―テレワークだけではなく、東京一極集中の解消やBCPの観点からも注目高まる―
テレワークを推進する総務省は、「令和3年度税制改正要望」として「サテライトオフィス整備にかかる軽減措置の創設」を取りまとめた。これによると同措置は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって新たな生活様式の普及・定着が求められるなか、地方における就労の維持や事業継続性の確保などに資するサテライトオフィスの整備を促進・加速化することが目的で、セキュリティーレベルの高いサテライトオフィスを整備し、テレワークを安心して行うことができる「場」を利用者に提供する者に対する税制支援を行うという。具体的には、総務大臣の計画認定を受けた一定のセキュリティー水準を確保したサテライトオフィス整備を行う企業が、整備に際して取得した設備に関して、法人住民税や事業税、固定資産税を減免するという内容だ。
●東京一極集中の解消にも
総務省の要望では、東京都特別区と大阪市を対象地域から除いており、地方における就労の維持やBCP(事業継続計画)の観点から地方での就労を促進し東京一極集中を解消することも狙いとみられる。
7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」でも、「地方回帰に資するテレワークの推進、地方移住にもつながるサテライトオフィスの設置、デジタル産業等の起業、地方での兼業・副業支援を強化する」とあり、サテライトオフィスの設置は安倍前政権時からの課題であった地方創生の推進の一環として、いわば「国策」としても取り組まれている。
●地方の動きも活発化
地方にとっても、サテライトオフィスが設置されることは、人口や税収増加のチャンスであることから、誘致の動きを活発化させている。栃木県は県内にサテライトオフィスを設置する県外企業に対し、150万円を上限に賃借料を補助するほか、神奈川県も横浜市と川崎市以外の地域でサテライトオフィスを設置する場合に最大200万円を補助する制度を設けた。市町村でも奈良市が、県外企業が市内にサテライトオフィスを開設する場合、500万円を上限に初期費用の2分の1を助成する。
いずれの自治体も、職住近接が実現できる利点を訴求し拠点開設を促している。また、企業誘致だけではなく、移住者に対して支援金を交付する自治体も多い。
移住する側にとっても、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にテレワークの導入が加速したことで、物価や家賃の高い東京都から他の地域への引っ越しを検討する人が増えているという。こうした国、自治体の動きや働き方の変化の流れは、サテライトオフィスに関連する企業には追い風となろう。
●シェアオフィスの代表格であるTKP
ここでいうサテライトオフィスとは、本社や支社といった本来のオフィスとは離れた場所に設置される小規模なワークスペースのことだが、新たにゼロから開設するにはそれなりのコストがかかる。そこで注目されるのが「シェアオフィス」だ。
既存のシェアオフィスを利用することで、企業は低コストかつ迅速にサテライトオフィスを設けることが可能となることから、三井不動産 <8801> や三菱地所 <8802> 、東京建物 <8804> など大手不動産もここ近年、力を入れているが、注目銘柄の代表格はティーケーピー <3479> [東証M]だ。
同社は貸会議室大手だが、子会社の日本リージャスがレンタルオフィスの世界的ブランド「リージャス」を武器に、レンタルオフィスやシェアオフィスを展開。足もとでサテライトオフィス需要が旺盛なことから、積極的な出店を継続している。10月15日に発表した第2四半期累計(3-8月)連結決算は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、減収営業赤字となったものの、ウェビナーやサテライト試験会場など新たな需要の発生やサテライトオフィス需要の増加などで下期は営業黒字転換を見込んでいる。
●ギグワークス、スペースマにも注目
ギグワークス <2375> [東証2]はIT関連を軸とした業務代行サービスが主力だが、子会社アセットデザインがシェアオフィスやコワーキングスペースを首都圏中心に59拠点展開し、利用企業数も4600社強に及ぶ。新型コロナウイルスの影響で、シェアオフィスは一時的に解約数が増えたものの、サテライトオフィスの需要はより拡大しているとしており、今後も直営拠点の出店を基本に業容拡大を目指す方針だ。10月21日に20年10月期の期末一括配当予想を18円から22円に増額修正したことにも注目したい。
スペースマーケット <4487> [東証M]は、あらゆるスペースを時間単位で貸し借りできるシェアリングエコノミープラットフォーム「スペースマーケット」の運営が主力。今年4月には、NTT東日本(東京都新宿区)とパートナー連携を行い、サテライトオフィスを最短即日で契約できるサテライトオフィス支援サービスを開始すると発表した。同社はこのほか、ビジネス用途に特化し、一定基準をクリアしたスペースのみをシリーズ化した「スペースマーケット会議室」の提供なども行っている。
このほか、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」の運営を主力に、コワーキングスペースやワークプレイスレンタルサービスの運営を行うシェアードワークプレイス事業などを行い、今年5月には新しいワークスタイルに対応した「オフィス縮小サポートサービス」として、既存サービスであるコワーキングスペース「co-ba」やベンチャー向けセットアップオフィス「HEYSHA」などを組み合わせたサービスを開始したツクルバ <2978> [東証M]や、プレスリリースの配信代行と「CROSS COOP」ブランドでのシェアオフィス・コワーキングスペース展開を2本柱とするソーシャルワイヤー <3929> [東証M]、子会社グッドルームがシェアオフィス「goodoffice」を運営するgooddaysホールディングス <4437> [東証M]などにも注目したい。
株探ニュース
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