―被害拡大で高まる重要性、対策義務違反には企業名公表など重い措置も―
厚生労働省は11月17日の労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、顧客による理不尽な要求や著しい迷惑行為から労働者を守るため、すべての企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策を義務づける関連法を2026年10月1日付で施行する方針を示した。これは25年6月に国会で成立した労働施策総合推進法の改正に伴うもので、対策義務に違反した場合は報告徴求命令、助言・指導・勧告、企業名の公表という重い措置が想定されている。カスハラは増加傾向にあり、対策を講ずる重要性が高まっていることから関連サービスを提供する銘柄に注目してみたい。
●被害経験者は増加傾向
厚労省が示した企業指針の素案ではカスハラに該当するものとして、性的な要求やプライバシーに関わる要求、契約内容を著しく超えるサービスの要求、契約金額の著しい減額の要求、商品やサービスなどの内容と無関係である不当な損害賠償要求、身体的・精神的な攻撃、大声をあげるなど威圧的な言動、不必要な質問を執拗に繰り返す言動、不退去など拘束的な言動が挙げられている。職場におけるカスハラに関しては、店舗や施設などの対面だけでなく、電話やSNSで行われた場合も対象になるとしている。
24年にカスハラ防止条例を制定している東京都が今年3月に公表した都民意識調査(対象は東京都内在住・在勤の15歳以上の男女で、アンケート回答数は1194件)によると、カスハラが増加していると思うとの回答が79.6%で、「被害にあった経験がある」「見聞きしたことがある」との回答は計59.6%に上っている。また、総務省が4月に公表した「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」では、過去3年間にカスハラを受けた経験(受けたと感じた経験も含む)があると回答した自治体職員は35.0%となっている。
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パワハラやセクハラと同様にカスハラが社会的な問題として重要視されるなか、社会全体で抑止するためには企業や組織の積極的な取り組みが欠かせない。企業は従業員を守る観点から各種対策が求められ、対応サービスを提供する企業のビジネス機会が広がりそうだ。
●対策サービスの提供続々
アドバンスト・メディア <3773> [東証G]は11月25日、人工知能(AI)音声認識「AmiVoice」を搭載した窓口対応向けソリューションが、カスハラ対策の一環として茨城県取手市の市民協働課の相談室に設置され、テスト運用を開始したことを明らかにした。このソリューションによって窓口対応におけるカスハラ抑止や職員のストレス軽減、対応品質向上などの効果を検証し、万が一のトラブル発生時に客観的な記録として活用できる体制の構築を目指す構えだ。
アドバンテッジリスクマネジメント <8769> [東証S]は11月19日、カスハラ基礎研修の提供を開始すると発表。これは全従業員の共通認識として、カスハラの定義、判断基準(要求の妥当性や手段の相当性)の基本を体系的に学習できるもので、同社の強みであるメンタルヘルスの観点を取り入れたプログラムになっているという。
アルプスアルパイン <6770> [東証P]子会社のアルプス システム インテグレーションは11月14日、無人・遠隔・自動案内など状況にあわせて利用できるリモート接客・受付システム「InterPlay Elastic Framework(インタープレイ エラスティック フレームワーク)」をアップデートし、防災対策を支援する「防災アラートサービス」と、カスハラ対策を支援する「利用者マスキング機能」を追加して提供を開始。設置された端末のカメラに映された利用者(問い合わせ者)の顔をAIにより自動判定し、マスキング処理を施すことにより、利用者の肖像権を保護するとともに、遠隔オペレーターのクレーム応対時などの心理的負担を軽減するとしている。
プラスアルファ・コンサルティング <4071> [東証P]は11月13日、自社のSaaS型テキストマイニングツール「見える化エンジン」と、ENBASE(東京都中央区)の音声アシスタントAI「スタンドLM」の連携を開始すると発表。これにより、あらゆる顧客の声を収集・分析し、生成AIを活用することで、効率的かつ網羅的な顧客理解が可能となり、製品・サービスの改善だけでなく、マーケティング施策の最適化、カスハラへの対応、応対品質の向上・業務効率化などに役立つデータを明らかにすることができるという。
トビラシステムズ <4441> [東証S]は11月5日、自社が提供するクラウド型ビジネスフォン「トビラフォン Cloud」に、通話内容をAIが自動で判定・分類する新機能「AI自動ラベリング」を追加したことを明らかにした。この機能は通話内容を自動で可視化するだけでなく、カスハラなど通話の特徴をAIが自動で検知し、ユーザーにアラートメールで通知することで、業務の負担軽減と組織的なリスク対策をサポートするとしている。
●セコムはアプリ開発済み
このほか、サクサ <6675> [東証S]とグループのシステム・ケイは、カスハラ対策としてAIを活用した共同PoC(概念実証)を10月から開始。この取り組みによって、音声・映像解析技術を用いたリアルタイム通知と記録管理の有効性を検証し、現場における対応力の向上や職場環境の改善につながる新たな手法の可能性を探るという。
また、カスハラ対策に役立つ顔認証関連ソリューションを手掛けるセキュア <4264> [東証G]、電話業務におけるカスハラ対策に有効なクラウド電話システム「INNOVERA(イノベラ)」と電話応対効率化サービス「Telful(テルフル)」を展開しているプロディライト <5580> [東証G]、カスハラ対策サービスを提供しているベルシステム24ホールディングス <6183> [東証P]、コールセンターシステム・クラウドPBX「Omnia LINK(オムニアリンク)」の「キーワードアラート」機能がカスハラ対策の一例としてニュース番組で取り上げられたことがあるビーウィズ <9216> [東証P]、カスハラを受けた際に従業員が「iPhone」や「Apple Watch」から上司に通報できるアプリを開発済みのセコム <9735> [東証P]なども関連銘柄として挙げられる。
株探ニュース
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