本科学 <2395> 、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ <6090> [東証M]、フューチャー <4722> など様々な分野から企業の参画が進んでいることも話題を呼んでいる。新型コロナの検査・治療薬関連としては、東大医科学研究所発バイオベンチャーのテラ <2191> [JQ]が4月27日に先端医療支援事業を手掛けるセネジェニックス・ジャパンと新型コロナウイルス感染症の治療薬開発に関する共同研究契約を締結したことが好感され、3日連続ストップ高を演じて7位に急浮上した。8位は全自動PCR検査システムを手掛けるプレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証M]、10位には新型コロナウイルス用ワクチンの開発を目指す国際的研究コンソーシアムに参加しているリプロセル <4978> [JQG]がランクインした。
4位はネット動画ライブ中継など配信インフラを提供するJストリーム <4308> [東証M]。イベント・セミナーの動画配信や学校法人向けの授業動画作成・配信が注目されたほか、4月30日に発表した20年3月期の連結経常利益が12期ぶりに最高益を更新した好業績も追い風となった。このほか、学習塾や学校向けのオンライン学習教材を手掛けるすららネット <3998> [東証M]が9位、オンライン診療システムが注目されたメドレー <4480> [東証M]が11位、外出自粛による巣ごもり消費で需要が増えているアマゾンが主要顧客であるファイズホールディングス <9325> が13位と新型コロナに関わる銘柄が上位をほぼ独占した。
今年前半ベスト50の特徴は、広い意味での新型コロナウイルス関連銘柄が席巻したことだ。2月頃までは マスクや 抗菌・消毒など感染対策関連、その後はeラーニングやテレワーク 、巣ごもり 、遠隔医療・オンライン診療 といった生活や社会の対応策関連が物色され、直近では ワクチンなど新型コロナ治療薬関連が人気化している。なお、例年は過半を占める好業績銘柄は3分の1程度にとどまった。
●今年前半の株価上昇率ランキング【ベスト50】
※5月1日終値の12月30日終値に対する上昇率
(株式分割などを考慮した修正株価で算出)
―― 対象銘柄数:4,029銘柄 ――
(今年の新規上場銘柄、地方銘柄、外国銘柄は除く)
銘柄名 市場 上昇率(%) 株価 個別ニュース/決算速報/テーマ
1. <3604> 川本産業 東証2 220 1431 マスク関連が大幅高、日本で新型肺炎を初確認
2. <1552> VIX短先物 東証E 159 13660
3. <4563> アンジェス 東証M 154 1623 新型コロナ感染を防ぐDNAワクチンを阪大と共同開発へ
4. <4308> Jストリーム 東証M 134 1721 動画配信ビジネスが新型コロナで脚光
5. <2035> 日経VI 東証N 132 1167
6. <7891> 日本ユピカ JQ 129 2980
7. <2191> テラ JQ 117 377 新型コロナ薬開発で共同研究契約を締結
8. <7707> PSS 東証M 111 797 全自動PCR検査システムがフランスで活躍
9. <3998> すららネット 東証M 99.1 9350 「臨時休校」措置でオンライン学習関連株に思惑買い
10. <4978> リプロセル JQG 97.6 417 新型コロナ用ワクチンの開発目指す国際的研究コンソーシアムに参加
11. <4480> メドレー 東証M 93.0 2501 「オンライン診療の初診解禁検討」報道で関連株として物色
12. <4558> 中京医薬 JQ 88.8 423 新型コロナウイルス対策関連の物色人気続く
13. <9325> ファイズHD 東証1 88.6 1137 アマゾン株高に追随し4ケタ大台復帰
14. <3835> eBASE 東証1 79.1 1045 前期経常を11%上方修正・最高益予想を上乗せ
15. <9969> ショクブン 東証2 77.1 372 外出自粛で食材宅配需要に追い風
16. <7963> 興研 JQ 76.1 2385 新型コロナ対策関連株に人気集中、感染者拡大で思惑再燃
17. <3681> ブイキューブ 東証1 75.1 1147 東京都の外出自粛要請で上げ足加速
18. <3911> Aiming 東証M 74.8 547 『ドラゴンクエストタクト』の開発順調に進捗
19. <3960> バリューデザ 東証M 74.1 3725 上期経常は2.2倍増益・通期計画を超過
20. <7038> フロンティM 東証M 72.3 2500 今期経常は18%増で4期連続最高益更新へ
21. <7980> 重松製 JQ 72.2 1207 新型コロナ対策関連に人気集中、感染者拡大で思惑再燃
22. <4434> サーバワクス 東証M 71.3 14820 今期経常は1%増で3期連続最高益更新へ
23. <2929> ファーマF 東証2 70.0 821 今期最終を一転5%増益に上方修正・最高益、未定だった配当は7円に修正
24. <4488> AIins 東証M 63.0 20490 今期経常を61%上方修正
25. <4364> マナック 東証2 60.1 1031 効果が長期間持続の固定化抗菌・抗ウイルス剤を量産
26. <1938> 日リーテック 東証1 59.1 2127 TOPIX浮動株比率見直しでリバランス買い
27. <3834> 朝日ネット 東証1 58.0 997 テレワーク普及で接続サービスに追い風
28. <3689> イグニス 東証M 57.1 1433 10-12月期(1Q)経常は黒字浮上で着地
29. <4574> 大幸薬品 東証1 56.0 1703 今期経常を41%上方修正、配当も10円増額
30. <3161> アゼアス 東証2 56.0 925 5-1月期(3Q累計)経常が84%増益で着地・11-1月期も86%増益
31. <9057> 遠州トラック JQ 54.3 3225 アマゾン関連で頭角現し大幅に上場来高値更新
32. <3542> ベガコーポ 東証M 50.7 957 前期経常を一転黒字に上方修正
33. <4424> Amazia 東証M 50.6 4345 巣ごもり関連銘柄の一角
34. <8771> イー・ギャラ 東証1 49.0 1874 4-12月期(3Q累計)経常が9%増益で着地・10-12月期も11%増益
35. <7610> テイツー JQ 48.8 64 中古商材注力で20年2月期業績は計画上振れ
36. <4475> HENNGE 東証M 48.3 2844 情報セキュリティ関連
37. <3985> テモナ 東証1 46.4 704 『サブスク@』のデポジット機能をリリース
38. <3962> チェンジ 東証1 45.8 4240 東京地下鉄向けに有事対応時情報共有の専用アプリ開発
39. <3565> アセンテック 東証1 45.1 3040 三菱UFJ銀行に自社開発シンクライアントOSを納入
40. <3202> ダイトウボウ 東証1 44.7 123
41. <6291> エアーテック 東証1 42.7 1066 今期経常は9%増益へ
42. <3424> ミヤコ JQ 41.5 1316
43. <4465> ニイタカ 東証1 40.9 2593 6-2月期(3Q累計)経常は56%増益・通期計画を超過
44. <6034> MRT 東証M 40.8 1314 オンライン診療加速で注目度加速
45. <3182> オイシックス 東証1 40.3 1703 都知事の外出自粛要請で食材宅配サービス需要拡大の思惑
46. <6889> オーデリック JQ 40.1 6130
47. <8167> リテールPA 東証1 39.4 1249 食品買いだめ需要や2月期好決算で物色続く
48. <3038> 神戸物産 東証1 38.9 5210 洋菓子製造販売会社の全事業を譲受
49. <8740> フジトミ JQ 38.1 330 4-12月期(3Q累計)経常が赤字縮小で着地・10-12月期も赤字縮小
50. <4776> サイボウズ 東証1 37.9 2046 2月も2ケタ増収で底入反転トレンド加速
株探ニュース
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