分野別売上高はCRM支援分野75.4%、サービス運営支援分野24.6%。また、サービス別では、コンサルティング7.9%、アナリティクス15.6%、クリエイティブ38.2%、テクノロジー4.4%、オペレーション9.3%、POSデータ開示13.6%、EC運用11.1%。
同社の最大の競争優位性は、総合的マーケティング支援を一気通貫で実行できる体制にある。多くの競合企業は分析、クリエイティブ、システム開発など個別領域に分かれているが、フュージョンは戦略策定から施策実行、効果検証までの全工程を自社内で完結できる。クライアントがサービスごとに外注先を選定する必要がなく、PDCAを総合的に回せる点が大きな差別化要因となっている。中でもアナリティクスとクリエイティブの両面で高い専門性を有し、データドリブンな設計に基づくダイレクトメール(DM)やデジタル広告の展開を得意とする。クリエイティブ領域ではDM制作の売上が大きく見えるが、実態としてはデータ分析や施策設計を含む総合支援の成果であり、単なる制作請負企業とは異なるポジションを確立している。また、サービス運用支援ではPOSデータ開示やEC運営など、顧客の自社サービスを支援する業務が拡大しており、これがストック収益のベースとなっている。
2026年2月期上期の業績は、売上高706百万円(前年同期比3.3%減)、営業損失42百万円の赤字で着地した。主力のCRM支援分野でクリエイティブ領域の大型DM案件がクライアント都合により期ずれとなり、売上計上が後ろ倒しとなったことが要因である。サービス運営支援分野のPOSデータ開示は新規受注が堅調だったが、案件構成の偏りが響いた。費用面では、採用活動を計画よりも前倒しで進めた結果、人件費・採用費が想定を上回り、販管費が膨らんだ。ただしこれは、来期以降の成長を見据えた人材投資であり、営業利益の減少は一過性とみられる。なお、取材でも期ずれの影響が主因であり、通期計画に大きな修正は必要ないとも確認された。通期の売上高は1,600百万円(前期比6.4%増)、営業利益は24百万円(同43.8%増)を見込んでいる。
市場環境としては、CRMマーケティング市場全体がデータ分析とAIの活用を軸に拡大基調にある。企業が保有する購買・行動データを活用した顧客理解が重視されており、生成AIを組み合わせたマーケティング効率化も新たな成長領域として浮上している。同社も生成AIを用いたプロジェクトを始動しており、分析・クリエイティブ両面の生産性向上を狙う。一方、紙DM領域では紙代や郵送費などの原価上昇が逆風となり、短期的には利益率を圧迫する懸念もある。しかし、オンライン施策の飽和感を背景に、再び紙とデジタルを融合したCRMへの関心も強まっており、デジタルとフィジカルを融合させた戦略を推進する同社にとってはむしろ機会といえる。
中期的には、上場後の「踊り場」局面を脱し、2-3年以内に売上20億円の突破を目指している。今期見通しの約16億円規模からの成長を支えるのは、重点顧客との取引深化と新規分野の開拓である。既存顧客グループとの関係強化に加え、AI活用を軸とした新規サービスの創出を進めている。資本業務提携先や投資先スタートアップとの連携も活発化しており、特に凸版印刷グループとの協働を通じ、CRM×データ分析の高付加価値化を進めている。また、外注依存を減らすため、デザイン・開発領域のM&Aも模索しており、現預金を活用した成長投資を視野に入れる。これらの施策により、営業利益率の改善とストック収益化の比率引き上げを図る構えだ。
株主還元については、現状無配を継続しているが、取材では個人株主からの配当要望もあり将来的には何とか応えたいとの意向もあった。同社は、株主優待を導入しており、基準日時点で1単元(100株)の株式を保有している株主を対象に1,000円相当のデジタルギフト、2単元(200株)以上の株式を保有している株主を対象に2,000円相当のデジタルギフトを贈呈している。今後は業績安定化を条件に、配当の再開を検討する可能性もある。まずは札証アンビシャスから本則市場への昇格を目標に据えており、流動性向上と時価総額拡大を次のステップと位置づけている。
総じて、同社はデータとクリエイティブの両輪を備えた稀有なマーケティング支援企業として確かな存在感を持つ。短期的には採用費の増加や大型案件の期ずれが収益を圧迫しているが、CRM市場の拡大と生成AI活用の追い風を受け、再び成長軌道に乗る可能性は高い。PDCAをワンストップで支援できる総合力を武器に、顧客企業のブランドを支えてきた同社が自らのブランド価値を高めるフェーズへと進んでいく。
<FA>
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