2. セグメント別見通し
(1) 流通クラウド事業
セグメント売上高は、主力の「@rms」などのサービス提供拡大により5,009百万円(前期比8.4%増)、定常収入は4,052百万円(同7.1%増)を予想している。一方で、セグメント利益は926百万円(同3.4%減)、セグメント利益率は18.5%(前期は20.7%)と足踏みする見込みだが、これは「@rms」のバージョンアップ開発完了に伴うソフトウェア償却費負担増(約0.8億円)や、開発体制強化のための人員増、賃上げ等の待遇改善による費用の増加によるものだ。ベースの事業は順調に拡大しており、償却前セグメント利益は1,516百万円(前期比9.5%増)が見込まれている。
主な施策としては、「@rmsV6」の受注済み顧客への納入を進めると同時に、さらなる受注獲得に注力する。また「C2Platform」は大手卸売業へ積極的なアプローチを進める。
(2) 官公庁クラウド事業
セグメント売上高は7,463百万円(前期比9.2%増)、定常収入は3,344百万円(同0.4%減)、セグメント利益は544百万円(同35.9%増)を予想している。
「自治体基幹業務システムの統一・標準化」に向けた移行対応や、文書管理システム「ActiveCity」など、自治体DX関連案件を着実に獲得し増収を目指す。利益面では、依然としてシナジー買収に伴う償却負担(ソフトウェア年間約70百万円、のれん年間約165百万円)が続くものの、ベース事業の増収によりこれを吸収して増益を見込んでいる。
施策としては、トラスト事業との連携により自治体DX関連サービス提案を拡大する。特に「ActiveCity」や「Open LINK for LIFE みんなの窓口」などを今後も積極的に拡販する。
シナジーの主力である「ActiveCity」は、自治体DXが推進されるなかで今後急速に拡大すると見られる自治体の文書管理システム市場をターゲットにしている。市場規模は年間60億円超(同社推定)だが、全国の自治体(約1,800団体)のうち半数以上は文書管理システムを導入していない(同社推定)。このような市場環境の下でシナジーは、「ActiveCity」の性能的・価格的な優位性や充実した販売代理店網などを背景に、中規模の自治体を中心に全国規模で豊富な導入実績を上げている。パートナー企業数は15社、ユーザー数は80団体以上、販売だけでなく導入もパートナー主導で完結している点に強みを有する。なお、「ActiveCity」は、高機能かつ高品質なサービスをシェアクラウド型で提供し、「紙」と「電子」の融合で現場の実情に適した運用を実現している。
トラスト事業:順調に拡大しているが営業損失を見込むモバイル事業:先行き不透明のため控えめ予想
(3) トラスト事業
セグメント売上高は152百万円(前期比255.7%増)、定常収入は152百万円(同256.6%増)、セグメント損失は25百万円(前期は111百万円の損失)を予想している。依然として通期ではセグメント損失を計上する見込みだが、早期黒字化を目指している。
施策としては、「CloudCerts」は前期導入の大型案件での実績を生かし、さらなる展開を目指す。足元では、近畿大学にて外国語課外講座の修了証デジタル化に採用(2024年8月)された。また新たにリリースした小規模ユーザー向けのスタンダード版の導入を積極的に進める。
(4) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は3,449百万円(前期比2.1%減)、定常収入は440百万円(同13.6%減)、セグメント利益は29百万円(同36.5%減)を予想している。
NTTドコモの主要政策(店舗政策、支援費など)が2023年12月期第4四半期以降から緩和されたことで、記述のように上半期は大幅増益となった。この結果、上半期の利益水準は既に通期見通しを大きく超えているが、依然として下半期は不透明感が強いことから、現時点で通期予想を変えていない。ただし、現在の予想では、下半期が大幅損失になってしまい保守的過ぎると思われる。したがって弊社では、同セグメントの利益が上方修正される可能性は高いと見ている。
施策としては、出張販売や店舗の効率運営により、売上確保・利益改善に努める。法人向け営業を強化し、DXソリューションの提供などの取組を引き続き推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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