2. ビジネスモデル
(1) 売上形態
売上高を形態別に分けると、クラウド型、オンプレミス型、アプライアンス(ハードウェア)、その他に分けられる。2020年12月期はイベントDX事業の成長によりクラウド型の比率が75.4%まで上昇している。クラウド型サービスは、解約がなければ新規契約分が純増する積み上げ(ストック)型のビジネスモデルとなる。月額利用料は利用規模によって異なる(例えば、5千円から数百万円までと幅広い)ため、契約先を増やすことと1社当たりの契約利用料を増やすことが売上高の拡大につながる。
汎用Web会議サービス等は月額サブスクリプション、Webセミナー等のイベント系は年額契約で行うケースが多い。月額サブスクリプションによる1社当たり平均請求単価は、2020年12月期第4四半期で152千円と、2019年12月期の139千円から約9%上昇している。これは、テレワークの普及によりWeb会議の接続ポート数を増やす企業が増えたことによる。一方で1ヶ月当たりの平均解約率は、2020年12月期第4四半期で1.64%と、2019年12月期の0.91%から若干上昇している。これは、汎用Web会議サービスの市場において、ZoomやMicrosoft Teamsなど競合サービスが台頭してきたことのほか、2020年4月から5月の緊急事態宣言発令時に急増した臨時契約分の解約による反動減が要因と見られる。同社では24時間365日のサポート体制を整備するなど、サービス面でのきめ細やかな対応を図ることで、これら外資系競合企業との差別化を図っている。
ただ、同社の戦略としては、レッドオーシャンとなっている汎用Web会議サービスについては現状を維持し、差別化が可能なイベント系Webセミナー領域にリソースを投下し、事業を拡大していく方針となっている。イベント系Webセミナーは、ツール提供だけでなく顧客によってニーズも多様であり、また、開催当日の運営をスムーズに実施することが求められるため、専用スタッフを現場に配置するなどの対応が必要なことから、「SaaS+Service」のソリューションを提供することが差別化要因になると見ている。
(2) コスト(費用)の構造
主なコストは、サーバー関連費用、通信回線(専用線)費用、ソフトウェア開発費用、営業費用などである。サーバーは外部のデータセンターを利用しているが、一部は同社グループ専用サーバーとして利用している。顧客(利用量)の増加に伴ってある程度サーバーを増強していく必要があるため関連費用は増加するものの、規模の拡大によるボリュームディスカウントが効きやすいことから、エンタープライズDX事業の限界利益率は約80%と極めて高くなっている。またイベントDX事業については、イベント開催に伴う運営スタッフ費用や機材費用等がかかるため、限界利益率はやや低下し、65~70%程度となる。
3. 販売チャネルと顧客基盤
販売方法は、直販、販売代理店経由、OEMの3種類となっており、直販が過半を占めている。直販のうち、中堅・中小顧客向けにはコールセンターからのオンライン営業、大規模高単価の顧客向けには直接営業と営業方法を変えており、効率の良い営業体制を構築している。
国内の販売代理店としては、大塚商会<4768>、キヤノンマーケティングジャパン<8060>、東日本電信電話(株)、(株)NTTドコモなどのNTTグループ会社、SB C&S(株)、(株)日立システムズ、コネクシオ<9422>、日本ユニシス<8056>、内田洋行<8057>など大手システムインテグレータ、通信キャリアのグループ会社、ITベンダー等が挙げられ、広範な販売ネットワークを構築している。
また同社グループの顧客は、中小企業から大手企業、官公庁、教育機関、各種団体まで幅広く、業種に偏りがない。これまで累計で5,000社以上のユーザーに対する導入実績を有する。一方、海外子会社の顧客は、現地企業、現地政府が主要顧客で90%以上のウエイトを占めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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