2. 保険薬局事業の動向
(1) 調剤売上高の状況
保険薬局事業の売上高は、調剤薬局の調剤売上高と売店やEC等の商品売上高で構成されている。2023年3月期第2四半期累計売上高の内訳を見ると、調剤売上高が前年同期比0.1%減の69,839百万円と横ばい水準にとどまったが、その他売上高が同5.6%増の5,718百万円となった。調剤売上高の内訳を出店期・タイプ別で見ると、自力出店店舗のうち、既存店については前年同期比4.7%増、金額ベースで984百万円の増収となり、新店については前年同期と比べて新規出店数が少なかったため、同33.8%減、金額ベースで103百万円の減収となった。M&A等で取得した店舗については、既存店と新店を分けていないためわかりにくい面もあるが、同2.0%減、金額ベースで966百万円の減収となった。
調剤売上高を処方箋応需枚数と処方箋単価に分解すると、処方箋応需枚数は前年同期比4.2%増の7,323千枚、処方箋単価は同4.2%減の9,537円となった。これらも出店期やM&A等の要因による影響を受けているため、以下ではそれぞれについてもう少し詳細に見る。
処方箋応需枚数の実態に近いと考えられる既存店の増減率は前年同期比7.3%増となった。前年同期はまだコロナ禍で受診控えの動きが残っていた反動によるところが大きい。また、M&A等による店舗の応需枚数は同3.3%増と伸びてはいるものの、M&Aによる新規取得店舗数が前年同期の8店舗から1店舗に減少したこともあり、伸び率は鈍化した。全体的には夏場に新型コロナウイルス感染症第7波が到来した影響と、M&Aによる店舗の取得が進まなかったことにより、処方箋応需枚数の伸び率は計画に届かず、売上高が計画を下振れた主因となった。
一方、処方箋単価は全体で前年同期比4.2%減となったが、このうち既存店は同2.5%減、M&A等店舗は同5.1%減と全体的に下落した。薬価改定による影響に加えて、コロナ禍で解熱剤など比較的安価な処方薬が増加したことによる薬剤料単価の低下が主因だが、調剤技術料単価についても調剤報酬改定の影響により若干低下したものと見られる。
店舗の付加価値分に相当する調剤技術料に関しては、定められた基準の達成度に応じて点数が加算される仕組みで、主に調剤基本料(応需枚数や特定医療機関への集中率等で分類)、GE医薬品調剤体制加算(GE医薬品の取扱比率で分類)、地域支援体制加算(在宅調剤など地域医療への貢献体制によって分類)がある。なかでも、GE医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算については各薬局の取り組みの巧拙により点数が異なる。今回の改定では、調剤基本料は、薬局経営の効率性を踏まえた設定の変更、GE医薬品調剤体制加算は調剤数量割合の基準の引き上げと評価方法、地域支援体制加算は地域医療への貢献に係る体制や実績に応じた評価体系が見直しされたことから、調剤基本料の単価は減少したが、GE医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算の技術料単価は増加した。
改定後の調剤基本料の点数分類は従来の4分類から5分類に細部化され、最高点の42点と26点の間に32点の項目が追加された。今回の改定では大規模グループ薬局※の基本料について、特定医療機関からの処方箋受付割合が85%を超える薬局を16点としたほか、85%以下の店舗は32点とした。この結果、同社においては2021年4月時点で47.3%を占めていた42点の取得店舗比率が2022年4月には1.2%に減少し、新たに追加された32点の取得店舗比率が47.1%を占め、これが技術料単価の低下要因となった。
※同一グループで処方箋受付医回数が月40万回超または同一グループの店舗数が300以上。
GE医薬品の取扱い比率(数量ベース)については、グループ全体で2022年3月時点の84.0%から2022年9月時点では84.7%と若干上昇し、厚生労働省が目標としている8割の水準を超過している。この要因として、国の後発医薬品に関する方針に沿ってこれまで後発医薬品の使用をグループ全体でけん引していることが大きい。2022年4月の改定により、例えば最高点を取得する条件として従前は85%以上で28点であったが、改定後は90%以上で30点に引き上げられた。30点を取得した店舗の比率は2022年4月の18.7%から9月は27.9%まで上昇し、技術料単価の増加要因となっている。なお、2021年夏以降、GE医薬品メーカーの不祥事に端を発した供給不足問題については、改善の方向に向かっているようだ。2022年3月期は供給不足の影響で店舗の生産性が一時的に低下するなどの影響が出たが、2023年3月期に入ってからはこうした問題の解消が進んでいる。
地域支援体制加算の上昇要因についても、従来は0点か38点の2分類しかなかったが、改定後は0点、17点、39点、47点と4分類に細分化され、同社では最高点の取得店舗比率が2022年9月時点で28.2%を占めたこと、また、0点の比率が2021年4月時点の64.3%から2022年9月には50.1%に低下したことによる。地域支援体制加算については、地域のかかりつけ薬局としての機能強化を促進することが目的となっており、同社においても在宅調剤の取り組みを推進したことで取得店舗数が増加した。在宅調剤売上に関しては、2022年3月期実績の約50億円から2024年3月期には100億円を目標として掲げているが、在宅調剤専門店や重点店舗の増加もあって今のところ順調に売上高が伸びている。
(2) 出退店とM&Aの状況
2022年9月末の店舗数は834店舗となり、前期末比で3店舗の増加にとどまった。自力出店は8店舗と順調に推移したものの、コロナ禍でM&A交渉が長引き1店舗のみの獲得にとどまったことが要因だ。前年同期は自力出店で12店舗、M&Aで8店舗の出店であったことからすると、出店についてはやや停滞した状況となった。ただ、M&A交渉については着実に進んでいるようで下期には複数案件の成約が見込まれている。なお、新規出店のうち1店舗は良品計画との連携店舗で2店舗目となる。2022年4月に無印良品で最大規模の店舗となる「広島アルパーク店」の「まちの保健室」内へ出店した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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