● 2015−2017年度中期経営計画の振り返り
クロス・マーケティンググループ<3675>は創業以来、マーケティングリサーチにおいて様々なサービスを展開するとともに、モバイル・スマートフォンやプロモーション、海外へと事業領域を拡大してきた。更なる業容拡大に向け、同社は中期経営計画を策定、2015年−2017年を「事業領域と事業エリアの積極的な拡大」と位置付け、2017年12月期に売上高17,985百万円、経常利益1,500百万円を目指した。しかし、最終年度の2017年12月期の着地業績は前述のとおり、売上高16,758百万円、経常利益597百万円と未達となった上、Kadenceに関する特殊なのれん償却や減損が発生、親会社株主に帰属する当期純損失は703百万円となった。
しかしながら、国内外ともマーケティング関連市場は堅調に推移、中期経営計画で目指したエリア展開は順調に進み、タイでのM&Aやフィリピンでの新会社準備などアジアでは面展開が終盤に入った。米国西海岸でも事業展開を開始する一方、足元では重複エリアなど子会社の整理統合も始めようとしている。事業領域の拡大については、医療や覆面調査など新領域への進出、プロモーション事業(ディーアンドエム)やエンジニア派遣事業など周辺事業も育ってきた。3年間の事業エリアと事業領域の積極拡大により、「アジアNo.1マーケティング企業」へ向けた土台作りは着実に進捗したと言えるだろう。
そうしたなかで見えてきた課題もある。既存事業においては、着実な成長と収益基盤の確立を目指したが、成長・拡大は実現したものの、主力である国内リサーチ事業の収益回復は今後の成長のために必須となった。人財戦略では、既存社員の育成・底上げを狙ったが、組織の底上げは着実に進捗したものの、新入社員の育成・教育が継続課題となった。新規事業については、事業育成と領域拡大は順調に進捗したが、今後はより収益性や成長力のある事業にチャレンジする必要もあるだろう。海外展開については、アジア全域でのネットワーク確立を目指しエリア展開はほぼ最終局面となったが、海外子会社のグリップと未進出エリアへの展開という課題が残る。
こうした課題の中でも、まずは既存事業の成長力回復が喫緊の課題として浮上したと言える。そして今後は、収益力回復に向けた施策を実行するとともに、各事業の成長ポテンシャルと収益力の見極めも重視することになるだろう。このため、次期中期経営計画は、足元の業績回復状況の確認に時間をかけた上で、改めて2018年夏頃に開示する予定となっている。
■株主還元策
クロス・マーケティンググループ<3675>は、配当による株主への利益還元を安定的に継続しながら、現在の旺盛な資金需要、今後の事業投資計画などを鑑み、「連結配当性向15%前後を目安に配当金額を決定する」こととしている。2017年12月期の業績については、Kadenceの追加支払いの件などにより当期純利益は赤字となったが、利益還元の安定的な継続という配当方針から、通期配当金額を前期実績と同水準の5.5円を維持することとした。2018年12月期についても、配当性向は予算上目安を上回るが、年間配当金5.5円を維持する計画である。
■情報セキュリティ
リサーチ事業において、アンケート回答者の個人情報を取得することがある。個人情報を取得する可能性のある同社、(株)ユーティル、(株)リサーチ・アンド・ディベロプメント、リサーチパネル及び(株)メディリードは、(一財)日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマーク制度の認定事業者となり、個人情報の適切な取得・管理・運用を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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