―9月中間期末に向けて関心高まる、割安評価の高配当利回り株をリストアップ―
中間決算期末を今月末に控え、3月期決算企業の高配当利回り銘柄への注目度が高まっている。企業業績のコロナショックからの立ち直りが鮮明となるなか、4-6月期(第1四半期)決算発表シーズンでは、通期計画を上方修正する企業が相次ぎ、配当予想を増額する企業も多くみられた。この時期に配当増額を決めた企業は将来的な業績成長に対する自信の高さがうかがえ、インカムゲイン、キャピタルゲインの両面から投資妙味が高い銘柄として押さえておきたいところだ。今回はこうした早い段階で業績見通しと配当予想を引き上げた企業のなかから、株価指標が割安で上値余地のある高配当利回り株を探った。
●21年度は業績急回復で増配相次ぐ
日本取引所グループ(JPX)の統計データによると、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックに上場する企業の20年度(20年4月~21年3月)の配当金総額は11兆4584億円(前年度比2.5%減)だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営環境が悪化したことを受けて配当を減額する企業が増え、11年ぶりの前年度比マイナスとなった。ただ、20年度後半から製造業を中心に業績が急回復に転じているうえ、コロナ禍における守りの財務で現金が積み上がった企業も多く、21年度の配当金総額は大幅に増加することが見込まれる。8月末時点の集計では、全体の3割超が増配を計画しているのに対し、減配予定の企業は1割にとどまる。
●高配当の割安株に見直しの動き
足もとでは配当利回りが高く、指標面で割安感の強い銘柄に物色の矛先が向きやすくなっている。コンテナ船の市況高騰を背景に業績が絶好調で、驚異の大幅増配を打ち出した日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> をはじめとする海運株が快進撃を続けているほか、高水準な中間配当を予定する日本製鉄 <5401> やジェイ エフ イー ホールディングス <5411> といった鉄鋼株も回復色を強めている。そのほか、高配当かつバリュー株の宝庫である銀行株などにも上値指向のものが目立つ。
東京株式市場では、先週末3日の菅首相の退陣表明を受けて政策期待などから先高感が強まるなか、好実態の割安株に見直し機運が高まっている。以下では、4-6月期決算発表とともに、22年3月期通期の業績見通しと配当予想を増額修正した企業のうち、配当利回りが3%を超え、かつ予想PERまたはPBRが低位にある7銘柄を紹介していく。なお、9月中間配当を獲得するには、権利付き最終日の28日に株式を保有していることが必須条件となる。
※配当利回りは9月6日終値ベースで算出。
【ネツレン】 配当利回り3.86%
高周波熱錬 <5976> は電気を熱源とするIH(誘導加熱)技術に強みを持つ金属熱処理加工メーカー。4-6月期(第1四半期)業績は主要顧客の自動車業界向けを中心に、部品販売や熱処理加工などの受注が急回復をみせ、経常損益は10億7200万円の黒字(前年同期は6億5200万円の赤字)に浮上した。好調な受注動向や原価低減の強化を踏まえ、22年3月期通期の同利益予想を従来計画の28億円から37億円(前期比2.5倍)へ上方修正するとともに、配当を前回の19円から過去最高水準となる25円へ増額している。配当利回りが3%を大きく超えているにもかかわらず、PBRは0.4倍台と極めて割安感が強く、上値に大きな期待を内包している。
【小野建】 配当利回り5.70%
小野建 <7414> は多彩な鉄鋼商品や建設資材を取り扱う九州地盤の独立系鉄鋼商社。4-6月期業績は原材料価格の高騰を背景にメーカー主導で鋼材市況が上昇するなか、在庫出荷分を中心に利益が大きく改善し、経常利益は前年同期比4.1倍の31億5100万円に膨らんだ。併せて、22年3月期通期の同利益予想を95億5800万円(従来計画は60億9600万円)へ上方修正し、一気に17期ぶりに過去最高益を更新する見通しとなった。年間配当も前回の60円から92円に大幅増額し、配当利回りは5%台後半の推移となっている。一方、予想PER5.3倍、PBR0.46倍と割安感が際立っており、上値期待は強い。
【シチズン】 配当利回り3.60%
シチズン時計 <7762> は新型コロナ感染拡大の影響を受けて、前期は経常利益段階で40億円を超える赤字に陥ったが、22年3月期は主力の時計事業と工作機械事業の回復で、一転して150億円の黒字へと変貌を遂げる計画だ。直近3ヵ月の4-6月期は消費が上向く北米で時計の完成品販売が急増したほか、前期に実施した構造改革の効果でムーブメント部門の採算が改善した。また、工作機械では中国や欧州を中心とする旺盛な設備投資需要を追い風に、自動車をはじめ幅広い業種から多くの受注を獲得した。第1四半期の好調な滑り出しを受けて、通期計画の上方修正に踏み切っている。株価は強調展開を続けているが、指標面に割高感はなく一段の上値が期待できそうだ。
【大建工】 配当利回り3.79%
住宅用資材メーカー大手の大建工業 <7905> は足もとの好調な業績を反映する形で、22年3月期の経常利益予想を従来計画の104億円から139億円(前期比39.9%増)へ上方修正し、実に33期ぶりとなる最高益に大復活する計画を打ち出した。国内で新築住宅やリフォーム市場における需要が想定より増加し、床材やドアの販売が好調なうえ、米国で木材製品の市況価格が高水準で推移するなか、LVL(単板積層材)の高付加価値品なども伸びている。好決算を受けて、株価は約3年ぶりの高値圏に浮上したがその後は調整含みにある。予想PERは8倍台と割安感が強いだけに、水準訂正に期待したいところだ。
【白銅】 配当利回り3.38%
非鉄金属商社の白銅 <7637> は8月10日に、22年3月期の経常利益が35億円(前期比68.0%増)になりそうだと発表。期初予想の30億円から上方修正し、21期ぶりに最高益を塗り替える見通しとなった。5G関連やデータセンターの需要拡大が継続するなか、半導体製造装置向け金属の販売が伸びることに加え、原価率の減少や原材料市況の好転もプラスに働く。業績好調に伴い、年間配当も従来計画の82円から94円へ引き上げた。なお、9月末は中間配当(46円)に加え、今期から新設した株主優待制度の基準日でもある。株主優待は300株以上保有者に対し、保有株数に応じて3000~5万円相当の株主優待ポイントを付与するというもの。積極的な株主還元姿勢も注目ポイントだ。
【堺化学】 配当利回り3.16%
堺化学工業 <4078> は亜鉛を祖業とする化学メーカーで白色顔料の酸化チタン大手。電子材料、樹脂添加剤、衛生材料、有機化成品、触媒を手掛けるほか、バリウム造影剤や風邪薬「改源」など医療事業も展開している。足もとの業績は自動車や通信機器関連向け積層セラミックスコンデンサー用誘電体が回復基調にあるほか、酸化チタンは化学繊維・フィルムやグラビアインキ用途の引き合いが強い。第1四半期業績の好調を受けて、22年3月期通期の経常利益予想を従来計画の51億円から64億円(前期比59.5%増)へ引き上げ、配当も前回の40円から70円(前期は15円)に大幅増額修正した。株価は約半年ぶりの高値水準にあるが、予想PER7倍台でPBR0.5倍近辺と指標面からは依然として見直し余地は大きい。
【オプティマス】 配当利回り4.52%
中古車の輸出販売を展開するオプティマスグループ <9268> [東証2]の4-6月期業績は、経常損益が7億300万円の黒字(前年同期は1億6700万円の赤字)と急改善をみせた。主力のニュージーランドで中古車需要の回復が継続したことに加え、前年同期がロックダウンの影響で低迷した反動もあり、中古車販売台数が急増したほか、為替の円安進行も追い風となった。好調な業績を踏まえ、22年3月期通期の経常利益予想を従来計画の9億3900万円から24億円(前期比90.0%増)へ、年間配当を前回の45円から100円(前期は50円)へそれぞれ大幅に上方修正している。配当利回り4.52%、予想PER4.6倍と超割安圏にあり、上昇余力は大きいとみられる。
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